UXデザイナーならではの 1年の振り返り方
仕事で忙しい毎日ですが、形ある成果物だけを作っているわけではないデザイナーにとって『記録』は大事なコトです。
作品を載せるのがポートフォリオ?
UXが付く肩書きは、何をしているのか詳しく聞いてみないと分からない課題がありますが、ポートフォリオも同様のことが言えます。
Web サイトにも同様のことが言えますが、デジタルプロダクトはリリース当時の状態に留まることなく改善が続くものばかり。また、チームで作ることがほとんどなので「これは私が作りました」と言い切れないですし、「UX を担当しました」とポートフォリオで説明されていたとしても、具体的に何をしたのかよく分かりません。
デザイナー向けのポートフォリオは大きく分けて 2 種類あります。
- 過去の作品を見せるギャラリー : 「すごい!良いデザインですね」と言われるようなビジュアルが並んでいる
- 就職のために必要なツール : 「ぜひ一緒に働いてみたい」と言われるための情報が揃っている
両方の役割を果たしているポートフォリオはありますが、「見せる / 魅せるポートフォリオ」のほうに比重を置いたものを多く見かけます。良いビジュアルを作るのが主な仕事であれば、ギャラリーのようなポートフォリオのほうがスキルが伝わりやすいです。しかし、UX デザイナー / プロダクトデザイナーだとどうでしょうか。
良い見た目(UI)を作ることは仕事の一部ですが、それは全体からするとほんの一部でしかありません。 UI を作る前に実施する調査であったり、コンセプトをまとめてチームの視点を合わせるといった仕事もあります。今は 0→1 でアプリを作ることがマレなので、オンボーディングの改修といったアプリの一部だけ携わる場合も少なくありません。
このように「表面化しにくい」「作るだけではない」「同じ状態で残らない」なか、どう過去を振り返れば良いか分からないデザイナーはいると思います。私自身「コレを作りました」と言い切れるものは数年作っていませんし、成果物を作るのは現場で活躍しているデザイナーに任せている状態です。
「成果物は作っていないけど、事業に貢献しているデザイナー」はどんなポートフォリオを作れば良いのでしょうか。ギャラリーのようなポートフォリオは作れないかもしれませんが、過去を振り返ったり就職に役立つポートフォリオは作れるはずです。
事業貢献の観点でまとめる
こうした課題に取り組むために昨年から実施しているのが、過去行ってきた施策のデータベース化です。下記のようなテーブルを Airtable で作っています。(クライアント名や運用フィールドは非表示です)
- Item: 施策名(具体的に何をしたか)
- Stage: 施策の状態
- Impact: 事業へのインパクト
- Effort: 実現するためのコスト(人や時間)
- Score: インパクトとコストに基づいた独自スコア
- Tag: 施策のタグ
- Note: 振り返りのときに残すメモ
- Material: 施策を実施したときに残した成果物や資料の添付
成果物ができあがるまでの過程の中で自分が何を残したのか記録しています。上図のような施策のバックログがクライアントごとに用意されていて、できそうなタイミングで始める場合もあります。見た目のインパクトはゼロですが、自分がどのように事業に貢献してきたか振り返るのに便利です。
例えば、綺麗なスクリーンショットに「スタイルガイドを作りました」とキャプションが添えられているだけだと、綺麗なスタイルガイドを作ったコトだけが記録に残ります。しかし、実際はスタイルガイドが作る前に調査をしたでしょうし、そもそもスタイルガイドを作る意味を経営陣に向けてプレゼンしたかもしれません。
こうした「スタイルガイド」という成果物(結果)を生み出す前の過程に携わることもデザイナーの仕事の面白さだと思いますし、そこもポートフォリオとして記録すべきです。デザインは見た目を作るだけではないのであれば尚更です。
テーブルには事業へのインパクトなど、ひとりで判断するのが難しい要素が含まれていますが、「たぶんこれくらいあったかも」みたいな感覚で良いので付けたほうが良いでしょう。インパクトを付けることで、何を今すべきなのか優先順位が考えやすくなります。
また、マネージャーなど仕事のレビューする側にとっても便利なツールになります。デザイナー / デザインの仕事への理解が低いと、どうしても成果物ベースで評価をしてしまいがちです。途中の活動がどう組織 / プロジェクトを前進させたか伝えることで、デザイナーの新しい側面を伝えやすくなります。
仕事で忙しい毎日ですが、形ある成果物だけを作っているわけではないデザイナーにとって『記録』は大事なコトです。 1 年バタバタしていたけど何も残せていないと落ち込む前に、デザインが生まれるまでの過程を振り返ってみてはいかがでしょうか。自分のポートフォリオとして記録しておくべき何かが見つかるはずです。