デザインの話で、ときどき噛み合ないことがあると思います。装飾について熱く語っている人もいれば、論理的にデザインの意図を解説する方もいます。どちらかが間違っているのではなく、デザインの前提が異なっていることから生まれるミスコミュニケーションです。デザイン話にも様々な目的と方法があることを教えてくれた論文があるので紹介します。

2010年に Daniel Fallman と Erik Stolterman が発表した「Establishing Criteria of Rigor and Relevance in Interaction Design Research(厳格で適切なインタラクションデザイン調査ための基準つくり)」という論文があります。サイトから論文の全文(PDF)を読むことができます。

この論文によると、デザイン調査は3つの異なる形式による三角構造になっているそうです。三角構造に含まれる 3つとは以下のとおり:

Design Practice (実践としてのデザイン)
実世界で何かを生み出すための判断力やスキル
Design Studies (研究としてのデザイン)
論理的にデザインを理解・分析するための知識
Design Exploration (探求としてのデザイン)
異なる視点から新たな理想を見つけだす

デザイン調査とひとことで言っても、それぞれ独自の結果、手法、論理があります。現状からもっと良いものに変えたいという目的であれば Design Practice を基にした調査が適していますし、課題を解決するのではなく課題を見つけるところから始める場合であれば Design Exploration を基にした調査になるでしょう。論文では、デザイン調査は数多くなされているものの、三角構造の何処に該当するかを明確にしていないことから、誤解や混乱を生み出しているのではないかと指摘しています。

論文はデザイン調査について書かれているものの、デザイン全般にも共通した課題が残されていると思います。

デザインも実践優先で考えなければならないこともあれば、デザインを論理的に説明しなければならない場合もあります。また、現在のことばかりに囚われていないで未来を見据えた視点も養わなければいけません。それぞれが自己のデザインスキルを磨く上では重要なわけで、いずれも欠けてはいけないと思います。

デザイン話のなかにも「具体的ではない」「漠然としている」「今使えない」内容があります。デザイン調査の三角構造の目的がそれぞれ異なるのと同じように、デザイン話の目的が異なるだけだと思います。何もかもが Design Practice である必要はないですし、それだけと装飾製造業ということになりかねません。逆もしかりで、Design Practice を省いたままだと、理想論ばかり言っているかのようにみえます。それぞれが密接に繋がっているからこそ、いずれも無視することが出来ないのだと思います。

デザインは大変意味が広い言葉であるからこそ、前提を合わせて議論することが困難な場合があります。「この見た目良いよねぇ」「アニメーション気持ちいいねぇ」もデザインについて語っています。こうした表層的なところからスタートしても良いので、デザインについてもう少し突っ込んで考えてみることで理解が深まることがあります。今回紹介した三角構造は、目的に合わせて議論する上でひとつの良いガイドになるのではないでしょうか。