新しい環境で働くデザイナーが最初にやるべきこと

「何かしないと!」と焦らず、少し長めの期間でどう活躍への道筋を作っていくか考えるようにすると働き方が少し変わります。

新しい環境で働くデザイナーが最初にやるべきこと

やる気が落ちる負のスパイラル

新しい職場、新しい体制、新しいサービス。
気分をリフレッシュして新しい環境でデザイナーとして働くのはエキサイティングです。試したいアイデアもたくさんあるので、最初はやる気も高めです。しかし、戦略的に活動しないといつの間にか日々の作業に追わるだけで、周りへのインパクトも仕事のモチベーションも落ちていきます。

新しい環境で働き始めるデザイナーが陥る困難はいろいろありますが、例えば下記のようなパターンがあります。

  • 「少しでも早く役に立たないと」と焦る気持ちが先走ってしまい、情報量と必要な知識が多過ぎて整理がつかなくなってしまう。
  • 「こうしたほうが使いやすいよ」と改善案を提案してみたものの採用されず、気づけば指示を受けて作業する人だけになってしまう。
  • 「これを機会に〇〇はじめよう、広めよう」と意気込むものの、他にやることがたくさんあるので次第にやる時間を失う。

こうした状況にならないようにサポートするのがマネージャーの役割ですし、チームオンボーディングのような仕組みもあります。ただ、周りの方や仕組みに頼るだけだけでなく、デザイナー自身も新しい環境に少しでも早く馴染むために計画が必要です。

焦らず計画を立てる

たとえスキルと経験が豊富な方でも 1 ヶ月で第一線で働ける方はごくわずか。特にアプリ / サービスがリリースされて数年経っていると、作っているモノも人間関係も複雑です。影響範囲が少ないものでない限り、画面ひとつ変えるのも一苦労します。様々な事情と判断の末リリースしているわけですから、見た目を整理しただけのデザイン提案だと「とても良いけど…」と言われるだけで前進しません。

少しでも早く役に立ちたいという気持ちが先走って何か作っても、うまく周りとの接点と築けなくなります。忘れてはいけないのは、高いスキルがある方でも活躍するには時間がかかるという事実。「90日で成果を出すリーダー」みたいな書籍があるように、本当に何かインパクトを与えるには最低でも 90 日間は必要になります。つまり、焦る必要はまったくないわけです。

「何かしないと!」と焦らず、90 日という少し長めの期間でどう活躍への道筋を作っていくか考えるようにすると働き方が少し変わります。特にアプリ / サービスに携わるインハウスデザイナーはそれくらいの気持ちで動いた方が丁度良いと思います。

スマート(SMART)な活動をする

「活躍」「役に立つ」はとても抽象的な表現です。目指すゴールが抽象的だと、ゴールへの向かい方も手段も決めるのが難しくなるので、一所懸命の割には効果が得られないことがあります。まず、頭の中でぼんやり描いている「新しい環境で活躍する」をより明確にし、具体的な行動に移れるような目標設定が必要です。

目標設定をつくるのに役立つのが SMART というフレームワークです。具体性(Specific)、測定可能(Measurable)、達成可能(Achievable)、関連性(Relevant)、期限(Time-bound)の頭文字からとっているもので、どうやって目標を立てれば良いか分からないときに役立ちます。

例えば「新しい環境で活躍する」といった抽象度の高い表現に対して、SMART を使って下記のような問いかけができます。

  • 具体性:どういう状態だと活躍していると言える?
  • 測定可能:活躍していることをどうやって判断する?
  • 達成可能:画面設計を大きく変えれないなら、何ができる?
  • 関連性:私が組織から期待されていることとの関係は?
  • 期限:いつまでに達成する?(例えば 90 日間)

SMART を使うかどうかはさておき、具体性のある目標設定をすることで集中すべきこと、優先すべきことが何か判断しやすくなります。

ただドキュメントや関連資料を読み漁るだけでは何も頭に入ってこないですし、分からないことが余計増えて焦る気持ちが助長されます。目標設定されていると、何を読めば良いか、誰に聞けば良いか、その方にどんな質問すれば良いか考えやすくなります。「この期間はココに集中しよう」と決めるだけでも気持ちが少し楽になるはずです。

中期と短期を行き来する

日々の仕事はタスク管理 / プロジェクト管理を使えばだいたい把握できます。ただ、日々の管理ツールだけだと SMART などで作った目標の存在がだんだん薄れていきます。 1 ヶ月に 1 度で良いので、振り返りは欠かせません。

振り返り時に下記のような問いをすると次に何をすれば良いか考えやすくなります。

  • 目標に向かって実行したタスクはあるか?
  • やろうと思って出来なかったことは何か?
  • 分からなくなったこと、迷ったことは何か?
  • 方向転換やトレードオフが必要なことはあるか?

目標設定も振り返りも、できればマネージャー / メンター / アドバイザーと一緒にすると、より現実味が帯びて来ます。彼らに答えがなかったとしても、会話を通してぼんやりとしていた考えが言葉になることがあります。また、マネージャーであれば組織や部署がもつ目標と結び付けたアドバイスもしてくれるはずです。

遠回りのようで近道

デザイナーであれば、いちはやく何かアウトプットしたくなるものです(そこが評価に繋がることも多々あるし)。すぐに手を動かしたとしても期待通りのインパクトがつくれるわけではないのが、デジタルプロダクトに取り組むデザイナーの難しいところ。最初に何をすべきか具体性のある目標を立て、その目標に向かって関わる人と話したり情報を集めることが、アウトプットより大事なことだと思います。アウトプットの前に、テーマを決めたインプットが先です。

大きな志を胸に秘めつつ、まず最初は小さなことを初めてみる。そんなこと言ってもやっぱりやること / やりたいことがたくさんあって決めれない。そんなときは散歩したり外出するなど仕事場から離れたほうが良いかもしれません。なぜかスッと整理される瞬間に出会えるはずです。

Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。