箇条書きの工夫で伝わり方が変わる

箇条書きは単なる形式の問題ではなく、思考を整理し、情報を構造化するためのプロセスです。

箇条書きの工夫で伝わり方が変わる

意外と難しい箇条書き

仕事でドキュメントを書くことや読むことが多い中で、箇条書きの使い方が不適切な場面に出会うことがあります。 ただリスト形式にすれば良いというわけではなく、情報が整理されていないと、かえって読みにくくなる場合もあります。メモや議事録であれば自由に書いたほうが良いですが、PRDやデザインドキュメントだと下記のような箇条書きは避けたほうが良いでしょう。

長い文章

箇条書きの本来の目的は、情報を簡潔に整理して伝えることですが、1つの項目に複数の文章が含まれていることがあります。これでは、素早く情報を把握するという箇条書きの利点が失われ、通常の段落と変わらなくなってしまいます。

項目形式のばらつき

短い文章のときもあれば、名詞だけの場合もあるといった形式のバラつきがあると、単に読みにくいだけでなく、リストの目的自体が不明確になることがあります。 可能なかぎり、各項目の長さと情報量のバランスを整えたほうが読みやすくなります。

思うままの記述

考えたことを時系列のまま箇条書きにしているケースがあります。ドラフトの段階なら問題ありませんが、整理せずにそのまま残すと、最後まで読まないと何を伝えたいのか分からなくなることがあります。

接続詞の使用

思うままに書くと「しかし」「だから」といった接続詞を付けた箇条書きになることがあります。これにより、各項目が独立した情報として成立しなくなり、項目間の依存関係が強くなります。その結果、削除や移動といった整理が難しくなることがあります。

そもそも箇条書きすべきか考える必要があります。箇条書きを使うことで文章を簡潔にできますが、簡潔にしすぎると背景情報や前提条件が省略され、読者に正しく伝わらないことがあります。上記のような避けるべき傾向を含めると、次のような例になります。

**機能改善案**

* ユーザーの離脱率が高いので、オンボーディングの改善が必要
* 競合製品の分析を行う
* 新規ユーザーの獲得施策を検討する必要がある
* 細かな最適化ができていないかも
* UIの改善をして、使いやすくする
* そして、既存ユーザーの満足度も上げたい

簡潔にまとまっているようにみえるリストですが、幾つか問題があります。

  • 文末表現がバラついており、文章の一貫性が損なわれている -
  • 階層構造の欠如により、情報間の関連性が見えにくくなっている
  • コンテキストの不足により、施策の必要性が十分に説明されていない

リライトすると、下記のような文章になります。

## 現状の課題:
直近3ヶ月間のデータ分析により、新規ユーザーの継続率が業界平均を下回っていることが判明しました。特に初回利用後1週間以内の離脱が顕著です。この状況を改善するため、以下の施策を提案します。

### ユーザー体験の最適化
- オンボーディングフローの改善
  - 初期設定手順の簡略化
  - パーソナライズ機能の導入
  - 機能説明のビジュアル化
- UI改善
  - ナビゲーション構造の単純化
  - 重要機能へのアクセス動線の最適化
  - エラーメッセージの分かりやすさ向上

### 競合分析に基づく施策
- 市場調査の実施
  - 主要競合3社の機能比較
  - ユーザーレビュー分析
  - 成功事例の調査
- 差別化要素の強化
  - 独自機能の開発
  - 既存機能の付加価値向上
  - ユーザーフィードバックの反映

### 期待される効果:
- 新規ユーザーの1週間継続率を現在の45%から70%に改善
- 既存ユーザーのNPSスコアを現在の+15から+30に向上
- 月間アクティブユーザー数を25%増加

リライトした箇条書きで注意したことは3つあります。

  • 文書の構造化
    • 背景説明から始まり、具体的な施策、期待される効果まで、流れを作っています
    • 情報を階層構造にして、テーマ別に整理されています
  • 文体の統一
    • 各セクションで極力統一した文末表現を使用しています
  • コンテキストの提供
    • 現状の課題を明確に示し、なぜこれらの施策が必要なのかを説明しています
    • 具体的な数値目標を示し、改善の方向性を明確にしています

最初から構造化された箇条書きを作るのは非常に難しいです。まずは考えていることを書き出し、どのような情報があるのかを把握することからスタートしましょう。その後、「この文書で何を伝えたいのか」「読者に何を理解してもらいたいのか」を考え、テーマに沿って少しずつ整理していきます。最近のテキストエディタ(Notion や Bear など)は、リストの順番や構造を簡単に変更できるため、書き出した後の整理も容易です。

箇条書きは単なる形式の問題ではなく、思考を整理し、情報を構造化するためのプロセスです。ドキュメントは一度書いたまま放置されることもありますが、少しずつでも情報を整理することで、チーム内での共有がよりスムーズになります。

Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。