今後のデザインに欠かせないユーザーの瞬間の理解と共有
Apple Watch をはじめとしたウェアラブルを使い始めてから、瞬間の体験についてよく考えるようになりました。しかし、実際のところスマートフォンでも瞬間(ひととき)は存在しています。Google は 4 月に「Micro-Moment」という状態を提示しました。Webサイトやアプリと、きちんと向き合って操作するのではなく、突発的に起こった欲求に対して即座に行動をとる状態を指します。Micro-Moment は以下のような要素で構成されています。
- 今この瞬間に訪れる欲求(リアルタイム)
- ある特定の目的がある(意図的)
- 一番近くにあるデバイスを選ぶ(マルチデバイス)
- ながら作業のときが多い(マルチタスク)
瞬間に対するニーズに応えるかのように Google は検索結果に「購入」ボタンの実装を検討しています。「あれが欲しい」という瞬時に起きたニーズに対して、すぐに応えるためのアプローチです。また、ますます文脈に合わせた提示をしてくる Google Now も瞬間のニーズに応えるためのアプローチです。こうした Micro-Moment のための UI デザインは今後ますます充実するはずです。
瞬間について考えているのは、Google だけではありません。デザイナーだけでなく、マーケッターにとっても大きな課題になります。従来は利用者の道筋(ジャーニー / Journey)を視覚化していましたが、今後は瞬間(モーメント / Moment)を共有するという考え方を加えなければいけなくなります。カスタマージャーニーマップのような、プロダクトやサービスに触れる前後のタッチポイントの視覚化が必要ないという意味ではなく、時系列に並べることができないような瞬間の理解と共有も必要になると考えています。
ときには、道筋ではなく瞬間だけを考える機会も出てくるかもしれません。より簡単に、より早く提供するにはどうしたらいいでしょうか。利用者が考える「今、欲しい」「今、必要」にどのように応えることができるのでしょうか。特定のニーズに応えるプロダクトであれば、「この瞬間に対してどのような価値を提供できるのか」と考えたほうが明確になるでしょう。ウェアラブルから利用者へ提供する情報も、こうした瞬間に起こりうる欲求に応えるものでなくてはいけなくなるます。
では、デザイナーや開発者とのあいだで瞬間を共有するとしたらどのような形式が良いでしょうか。クライアントと瞬間について考えるためのツールはどのようなものでしょうか。
例えば以下のようなカード式にまとめる方法があるでしょう。瞬間をカードとして『パッケージング』することで、ひとつの瞬間について考えやすくなるだけでなく、ジャーニーマップに付け加えるといった組み合わせもしやすくなるはずです。この瞬間は無視できないというものを、シナリオとして展開するというやり方も考えられます(マイクロジャーニー?)。
瞬間を共有するツールには必ずといってほど時間と場所を記入べきだと考えています。ユーザーの瞬間の理解には、その欲求が発生した動機や文脈の理解が不可欠になります。瞬間の欲求を生み出している文脈を理解することで、よりスマートな通知や、適切な機能の提示ができるはずです。
瞬間の理解は、スマートフォンをはじめとした様々なデバイスが、人の生活と密着している今では無視することができません。瞬間の欲求を満たすためのアプローチとしてウェアラブルがあるでしょうし、現存のアプリのデザインも「今この瞬間にできること」をより強く意識しなければいけなくなるでしょう。そして「瞬間で提供できる価値」とは何か?どれは機能なのか?コンテンツなのか?それともサービスなのか?今後取り組んでいきたい課題のひとつです。