UXデザインを諦めないための戦略作り

目の前のタスクをこなすだけだと、ユーザーはもちろん組織にインパクトをもつデザインを作るのが困難になります。戦略に関わる 3 つの川のどれに向けて一石を投じているのか明確にすることで、次に何をすべきか考えやすくなります。

手段の前に問いかけ

書籍や web を探索すれば、UX デザインの文脈で語られる様々な施策を見つけることができます。ユーザー調査、カスタマージャーニーマップ、ペルソナはもちろん、ライティングや UI アニメーションも UX デザインの一部です。実務で証明され続けている手法であっても、ただ実戦すれば良いというわけではありません。

例えばペルソナという成果物を作るという施策を実施したとしても、何のためにペルソナを作って、どのような効果を得ようとしているのかという目的 / 課題を設定していないと、作ったという満足感だけしか残りません。

また、求められる効果がすぐに得られるのは希です。書籍などでは「ペルソナを作ることでプロジェクトメンバーが同じユーザー像を描いてプロダクトの評価ができる」と効果が説明されていますが、作ったその日からいきなり皆の視点が合わさるほど単純ではありません。ペルソナを作ってプロダクトのレビュー会を開いたり、ポスターを作って常に目に入るような状態を作らなければ、忘れ去れてしまいます。使ってみて言葉や視覚化の表現が違うなと感じたら、ペルソナに修正・調整も必要になります。

ペルソナという手段を目的にしてしまうのも良くない傾向です。例えば組織で以下の課題があると感じたときに、ペルソナを作るという手段が役に立つ場合があります。

  • メンバー間でユーザーに関する意思疎通ができていない
  • 同じ視点で議論ができるような土台がない
  • 何を優先して開発すべきか、意見が分かれている
  • ユーザー目線といっても、実は作り手目線かもしれない

もちろん、ペルソナを作ることでこれらの課題がすべて解決するわけではありません。しかし、何のために作るのかを明確にしなければ、作ることが儀式化するだけでなく、ペルソナという手段がダメだったときの次の一手を打つことができなくなります。

プロダクト開発において戦略を明確にすることが重要とされていますが、UX デザインの啓蒙にも同じことが言えます。 UI デザインに特化していても、利用者体験という広い視野で設計していたとしても、常に以下の問いかけが欠かせません。

  • なぜ、その施策 / 手段が必要だと感じているのか
  • 何を解決し、どのような効果を求めているのか
  • 中長期的にどうなっていると望ましいのか
  • 第一歩になるタスク(手段)は何か

戦略にある 3 つの川

施策を考えるときの『3つの川』

UX デザインの啓蒙を 3 つの川に例えることができます。流れの速さも違えば影響範囲もそれぞれ異なります。施策という一石を投じたら波紋のように広がる小川もあれば、すぐに消えてしまう大河もあります。

大河 : 文化

組織全体に影響を及ぼす大きな要素ですが、流れが遅く数回の施策だけでは変化しません。決裁者に直接アプローチをして、将来どうなりたいかという大きな絵を描いた上で最初のアクションと、そこで得られる効果を示す必要あります。 数年かかる可能性がありますが、下記の「プロジェクト」「タスク」にも多大な影響を及ぼすことができます。

川 : プロジェクト

個々のプロジェクトで気づいた課題に取り組むパターン。工程に関わる課題に取り組むことで、意思疎通や決済をしやすくします。下記の「タスク」が実施しやすい環境を作ることができますが、その場その場の対応になりがちなのが欠点です。プロジェクトで学んだことをテンプレート化して次に繋げることができるようにするための準備が不可欠になります。

小川 : タスク

1 日、もしくは数時間で実践できる施策。UI の見た目を調整したり、コピーを変えるといったことも含まれます。すぐに何かしらの効果を得ることができますが、全体への影響は微々たるもの。なぜ施策をしたのか、そしてどのような効果が得られたのかといった文脈を記録しておかなければ、やっていることすら気づいてもらえない場合もあります。

今、自分の立場でできるところは何で、そのために何をすべきか考えるときの下図のようなプロセスにのせて施策をストップ、実施するのも手段です。

プランニングのサイクル

  1. 課題の書き出し : とにかく思いつくことを書き出す
  2. 優先順位 : 上記の川に例えるとどこに結びつく課題か。そして、どれくらいのインパクトとコストがかかるか大まかに見積もる
  3. プラニング : 課題解決の施策をステップを組んで設計する
  4. 施策実施 : 具体的な行動に移す
  5. 評価 : 振り返りと記録をして、次へ活かす

目の前のタスクをこなすだけだと、ユーザーはもちろん組織にインパクトをもつデザインを作るのが困難になります。デザインという日々のタスクに文脈とストーリーを結びつけることで、どの川に向けて一石を投じているのか分かりやすくなるだけでなく、次に何をすべきか考えやすくなります。

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。