デザイン指標を作る前に理解しておきたいアウトカムとは
なかなか良い指標が見つからないという方は、まずユーザーのアウトカムは何か考えてみてはいかがでしょうか。
軽率な指標作りは落とし穴だらけ
アプリや web サービスの改善においてデザイン指標を設定することが欠かせません。今は様々なデータを収集することができますが、デザインの改善には役に立たないものも少なくありません。
ユニーク訪問者数、直帰率、滞在時間などアナリティクスで取得できるデータは数多くありますが、これらを見ているだけでは改善のヒントは見つかりません。例えば直帰率 80% あったとしても、それが良いのか悪いのかの判断基準がなければ次の施策を考えるのは困難です。ユーザーのニーズを満たしていないから直帰しているかもしれませんし、満足したから直帰した可能性もあります。
また、「直帰率が高いからコンテンツの改善が必要だ」という考えも浅はかです。コンテンツの問題かもしれませんが、ユーザーが直帰する理由は他にも考えられます。直帰というユーザーの心理・行動を理解していないまま結論に結びつけると、間違った施策を始めてしまう恐れもあります。
大まかな状況を把握する上でアナリティクスのデータを見るのは良いですが、ユーザーの「Why」も分からなければ、デザインを評価するには十分な判断材料とは言えません。
適切な指標を見つけ出すのは簡単なことではありません。手軽に様々な数値が取れるので、何を見たら良いか分からなくなる問題もあります。デザイン指標を考える上で、私たちデザイナーは改めてユーザーに注目して考えなければいけません。
アウトプットではなくアウトカムに注目する
効果測定をするときに、私たちはよくアウトプット(機能)に注目してしまいがちです。例えば検索機能というアウトプットをした場合、それが使われたかどうか(1 ユーザーあたりの検索回数)を計測することがあります。それを測ること事態は良いですが、ユーザー体験の向上と検索をした回数には直接関係がありません。
デザイナーが注目しなければいけないのはアウトプットではなく「アウトカム / Outcome (成果)」です。検索というアウトプットによって、ユーザーの行動がどう変わるのでしょうか。検索がユーザーが抱えていた課題を解消したのか。検索前後でアプリの使い方が変わったかを知れたほうが、ユーザー体験の向上に貢献できたか判断しやすいと思います。
アウトプットではなくアウトカムという考え方は、Logic Model (ロジックモデル) に基づいています。デザインはもちろん、事業立ち上げの際にも用いられるフレームワークで、なぜコアになる価値は何か整理するのに便利です。ロジックモデルをデザイン文脈で書き換えたのが下図。
アウトカムには以下の特徴と注意する点があります。
- 手段ではなくユーザーが求める成果であること
- なんとなくのイメージではなく、具体性がある
- 計測ができるくらい具体性があるのが理想
- アウトカムは複数あり、目的・役割によって増える
- ユーザーへの理解を深めなければアウトカムは分からない
不動産サービスを例にした場合、以下のようなロジックモデルを作ることができます。
- リソース : 不動産, エージェント, お金, 時間
- アクティビティ : お気に入り物件を保存する
- アウトプット : お気に入り物件をメッセンジャー通知
- アウトカム : タイミングを逃さず見学を申し込める
- インパクト : 良い物件に出会える機会が増える
アウトカムとアウトプットがあれば、何のために機能を作るのか明確になるだけでなく、指標も「メッセージ受信数」ではなく「お気に入り物件の見学の申込をした回数」のほうが適切なのが分かります。アウトカムから生まれた指標だと、メッセージの送信タイミングや、メッセージのトンマナの変更など、デザイナーが貢献できる施策も考えやすくなります。
もちろん、ユーザーアウトカムがひとつということはありません。アウトカムは複数ありますし、その中から「今期注視すべきアウトカム」と優先順位を決める必要も出てくるはずです。どのアウトカムを訴求していくか決めるのは難しいですが、「アクティブユーザーを増やしましょう」と言われるよりアウトカムにコミットするほうがデザインが考えやすいですし、評価もしやすくなります。
アプリや web サービスの品質を高めるための指標を作りたいけど思いつかない。なかなか良い指標が見つからないという方は、まずユーザーのアウトカムは何か考えてみてはいかがでしょうか。
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