タブレットやスマートフォンで積極的に導入されているマルチタッチテクノロジー。デジタルなオブジェクトに触れているような感覚が味わえるタッチインターフェイスは、抽象的なマウス操作に比べて直感的だと言われています。スクリーンに触れるだけの動作は直感的で簡単そうですが、これにジェスチャーが加わることで突然ややこしくなる場合があります。感覚的・直感的というよりかは、操作を覚えなくてはならない負荷がかかる可能性もあります。

Minority Report未来のインターフェイスを語る上でよく出て来るのが映画『マイノリティ・リポート』。この映画に登場するマルチタッチ UI の技術は一般化されつつあるといっても過言ではありませんが、大きく腕を振りかざし、長時間立ち続けなければならないのであれば、すぐに疲れてしまいそうです。トム・クルーズ並みの強靭な身体でないと使えない・・・なんてことになると困りますね。

例えば Mac OSX とその上で動作する純正アプリケーションだけでも 幾つかのジェスチャーインタラクション が割り当てられています。すべてアップルが開発しているものの、ジェスチャーには若干のブレがあります。ほとんどのアプリケーションで3本指で左右にスワイプすると、ひとつ前のページに戻ったり先に進むことが出来ますが、アプリケーションによってはそれに加えて三本指で上下スパイプも同じようなアクションになる場合があります。

幾つかのアプリを使うと見えてきますが、マルチタッチで使われる指の数が増えるほどマクロな視点の操作が増えてくる印象があります。以下、簡単にまとめてみました。

1本指
選択や移動など主にオブジェクトの操作
2本指
回転やズームなど、オブジェクトの変形
3本指
ページ全体の移動やメニューの表示などアプリケーション全体に関わる操作
4本指
アプリケーション間の移動など OS レイヤーでの操作

指の数だけで分類するだけであれば簡単ですが、これにジェスチャーが加わると複雑になります。以下がマルチタップインターフェイスでよくあるジェスチャーの一覧になります。

  • シンブルタップ
  • ダブルタップ
  • トリプルタップ
  • スワイプ
  • ピンチ(つまむ)
  • スプレッド(広げる)
  • 回転
  • タップ & ホールド

これだけ見ると少ないですが、例えばスワイプでも1本指でするものから3本指で行うものまで様々。つまり、ジェスチャーに指の数を掛け合わせるとたくさんのパターンが生まれるわけです。先に指の数で何を操作するのかだいたい分かると書いたものの、すべてのアプリで一貫性があるわけでもありませんし、利用者が咄嗟に「これはオブジェクトを操作するから1本指」と考えるかも疑問です。

1年前になりますが、ヤコブ博士が iPad のユーザビリティテストの結果を発表しています。幾つかのアプリの操作を調査してみたところ、インタラクションに一貫性がないことが分かったそうです。例えば写真をタップするというジェスチャーひとつにしても、何も起こらないものから、ナビゲーションが表示されるものまで様々。アプリごとにジェスチャーを覚えなくてはならず、ジェスチャーが別のアクションを引き起す可能性があることから、混乱が招きやすいという結論を出しています。

調査から1年経ち、日本でも iPad 2 が発売された現在。幾つかの模索が繰り返されているので、以前よりかはインタラクションは洗練されているところがありますが、まだ課題は残されています。マルチタッチという技術が感覚的にしているのではない、逆に使い難くしているということを念頭に置き、以下の2点に注意しましょう。

GUI は必須
ジェスチャーで操作が出来るというオプションは残しておくものの、見ただけで何が出来るのか分かる GUI は必要。シングルタップで操作が出来るようにする
タップを忘れずに
ジェスチャーインタラクションこそマルチタッチの魅力ではありますが、シングルタップでも動作するようにしておきたいところ。例えば iPad / iPhone のホームスクリーンはスワイプで左右に移動出来ますが、スクリーンの角をタップするだけでも移動出来ます。ジェスチャーは正確性を求める場合がありますし、かえって疲れる場合もあるので、手をあまり動かさないで手軽に操作できるタップは欠かせません

SDKでサポートするか、それともデザインガイドラインで補助するかは分からないですが、マルチデバイスで共通のスタンダードを設ける必要性は出て来ているかもしれません。指の数と動きによって出来ることがある程度一貫性が生まれると、操作性がある程度向上する可能性があります。ただ、アプリの用途は様々なので標準化は難しそうですが、OS レベルのジェスチャーインタラクションにはある程度の一貫性があっても良いと思います。

今のところ Web ブラウザというアプリを通して、Web サイト / Web アプリケーションを操作しているので、Web の操作性には一貫性がありますが、JavaScript のライブラリを使うことによって Safari には実装されていないジェスチャーを Web サイトの操作に割り当てることが可能になりました。例えば jQuery のプラグイン TouchSwipe がそのひとつですし、jQuery Mobile には最初から幾つかジェスチャーが使えるような環境があります。インタラクションの選択肢が増えるのは良いことですが、実装の仕方には細心の注意が必要です。