ユーザー調査に必要な分析の「はじめの一歩」

分析で価値が変わる

ユーザー調査(ユーザーリサーチ)は始めるのも実施するのも大変ですが、分析するのも楽なことではありません。せっかく調査してもログがあるだけでは意味がありません。ユーザーの言葉を引用してポスターやスライドで見せるのは啓蒙目的であれば良いですが、本当に必要なのは次の開発へ繋げるための判断材料です。分析でユーザー調査の価値が決まるところがあるので、次へ繋げるためにも分析は欠かせないところになります。

分析もデザインと一緒でツールの使い方を覚えたり、綺麗なレポートの事例を見ただけでは上達しません。基本を覚えた上で、何度か実践を繰り返すことで少しずつ上達していくものです。定性調査でも定量調査でもつかえる分析の第一歩になるポイントを押さえておけば、レポートの質もグッと上がります。

目的を明確にすること

分析をする前に重要になるのが、調査の目的を明確にすること。分析手段を知っていても、分析対象になるデータの質が悪いと意味がありません。ユーザーインタビューでも「どうやって使っていますか?」という広い質問ではなく、「〇〇のタスクをどのように完了していますか?」と絞った質問にしたほうがあとで分析がしやすくなります(もちろん誘導質問にならないような聞き方が必要ですが)。

データを集めて整理したらいよいよ分析が始まるわけですが、以下の 4 つがユーザー調査で行う代表的な手段。深掘りを始めるための第一歩にはなるはずです。

パターン

よく見かける傾向は何かを見るけること。情報整理の基本中の基本ですが、ユーザー調査の分析にも欠かすことができません。たくさん見かけるフィードバックや行動は何でしょうか。五月雨式にフィードバックを見ているだけでは見えにくい傾向も、表にして整理すると見えてくることがあります。

例外・アンチパターン

よく見かける傾向を探し出すだけでなく、意外なことを見つけることも忘れてはいけません。場数を踏まないと見えてこないですが、今まで見なかったフィードバックや、対立する意見が並ぶこともあります。今までなかった意見や、チームの認識とは異なる情報は印を付けておくと良いでしょう。

比較

例外と同様、中長期にわたって情報収集していないと出せませんが、他と比較すると見えてくる傾向もあります。期間で比較するのはもちろん、機能別、要望の種類別で比較してみると新しい発見がある場合があります。

比較の際は自社で蓄積している「ユーザーの思考・行動データ(ペルソナ)」と比較するだけでなく、ターゲット市場における文化的な背景との比較もすると良いでしょう。例えば「副業をする人が増えている」という社会的な動きに対して、自社プロダクトを使うユーザーはどうかという比較もできます。

プロファイリング

フィードバックと密接な繋がりがあるのがユーザープロフィール。ある特定の業種だと見つかる場合がありますし、組織規模や対象者の性別・年齢・業種で変わることがあります。フィードバックの「なぜ」を深掘りするためには欠かせない要素です。

まとめ

ユーザー調査を通して真のユーザーの姿を目にすることができます。何度やっても驚きと発見はありますし、「もっとユーザーの課題解決にコミットしたい」というモチベーションも 100% 上がります。しかし、モチベーションアップのためだけにするにはコストが高い仕事です。組織にもプロダクトの品質にも貢献できるものにしなければ、ユーザー調査の価値を周りは理解してくれません。

プロダクト開発において「やるべきコト」は無数にありますし、優先順位を決めるのも簡単ではありません。要望が多いから実行するという多数決だけでは出来ないこともたくさんあります。決めるためのヒントにユーザー調査にあるデータは参考になりますが、周りが消化しやすいように整理するのは調査する人の仕事。情報を整理して良い分析をするために、「パターン」「例外」「比較」「プロファイリング」から始めてみてはいかがでしょうか。

Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。