UX を構成する要素と測定方法
ユーザーエクスペリエンス (UX) という言葉は、体験という意味も含まれていることもあり、曖昧で測定し難いもののように捉えがちです。作る私たちがよく使う言葉ですし、今やセールストークとして使われている場合もあるかもしれませんが、「じゃ、実際どうやって効果を報告するの?」ということになると、難しい課題です。しかし、主観的な感想を述べることだけが UX の測定方法ではありません。UX はウェブサイトやアプリケーションを構成するひとつの独立した要素ではなく、以下の 6 つの要素の集合体といって良いでしょう。
- コンピュータとのインタラクション
- 情報構造 (IA)
- インタラクションデザイン
- ユーザーインターフェイスデザイン
- ユーザビリティ
- ビジュアルデザイン
上記に挙げた要素の中には、既に解析や分析がされているものもあると思います。つまり、今まで使ってきたツールやメソッドを採用し、それらを複合することで、UX を測定することは難しくないわけです。
まず、UX が改善されたらどうなるかを想像してみると、分かりやすいでしょう。Nielsen Norman Group が出している Usability Return on Investment にも書かれていますが、利用者中心のデザインやユーザビリティを意識することで高い ROI に繋げることが出来ます。つまり、アクセス数やクリック率の向上だけでなく、利用者の高い満足度にも影響します。改善された後の状態を想像すると、アクセス解析やユーザーテスト、インタビューが UX を測定する上で役に立つというのが分かってきます。
ユーザーテストやインタビューといっても特別な部屋を用意する方法をとることはありません。友達や同僚にカジュアルに聞いてみたほうが、引き出せる情報も多い可能性があります。どの方法でやるにせよ、何をどのように聞くかが重要です。参考になるのが、マイクロソフトのUsability Reserch が公開している Measuring Desirability: New methods for evaluating desirability in a usability lab setting (Word) という文書。
リアクションカードという、感情と直結した言葉を 100 ほど用意して、それらを利用者に選んでもらって理由を聞かせてもらうという方式を紹介しています。ポジティブな表現からネガティブな表現まで様々。しかも「Simplistic (シンプル)」という、ややポジティブにとれるような言葉でも、話を聞いてみるとウェブサイトの単純すぎて楽しくない・・・といった意外な回答を得れる場合があります。言葉を制限しているので、あとで分析しやすいというメリットがあるだけでなく、人によって言葉の使い方や捉え方が違うのでそれらを上手に汲み取る良い方法ですね。
UXは、ちょっと違う存在だなと感じる方もいるかもしれませんが、実は私たちがウェブサイトやアプリケーションを作る上で、いつも気にしている事柄を総合して表現している言葉に過ぎないわけです。様々な角度から解析が出来なくても、ひとつひとつのデータから「なぜ利用者はこのように考えたのか」というのを問い続けることが UX のスタートなのかもしれません。