人の関係を考慮したレビューの見せ方提案

充実な機能で表現しやすくなっているレビュー投稿システムですが、レビューというより広告のような状態になってきており信頼できる情報か判別するには今の状態では不十分です。人のネットワークと組み合わせることで新しいレビューの見つけ方が生まれるかもしれません。

陳腐化しているレビューコンテンツ

製品を購入する際に、 製品情報だけでなくレビューに目を通す方は多いと思います。公式の製品情報だけでは分からない感覚や着眼点が書かれていることがあるレビューは製品購入の決定の際に多大な影響を及ぼします。Nielsen が 2009 年に出した調査結果によると 70%〜90% 以上の方が知人や購入者の意見を信用するといっています。これはブランドのWebサイト (70%) や雑誌などの記事に書かれているコラム (69%) より高い数値です。Facebook などをはじめとしたソーシャルネットワークやレビュー専門サイトで人々が製品やサービスについて話しているのは、彼等がレビューやレコメンデーションを求め合っているからなのでしょう。

私たちの行動に大きな影響を及ぼすことがあるレビューですが、現状レビューがうまく機能していません。買う前からレビューではない応援メッセージのようなものがコメントとして残されているくらいならまだ良いですが、レビューが広告のような存在になっているほうがより深刻な問題です。

ブロガーにレビューを書いてもらう代わりに製品を無料配布したり、点数の高いレビューを残すように頼んでいる方もいます。一種のプロモーションと呼べるのかもしれませんが、多くの人が頼りにしているレビューが既にレビューでなくなっているのではないでしょうか。もちろん、友人にレビューを書くことを頼むことが悪いことでもありません。ただ「友達だから・・・」ということで友情票のような内容になっていたとしたらどうなのでしょうか。良い点数を付けてもらったほうは嬉しいかもしれませんが、信頼出来るレビューかどうかは疑問です。

レビューの質の向上のために「役に立ちましたか?」ボタンなどを設置してユーザー同士で質管理をする仕組みが導入されているケースがあります。コンテンツの精査をこうした機械的な投票システムだけ保持は難しく、どうしてもモデレーター的存在が必要になります。また、レビューが本当に信用できるのかどうかを投票の点数を確認しながら読まなければならないというのは親切でもないですし、レビューを書くという行為そのものの阻害になりかねません。

信頼出来るレビューを見つけ出す

現状ほとんどの製品レビューページは、製品の作者(メーカー) と我々利用者という2者の関係、そしてそれを取り巻くようにレビューを書いている人たちが存在しています。製品を共通点として様々な人からのインプットがあるものの、それらは完全に独立した存在で関係は分かりません。しかし、もし私と作者それぞれを取り巻くネットワークを把握することが出来たらどうなるでしょうか。もしレビューの中に自分の知人が書いてあるものが見つけることが出来るのであれば、きっとまずそれを先に読みたいと思うでしょう。

断片的ではありますが、Social Graph は徐々に形成され初めていますし、Facebook や LinkedIn であれば実名で人と人との関係性を繋げ合わしています。こうしたデータを活用することで、利用者と作者のネットワークを基にしたレビューの絞り込みが不可能ではなくなるでしょう。絞り込むのであれば以下のネットワークが考えられます。

利用者のネットワーク
知人・友達が書いたレビュー
作者 (メーカー) のネットワーク
その人の知人はもちろん、社員のレビューという場合もあり
レビューワー
誰かに何かを勧めたいと感じている人たちのレビュー
読みたいネットワークに応じて自由にレビューを絞りこむことが出来ます。

ここで注目したいのが3番目の「レビューワー」というタイプ。ExactTarget の調査結果 によると Facebook で企業やブランドを「いいね!」しているユーザーの 40% は割引などのお得情報が欲しいからと言われています。つまり「いいね!」は純粋なファンとはまた別の意味が隠れている場合があるわけですが、それはレビューにも似たようなことがいえます。レビューを書く人のなかには、企業からの受ける特別なサービスやアフィリエイトが理由という方もいるわけです。しかし今回挙げている「レビューワー」はこうしたタイプとは少し違います。彼等は自分が自分の視点でレビューを書くことに意味があると考えており、自分が選んだこの製品の良さを知ってもらいたいという思いが先にきます。

読んだレビューワーがどのようなネットワークに属する人でどのようなレビューを書いたのかプロフィールページに行かなくても確認できます。

アマゾンがベストレビューワーというランキングを導入していますが、これと似たようなものが必要なのでしょう。指標は参考になった割合だけでなく、他の要素も取り入れたいところですね。読んだことがコンバージョンに繋がっていることを証明することが出来るかもしれませんし、その人を取り巻くネットワークも参考にすることでレビューワーの資質も高まるでしょう。

作者と読者の関係が意外と近い場合もありますし、当然のことながらプライバシーへの配慮をどうするかといった課題も残りますが、こうした絞り込みは誰か分からない人たちによる投票より的確に読みたいレビュー、読むべきレビューが見つかるのではないでしょうか。

レビューから始まるコミュニケーション

私も書籍を少し出したことがあるので経験したことがありますが、低い採点のレビューがあると多少凹みます。しかし、低い点数でも切実な思いと指摘が書かれている場合があり、そのときは短い言葉だけ書かれている満点レビューより嬉しかったりするわけです。建設的な意見がレビューとして残されていても、それに対して反応する場が自分の Web サイトとかしかないのは残念です。すべてのコメントに対して応えることが出来なくても、作者として応えることが出来る機会があると新しいコミュニケーションが生まれます。

現在アマゾンでは著者セントラルという作者本人であることをアピールすることができる場が導入されています。自分がその製品の著者であると証明出来るのであれば、つくった製品にかぎりレビューに反応できるような機能があると、製品が手元から離れた後の関係を利用者と共に考えることができそうです。現状サイトによって読者同士で返信し合う機能が導入されていますが、作者だけが返信出来るようにしても良いのかなと。モデレーターをたてるのが最良方法ですが、もしかすると本人が降臨するかもしれないという適度な緊張感は批評も含めた健全なレビューが生まれる可能性があるでしょう。

レビューが延々と流れて消えてしまうのではなく、レビューから会話が生まれて何か別のキッカケを生むのではと考えています。我々が必要なソーシャルリーディングとは読書中の情報共有ではなく、読書後からはじまる対話ではないでしょうか (以前紹介したアイデア)。読書後の対話をレビューというコンテンツによってさらに深みをもたすことが出来ると信じています。

あなたならレビューの仕組みをどう直す?

今回は私なりに考えられるレビューの別の見せ方についての提案でした。まだ現実的に難しいところがありますし、これでは解決にならないと考える方も当然いるでしょう。日本でも採用が進んでいる hReview が今後広く活用されることで、より包括的にレビューとそれを取り巻く人々の関係性を視覚化出来るようになるかもしれません。

レビューというコンテンツへのニーズは非常に高いですが、レビューの仕組みは壊れています。
どこが改善点でしょうか。今良いところをもっと良くするとしたらそれはどこでしょうか。これはこれでワークショップとかのネタになりそうですね。

※ スクリーンショットに載っているレビューは自身も執筆に参加した 変革期のウェブ ~5つのキーワードから読み解くウェブとビジネスのこれから~ から拝借しました

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。