Webから始まる教育パラダイムシフト

Webの活用により教育が大きく変化し始めています。その結果、情報へ自由にアクセスできるようになっただけでなく、従来の先生・生徒といった上下関係がフラットになり初めています。

Sir Ken Robinson Changing Paradigms

Creativity expert Sir Ken Robinson will ask how do we make change happen in education and how do we make it last?

教育システムと教育に対する考え方に鋭い疑問を投げかけるサー・ケン・ロビンソンの講演。同講演のイラスト版はこちらから

MIT が講義を無料で公開する OpenCourseWare (OCW) をはじめて 10年になります。今では欧米だけでなく国内でも 数多くの大学 が、オープンコースウェアの動きに参加しています。iTunes で iTunes U を活用している方もいると思いますが、OCW があってこそです。

2001年に誰でも無料でアクセス出来る百科事典 Wikipedia が誕生したことで、従来は高いお金を払わなくては手に入れることが出来なかった貴重な情報にたくさんの方がアクセス出来るようになりました。誰もがコンテンツを書き加えたり編集出来るという点で賛否両論だった Wikipedia ですが、今でも成長し続けているオンライン百科事典の姿を見てると、アプローチは間違っていなかったといえるのではないでしょうか。

百科事典の情報が自由になったのと同じように、今教育も自由になろうとしています。OCW はその一環に過ぎません。大きくて高価なパソコンを使わなくても、スマートフォンやタブレット、又は OLPC のような低価格のパソコンの登場により、Webと教育はより一層近い関係になりつつあります。教育が自由になるということは一体どういうことなのでしょうか。OCW 以外でもその例を幾つか見つけることができます。

Einztein
世界中の大学が公開している講義のビデオや文書をまとめて検索するだけでなく、独自のソーシャルラーニングツールを提供しています。ツールの利用は招待制。
smarthistory
美術・芸術の歴史を学ぶことができるインタラクティブサイト。このテのサイトは随分前からありますが、専門家の解説やビデオを観覧できるのが特徴。本格的な勉強にも使える資料です。
Scitable
生物のことを学びたい方はこちらがオススメ。生物・科学に興味がある方が集まるソーシャルネットワークですが、それだけではありません。サイト上で共有されている情報はすべて専門家によってレビューもされているそうです。生徒と専門家による濃いコラボレーションが生まれそう。
Academic Earth
欧米を中心に数多くの講義ビデオを観覧できます。シリーズでしっかり見たり、興味のある教授の講義を視聴するなど、探しやすく整理されています。これからの「正義」の話をしよう で知られるマイケル・サンデルの講義もたくさんあります
SkillShare
2011年4月に誕生したばかりの新しい教育 P2P サイト。たくさんのトピックに関して誰からでも教わることができます。今のところ Tips 集に近い雰囲気がしますが、場所から学べる場所を選べたりする機能があるので、カジュアルに誰かからモノ・コトを学べるようにするのが目的ということが分かります。
Flatworld Knowledge
オンライン上で読める無料の教科書。有料オプションになりますが、カタログから自分に合った教科書をカスタマイズすることも可能です。
Open Textbooks
Creative Commons をはじめとしたオープンなライセンスで公開されている教科書へのディレクトリ。先生はコンテンツをカスタマイズして独自のコースを作れるというメリットがありますし、生徒は無料で情報へアクセスできるだけでなく、Web 上であることからいつでも何処でもどの機器からでも教科書が読めます。
P2PU
誰でも学べるだけでなく、独自のコースを作ることができるオンライン上にしかない Wiki 大学。ひとりで学ぶための情報があるだけでなく、コースの運営に役立つ情報も用意されています。

ここで2つの大きなトレンドをみることが出来ます。

ひとつは情報へ自由にアクセスできるようになったこと。もう教育の分野において情報そのものが特別な存在ではなくなってきているのが分かります。そしてもうひとつは従来の先生・生徒といった上下関係がフラットになり初めているという点。先生は単に教えるという立場から、Web にある膨大な情報やツールを活用して生徒をリードする存在のように見えます。場合によっては生徒が他の生徒に教えるということもありえるわけですが、それをうまくまとめてファシリテートすることが求められているのかもしれません。

情報はとりあえずあるという状態が普通になると、情報を記憶したり吸収するという課程に重点を置く必要もなくなるかもしれません。それより、その情報で何が考えられるのか、なぜそうなるのかといった議論や探求をする時間に割くことが出来る可能性がでてきます。

しかし、こうした中でどのように先生は生徒を採点・評価をするのでしょうか。測定項目は一体どこにあるのかが見え難い可能性があります。これらは情報が自由になった Web 時代において無視出来ない課題のように見えますが、もしかすると採点をしなければならないという考え方自体が 19 世紀から変わらない古い教育システムの名残なのかもしれません。

私たちの住む社会について、世界について、そして未来について・・・様々なデータや分析を Web を使って得ることが可能になりました。だからといって教育システムが必要ないわけでもありませんし、これからも教室という場は残るはずです。ただ、こうした情報の進化と共に教育に対する視点を変えなくてはいけませんし、(表現出来ませんが)進化した教育を支えるシステムも必要とされているのかもしれません。変化が来るときに Web は必ず良い助けになるはずですし、Web に知識がある私たちが何か手助けが出来るはずです。

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。