UXの測定項目を考えてみた
日本でも UX デザイナーと名乗る方が増えてきましたが、去年あたりから Web では一種のバズワード的な存在になっている UX (User Experience)。『バズワード』と書きましたが、重要と感じている方が多くいるからこそ注目されているわけですし、流行から次のステージに進んでいるのも事実です。デザイナーと呼ばれている方はもちろん、Web サイトを構築する様々な職種の方が UX に反応しているのをみると、ひとつの共通言語 (認識) として重要なポジションになる可能性を秘めています。
ユーザーテスト、ペルソナ設定、アジャイル開発など、水準の高い UX を実現するための様々なアプローチが存在しますし、今でも模索が続けられています。作り出すほうだけでなく、作った後、つまりサイトの測定方法はどうでしょうか。UX を意識して作ったまでは良いですが、それをどう評価すれば良いのでしょうか。ページビューが上がる、売上が上がるという部分は重要ですが、それだけ体験を測定することが出来るのでしょうか。 UX が重要と分かっていても、言葉に「体験」と付いているが故に、見え難いあやふやな領域のように見えてしまいます。ここで改めて測定方法を考えることで、よりはっきりとしたデザイン項目として受け入れやすくなるはずです。
私なりに UX の測定項目になりそうな要素を幾つか考えてみました。
- スピード
- ページ表示速度はもちろん、レスポンス (反応) スピードも欠かせない要素です。特にフォームが含まれるページや JavaScript を多用した機能を操作する際、はやく反応しなければ不快感を与える可能性もあります。早く見せるための技術的なアプローチだけでなく、ビジュアルを工夫することで感覚的に早く見せるという方法もあります。スピードは他に比べると測定もしやすい要素といえるでしょう。
- ビジュアル
- 信頼性を築くキッカケにもなるビジュアル。改善するだけで印象が変わってくることを考えると UX には欠かせない要素といえるでしょう。しかし、この主観的になりやすい要素をいかに測定するかが課題。ユーザビリティテストのような形式よりインタビューやアンケートを通してのほうがビジュアルの影響力を測定しやすいでしょう。
- コピーライティング
- 見た目だけでなく、文章のトーンもサイトの性格を示す重要な要素です。文章が適切な量かつ意図した形式で利用者に届けられているでしょうか。書き方を少し変えるだけで使いやすさに影響を与える場合があります。スペルミスや文法ミスのチェックはもちろんですが、トーンが Web サイトで表現したい性格とどれだけマッチしているかも測定要素です。
- フォームデザイン
- トップページのデザインに注力するより、フォームデザインに時間をかけたほうが ROI の影響は大きいと言われています。フォームのラベリングを変更するだけでも良い結果に繋がることも。気持ちよくサイトを操作してもらうためには欠かせない要素です。離脱率やゴールまで辿り着いている比率をみて測定が出来そうです。
- エラー処理
- フォームの未入力や入力ミスをどのように伝えるか、システムエラーをどのように表示しているでしょうか。人為的に見逃してしまうこともありますが、ほとんどの場合、利用者がミスを犯してエラーが発生しているわけではありませんし、彼等のせいにしているような見せ方は避けたいところ。エラーからの離脱率、または再度挑戦しているかどうかを測定すれば、エラー処理がうまくいっているか分かるかもしれません。
- ソーシャルメディア
- 良いと思えるサイトが見つかれば、他の人に伝えたくなることがあります。人がサイトについてどう感じているかを知ることで、サイトの体験を客観的に知ることが出来るでしょう。インタビューやアンケートでは知ることが出来ないような本音も聞こえてくるかもしれません。どう測定に繋げるかが難しいですが、声を見つけ出す方法はたくさんあるので、まず集めている価値はありそうです。
- ビジネスゴール
- ビジネスとデザインが密接な関係であるからこそ、UX が重要であると考える方が増えて来ているわけですから、ビジネスゴールは重要な測定項目といえるでしょう。結局のところ、先に挙げた要素もゴールへ行き着くための工夫であるわけですが、課題になってくるのが、上記の要素がいかにゴール達成に影響を及ぼしているのかを見極める部分にあります。
測定と聞くと、数字の分析というイメージが先行してデータ中心のデザインになるのではと考える方もいるでしょう。極端な例を「感性によるデザイン データによるデザイン」で紹介しましたが、上で挙げた要素の中にはデータだけで決定出来ないものがあります。ビジュアルのように感性を発揮しなければならない項目もあります。データと感性 / 経験を組み合わさなければ良い体験が作れないどころか、サイトの芯のようなものも失われるでしょう。
全く新しい測定項目というわけでもありませんから、今からでも知ることが出来る要素が少なくありません。これらの要素をどのようにまとめあげて形にするかという別の大きな課題も残されていますが、項目を洗い出すことで何に重点を置けば良いのかが見えてきます。
background image is created by Matthieu Mingasson