デザイナーが活躍するために必要な一貫性とは
コラボレーションをするには共通言語が欠かせませんが、どう進むべきかといった活動における認識が揃っていないと現場がうまく回らなくなります。
作り続けるだけだと小さくなる
デザイナーがデジタルプロダクト(web サービスやアプリなど)に貢献できることは山ほどあります。しかし、デザイナーの視点で気になるところを改善しても組織からの評価は上がらないですし、ユーザーにも大して価値提供ができない場合があります。デザイナーのもつユニークな視点はプロダクトに多大な価値を提供できる可能性を秘めているものの、ただデザインしていれば自然とうまくいくわけではありません。
さらにやっかいなことに、デザインの依頼が次々とやってきます。「あれを作って欲しい」「これを試して欲しい」といった要望は絶えないので、ついつい受動的な動きになってしまいます(一概に悪いコトではないですが)。能動的なデザインの仕事をするために視座を変化させなければ、いつまでたっても、周りから来る依頼をさばく以上の活動ができません。そうした状態が続くと、少しずつデザイナーの仕事範囲は小さくなっていきます。
忘れてはいけないことは、事業の一部としてプロダクトがあるということ。そして、デザイナーはその事業を動かす組織の一員として働いているということです。経済活動の一環ですから、ひたむきに『ものづくり』しても実績も評価も上がりにくいです。
※ 若手がものづくりに集中できるような環境を用意するのがリーダーの役割ですが、そうとも言ってられない環境も少なくないです。
活動に一貫性をもたせる
時間も限られているわけですから、ひとつひとつ価値のある活動にしたいところ。その際、デザイナー視点の価値観で活動内容を決めるのではなく、事業方針や戦略と紐付けたほうがプロダクトだけでなく組織にもインパクトを与えやすくなります。以前、戦略について簡単な説明をしましたが、戦略を通して下記の 4 点が把握できます。
- 今あえてやること
- 今あえてやらないこと
- 迷ったときの判断のヒント
- 計測・評価ができる
「メニュー項目の順番を調整する」といった小さな活動も、戦略と間接的で構わないので結び付いていることが理想です。ただ、やりたいことから考えると、辻褄が合わなくなったり行き詰まってしまうので、まず戦略の理解から始めるのをオススメします。
下記のような質問をプロダクトマネージャー、部署マネージャー又は経営者に聞くか、該当資料を漁ってみると良いでしょう。
- 今期、組織が重要視している目標は何か?
- なぜそれが優先順位が高いとされているのか?
- 部署やチームなど、自分が属しているグループの目標は何か?
- 目標達成したかどうか、どのように判断するのか?
こうした質問から導き出される情報を知っているか知っていないかで活動の仕方が大きく変わります。
例えば「新規登録ユーザーが 2 週間以内に出品できるようにする」といった戦略があるだけでも、今何を改善するとインパクトになるか分かります。また、オンボーディング施策にアサインされたときも、どういう情報を掲載すべきか(又は省くべきか)判断がつきますし、行動を促すためにどんな工夫ができるか考えるキッカケにもなります。オンボーディング施策以外でデザイナーだけで動けるアイデアも思い付くかもしれません。
ユーザーアウトカム(この場合、すぐに出品できる)を生み出すために何をすべきかといった視点から、少しずつ具体性のある UI に落とし込むことでデザインの明文化やフィードバックもしやすくなるメリットもあります。戦略からタスクまで一貫性があるかないかでプロダクトだけでなく組織への影響も大きく変わります。
『戦略』という言葉は人によって捉え方が異なりますし、精度や粒度も様々。「うちには戦略がない」と嘆く方もいるかもしれませんが、経営者に「これから半年でどうやって成長させたいですか?」みたいな軽い会話から進み方のヒントを導き出すこともできます。
コラボレーションをするには共通言語が欠かせませんが、どう進むべきかといった活動における認識が揃っていないと現場がうまく回らなくなります。「当たり前」「誰でも知っている」といった考えは捨てて、あえて「これってどういう意味ですか?」と質問することがデザイナーとしてインパクトを与える活動をするための第一歩です。