デザインのなかにある魔法と活用の仕方
先月再開したポッドキャスト「Automagic」には「Magic(魔法)」というフレーズが含まれています。名前の由来についてはぜひエピソード1を聴いて欲しいですが、魔法という言葉をここ1年よく耳にするようになった印象があります。iPad のようなハードウェアだけでなく、何気なく訪れる Web サイトなど、私たちの周りにはたくさんの魔法が存在します。私たちのように技術や仕組みに深く入り込んでいる人間からすれば、大したことのないと感じることでも利用者の視点からすれば魔法のようだと感じることは幾つかあります。
Twitter の会員登録プロセスをみてみましょう。
登録を済ませるとワンクリックで友だちを見つけだし、その場でフォローをすることが可能です。ひとりで初めても楽しくない Twitter ですが、初めてすぐに何人かの友だちをフォローして Twitter の魅力を体感してもらおうという配慮ですね。探す手間が省けて楽という視点もありますが、利用者からすれば会員登録しただけで自分の友だちをすぐに見つけてくれる魔法のような仕掛けです。
技術や IT の最新情報に常に触れている我々にとっては種明しが分かりますし、魔法のように感じないかもしれません。しかし、こうした演出が人々に「はっ」と思わせる瞬間であり、もう少しこのサイトをみてみようと思わせる瞬間であったりします。
現在、英語とスペイン語を翻訳することが可能な Word Lens。
iTunes ストアから無料でダウンロードできます。
もちろん、専門家でさえびっくりするような魔法はたくさんあります。iPhone をかざすだけで、目の前にある文字を自動的に翻訳してしまう Word Lens はそのひとつ。映し出されている文字を解析し、リアルタイムで映像の上に翻訳した文字を載せているわけですが、なんとなく仕組みが分かっていてもビックリするアプリのひとつです。
Twitter の会員登録のプロセスと Word Lens。それぞれ異なる魔法ですが、共通点があります。
- すぐに動作すること
- アッという間に何かができることが驚きに繋がる
- はやい段階で見せる
- しばらく使わないと分からないのではなく、いきなり見せる
- 偶発的な瞬間
- 偶然の出会い(があるような)を演出する
- 説明不要
- いろいろ説明しなくても、なんとなく(しかし明確に)伝わる
魔法のような瞬間を作り出すことで、人々に興味をもってもらいやすくなります。しかし、魔法を作り出すことが最優先ではないので注意が必要です。実世界にあるマジックショーと同じように、使うタイミングを間違えるとシラけてしまいます。魔法は非常にパワフルな効果をもたらすが故にリスクを伴うといってもいいでしょう。魔法を使う際に気をつけたいことは以下のとおりです。
- 期待と驚きのバランス
- 利用者の期待どおりに動かなくてはならないと同時にちょっとした驚きも必要。このバランス感覚が極端に崩れると「扱い難い」という感情に繋がってしまうことも
- 嬉しい驚きとは?
- ただ驚きがあれば良いというわけではなく、利用者が嬉しくなる(思わず笑顔になる)驚きが必要とされますが、まずその嬉しさがどこから来るのか判断しにくい
- 利用者のニーズが主成分
- ニーズに応えるために魔法のような技術や演出を取り入れることが可能かどうかを考える。魔法を何処に取り込むかという逆の考え方からはいると効果は得られない
体験を助長する可能性を秘めている魔法。ちょっとファンタジーの世界を語っているようですが、技術と学芸が融合する IT・Web の世界では魔法の連続だと思います。適材適所に魔法を活用することによって、利用者の感情に響くデザインを作る出すことが出来るかもしれません。