Subject to Change
ユーザー・エクスペリエンスをウェブサイト制作で実践している Adaptive Path で働いている方4名が共著した本。The Long Wow をはじめ、サイトで掲載されていたコラムと新たに加わった情報が一冊としてまとまった本という印象ですね。タイトルの「Subject to Change (変更する可能性)」からも分かる通り、変化を予測出来ないほど未来はダイナミックでスピードがあるので、それらに柔軟に対応出来るようにしようというのがテーマでした。
人が求めているより良い体験は、ひとつのプロダクトやサービス単体によって実現出来るものではなく、企業・機関そのものも変化する (デザインされる) ことによって初めて実現出来ることが指摘されています。その中で、顧客調査、デザイン、そしてアジャイル的な技術導入というプロセスが必要であるとされています。機械的に解析して決められたプロセスの中で『作業』するのではなく、人を理解し、人が考え、そして人らしく組み立てて行くことが重要なのでしょう。なんとなく IDEO が提唱しているデザイン論とかぶっている感じもしました。
すべてにおいてアジャイルにやっていくのは難しいですし、作りたいプロダクトのために一気に組織構造を変えることは不可能です。作るプロセスがアジャイルになっていくのであれば、組織構造もアジャイルに変えて行けば良いと思います。書籍でも指摘されていますが、こうしなければならないということは何もなく、企業の文化に合ったものを模索して導入するしかないです。ただ、今までのウェブサイトの構築方法やプロダクトの作り方ではダイナミックな未来とそれらを使う人々のニーズに柔軟に対応しきれないのではないかという疑問を提示している書籍でしょう。
答えを明確に出せない話題ではありますが、成功事例にアップルを挙げているのがちょっと多かったのが残念です。もう少しバリエーションが欲しかったですし、Adaptive Path が行っているやり方も、もっと紹介してほしかったです。今の作り方が何が問題でどうすれば良いのかヒントを与えてくれるだけでなく、自分で何が出来るのだろうかと自発的に考えさせてくれる書籍です。