UXの学習に知識整理が欠かせない理由

日々の生活や仕事のなかで見つけた『引っ掛かり』から学びを広げていけば、次第に自分にしかなれないデザイナー像が形成されるはずです。

UXの全部入り感がもたらす不安

UX について勉強を始めると、一度くらい「The Disciplines of User Experience Design」のような概念図を目にすると思います。 UX には UI デザインやモーションデザインといった視覚的な部分だけでなく、心理学や社会学といった人の認知や行動の理解も必要ということが見て分かります。

The Disciplines of User Experience DesignDan Saffer が考案したベン図を Thomas Gläser がリファインしたもの

この図だけでなく、UX をテーマにしたインフォグラフィックは他にもたくさんあります。図によって切り口や詳細度が異なりますが、ひとつ共通点があるとすれば、UX には多分野の知識が欠かせないことを表している点。様々な分野を包括した何かが UX であると表現しています。

体験ですから見た目だけに止まらないのは納得です。また、UX デザイナーとして仕事をしていれば、多分野の知識が必要ということも自然と分かります。ただ、こうした多分野を包括している図は UX を学ぼうとしている人を圧倒してしまうかもしれません。

上のような図は UX についてなんとなく理解するには良いですが、学ぶ時に下記のような疑問が生まれるはずです。

  • どこから何を学べば良いか分からない
  • どこまで学べば良いか分からない
  • ある分野が自分の仕事に関係しているかイメージできない

例えば、UX には人の認知や行動の理解が欠かせないので「予想どおりに不合理」のような書籍を手に取るとします。読み物として楽しめますが、本で得た知識をどうやって UI デザインに活かせば良いか分かりにくい場合があります。誰かに勧められただけだと「そもそも関係あるの?」という疑問が出てくるかもしれません。

UX は多岐の分野に精通しているべきという論調があるものの、様々な分野の情報を繋ぎ合わせて知識にするといった学び方を学ぶ機会が少ないと思います。繋がりがイメージできないので知識として残らないですし、得た知識を日々の仕事へ還元するのが難しくなります。

ネットワークのように知識を広げる

自分の場合、学習がフロー状態になるときはネットワークのように知りたいという欲求が広がったとき。例えば「UI デザイン」の勉強をしているときも「これを使いやすいってどう判断する?」「なぜこの表現が直感的と思えるのだろう?」「組織に合うプロセスにどう調整する?」と新しい疑問が湧いてきます。

UX もそんなふうに自分の興味に身を委ねて知識を広げていけば良いと思っています。例えば The Disciplines of User Experience Design を地図とみなした時に、下図のような広げ方をする人もいるはずです。

ネットワークのように分野を広げていく

入り口は UI デザインで「作るのが楽しい」というモチベーションで良いと思います。重要なのは、そこから自分の興味を広げつつ学びを止めないことです。概念図を真に受けてすべて学ぼうとする必要はありません。日々の生活や仕事のなかで見つけた『引っ掛かり』から学びを広げていけば、次第に自分にしかなれないデザイナー像が形成されるはずです。

ネットワークのように少しずつ知識を広げていけば、一見関係ないようにみえる分野に対しても「こう工夫すれば実践できるかも」と思えてきます。一方、繋がりを探さないでひとつの分野に閉じこもってしまうと、デザイナーとしての視野が狭くなってしまうかもしれません。

自分は昔からそういう学び方をしてきましたが、知識の整理を始めたことによって、自分の学び方がより体系化されたように思えます。自分の思考スタイルに合えば、どのツールを使っても新たな知識を生み出すことができます。どれを使うにしても、蓄えた情報から繋がりを見つけることができる場であることが理想です。

UX に限ったことではないですが、デザインがこれからさらに社会と関わりを深めていくのであれば、今まで以上に多分野の知識が必要になるはず。情報にはすぐにアクセスできる世の中になりましたが、それを仕事に活かす知識へ変えていくのはあなた次第です。情報から知識へ変えていくためにも、繋がりに気付ける視点と学習習慣を作っていきましょう。

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。