プロダクトマネージャーにはできないデザイナーの強みを活かす方法

ユーザー課題という軸足を置いて PdM の良きパートナーとして働くことで、デザイナーの立場にいながらプロダクトの方向性に影響を与えることができます。

プロダクトマネージャーにはできないデザイナーの強みを活かす方法

決める立場の難しさ

最初は広義なデザインに関わるデザイナーも、組織が大きくなると仕事の範囲が小さくなる場合があります。課題の根本を理解した上で施策の方向性を決めるところに関わりながらデザインしたい方には辛い状況になります。そこで、プロダクトマネージャー(以下 PdM)へ転身を考えるデザイナーもいます。PdM が決裁権をもつ組織は少なくないですし、影響力もあります。また、IA (Information Architecutre) やリサーチなどデザイナーのスキルを活かす機会もたくさんあります。

自身が考えるキャリアパスや興味の変化で UX デザイナーから PdM の転身はアリだと思いますが、あえて言いたい「デザイナーとしてユーザーの守護神であって欲しい」と。

デザインは文脈や制約によって答えが流動的に変わります。ケースバイケースと言えるところが多々あり、決裁を PdM やステークホルダーに委ねることもあります。一方、PdM は極論『決裁が仕事』といっても良いくらい、あらゆることを決めて進めていく必要があります。

もちろん、独断で決めることはなくコラボレーション / コミュニケーションが必須になるものの、最終的に『決めて進める』ことを後押しする責任者が PdM の役割だと思います。とは言っても、決めることはそう簡単なコトではありません。

プロダクトマネジメントトライアングルで図解されているようにユーザー・開発・ビジネスの.3 要素をバランスよく考えれば決めれるとは言い切れません。リソース、タイミング、市場の変化、社内政治など様々な関連要素によって比重を変えて物事を決めるタイミングが多々あります。トライアングルの 3 要素それぞれ激しく引っ張り合うなか、現場で実現可能な解を見つけ出すのが難しいところです。

図:ユーザー・開発・ビジネスの.3 要素
プロダクトマネジメントトライアングルにある『引力』

経験が浅いデザイナーだと「ユーザーの課題解決に取り組めばビジネスにも貢献できる」といったデザインを中心に置いて物事を捉えがちです。その考え方は間違っていないですが、その心構えで PdM の仕事をしても決めて進めるのは困難です。UX デザイナーのスキルセットは PdM の決める仕事にも役立つものの、デザイン領域に多くの時間を費やせるわけではありません。

デザイナーの立場だからできること

PdM は様々な要素を考慮してプロダクトを前進させなければいけない一方、デザイナーはユーザー課題の理解に多くの時間を割くことができるのがメリットです。リサーチインサイトから、解決すべき課題をを提案することができますし、『あえて』ユーザー課題だけにフォーカスして自由に解決策を模索する余地もあります。

また、PdM が的確な判断ができるような情報 / ツールを提供して支援するアプローチもあります。例えば以下のようなことに困っている可能性はあります。

  • プロダクト戦略と直結したフィードバックはどれくらい来ているのか
  • 指標に影響するユーザー課題は何か
  • 定量調査で見えている傾向を裏付けるインサイトはあるか

こうしたリサーチに基づく情報だけでなく、チームで判断基準を合わせるためのツールもあると PdM の仕事が楽になるはずです。カスタマージャーニーやペルソナのようなデザイナーが得意とする視覚化は「ユーザーの理解」という目的だけでなく、「PdM をはじめとしたチームの判断時間を短縮させるツール」として捉えると作り方が変わると思います。

カスタマージャーニーに指標と施策をプロットして PdM の決断を補助

ユーザー課題という軸足を置いて PdM の良きパートナーとして働くことで、デザイナーの立場にいながらプロダクトの方向性に影響を与えることができます。まず、PdM が物事をどのように決めていて、決める際に何に困っているか相談してみてはいかがでしょうか。

Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。