紙プロトタイピングから始まる問題解決への議論
先週オープンしたばかりの名古屋のコワーキングスペース basecamp NAGOYA で、「プロトタイピングからはじめよう」という題名でセミナー+ミニワークショップを行いました。今年の春に開催した青森のセミナー以来、2度目のプロトタイピングセミナーになります。前回は、セミナーだけだったのに対し、今回は短めのワークショップ付き。また、プロトタイピング全般の話ではなく、ペーパープロトタイピングにフォーカスした内容にしました。
ペーパーが最強ではない
プロトタイピングだけではありませんが、何かを作る話題になると、どうしても「どのツールがベスト?」みたいな話になりがちです。すぐに作れるだけでなく、手を動かすというアナログな感覚が心地良いことから、ペーパープロトタイピングは人気の手法です。しかし、他の手法と同様、弱点がありますし、万能の手法ではありません。
ツールは自分の好みで一途に使うのではなく、幾つかのツールを適材適所で使い分けることで、効果を発揮します。ペーパープロトタイピングも得意分野があるので、それらを理解した上で活用すると、良い結果に繋がるはずです。パワーポイントや Visio といった特別なソフトウェアではないので、誰でも簡単に始めるのは大きなメリットです。
プロトタイピングと一言でいっても、使う目的が異なる場合があります。達成しなければならないゴールは、開発フェイズによって様々なので、その時々に応じてツールを選ぶという視点も忘れてはいけません。ペーパーという簡易ツールは、技術や視覚的な観点の検証には向いていませんが、アイデアを視覚化・検証するには素晴らしいツールのひとつです。
紙が好きだから使うのではなく、紙が適任だと感じるときに活用することで、思い通りのフィードバックを得ることができるでしょう。
より早く視覚化
今回、ミニワークショップを行い、その場で出た課題の提案をすぐに視覚化する練習をしました。いきなり描けと言われて描ける人は多くありませんが、プロセスを踏むことで描くためのキッカケを見つけることができます。特にモバイル利用を想定したアプリや Web サイトになると、今まで以上にフォーカスした利用シーンを UI に落とし込む必要性がでてきます。PC サイトではそれほど厳しく選定する必要がなかったプライオリティ付けや、取捨選択は、モバイルでは必須になります。
参加者それぞれがフォーカスした利用シーンを UI に落とし込んでいったわけですが、興味深いのが、言葉が同じでも UI ではまったく違うアプローチをとっている点です。これは例外なく参加者全員に言えました。「すぐに探せる、見れる」という言葉が絵になると、こうも表現が異なるのかとビックリするほどです。
視覚化することで、言葉だけでは伝わらないニュアンスや観点を読み取ることができます。今回はデザイナーからプログラマーまで様々な背景の方が参加されていましたが、それぞれが思い思いの形を提案していました。立場関係なく、フラットに自分の思いを形にすることができるのがペーパープロトタイピングの強みのひとつ。言葉だけでは気付かなかった課題や提案から、さらに話を深めて最善の解へ近づくことができるかもしれません。
ビジュアルデザインは重要ですが、早期に話し合わなければならないのは、問題解決としてのデザインです。ペーパープロトタイピングは早くフィードバックを得れるものの、すべての課題を模索するには物足りないツールです。しかし、ペーパーのような敷居の低いツールを使うことで、多くの方が参加しやすくなり、問題解決への議論に繋がることがあります。今回のセミナーで、ツールの使いどころが何処なのか、なんとなく伝わっていれば良いなと思っています。また、ワークショップを通して絵にしないと分からないことが多いというキヅキに繋がれば幸いです。