実世界のオブジェクトのような質感を UI に加えることで、使いやすさを向上させるアプローチは 親しみやすさを生み出すことから、インターフェイスデザインによく採用されるようになりました。これとは別にアプリの UI デザインでよく見かけるのが、モダニズムを彷彿させたミニマムなデザイン。装飾を最小限に抑え、グリッドで整理された見せ方になります。

Pulse と Flipboard のスクリーンショット

代表的なのが FlipboardPulse のようなニュースリーダーアプリ。TextdeuxSparrow といった仕事に使えるアプリでもミニマムなアプローチをよく見かけます。InstapaperRead it Later は、すべての Web サイトをミニマリズムに再現できるアプリで、これらも高い支持を得ています。

もちろん、アプリデザインだけではありません。Windows Phone 7、Windows 8 で採用されている Metro UI はモダニズムなアプローチを OS のレベルで採用した例です。 iOS や Android とはまったく異なる見せ方に挑戦していると同時に、地下鉄という実世界にある社会システムを UI に組み込んだとことで、高く評価している方も少なくありません。

こうしたアプローチを採用するメリットは幾つかあります。

  • コンテンツがより引き立つ
  • タイポグラフィによるデザイン
  • 柔軟性・拡張性が高い
  • 軽快かつ洗練された印象を与えることができる
  • アニメーションや色彩の変化などインタラクションが明解になる
メトロUIタイポグラフィの強さも弱さも際立つメトロUI

これらはミニマムなデザインの長所といえると同時に短所にもなります。良質なコンテンツであれば、引き立つことで美しさが増しますが、コンテンツの中には剥き出しになることで貧弱さが際立つ場合もあります。また、装飾に頼らずタイポグラフィに頼り過ぎるデザインは、書体の選択肢が乏しい日本語では意図どおりの印象を与えることが難しくなるでしょう。

デザイナーに好まれるミニマムなデザインですが、他にも幾つか課題が考えられます。

  • 装飾がほとんどないことから、見た目だけで強いブランドプレゼンスをつくりにくい
  • 機械的な印象を与えることからビジネス向けのように見える(親しみさが足りない)
  • インターフェイスが平面的なので、どこが操作できるのか分かり難い
  • コンテンツそのものが操作UIになっていることもあり、別の操作や閲覧の邪魔になる
オフィスと住まいの写真幾何学的かつ無機質なオフィスに対して、どこか落ち着いた雰囲気がする住まい。

ミニマムなデザインをどのように使うかのポイントは、人の住まいが良いヒントになります。
オフィスも住まいも、人が時間を過ごすのに最適化された設計になっています。いずれもミニマリズムのデザインのように見えますが、よく見ると所々まったく逆のアプローチをとっているのが分かります。オフィス(写真左)は建築の構造そのものが剥き出しになっているかのような機械的な装いに対し、住まい(写真右)は家を支える金属部分を手触り感がある壁紙によって覆い包まれています。機能的な照明だけに留めているオフィスと、暖かさを演出するために照明が置かれている住まいとでは光の印象が違います。働く場所と家族と時間を過ごす場所が、デザインによって明確に分かれている一例といえます。

装飾によってコンテンツの邪魔をさせないというデザインアプローチは、スクリーンが小さいデバイスには有効な手段です。しかし、それによってアプリケーション/サービスそのものの性格を失い、利用者との関係を築くのが難しくなる可能性もあります。

ディーター・ラムスの良いデザインの原則がひとつの答えだと思います。彼のデザインは素材を活かしたミニマムなプロダクトをデザインし続けてはいたものの、彼の信念には「正直」であることが根底にあります。これは使う素材に正直であれという意味だけでなく、使う人たちへ正直であれと伝えたいのではないでしょうか。人に正直であること、それは変に装ったり、格好つけたものではなく、製品と人が素直に付き合える状態なのだと思います。

人を正直に繋がるために必要となる感情は何なのでしょうか。
それは携わっているプロジェクトによって異なると思いますが、デザインについて話し合う起点になりそうです。何もかも Less(削ぎ落とす)ではなく、人との繋がりをどのように残していくのかが課題になるでしょう。