CSS Nite Shift2 2008 の模様撮影: 飯田昌之

12月17日に CSS Nite 年末恒例イベント Shift3 が開催され、私はそこで「不景気から学べる今後のサイト制作のありかた」という題名で 10 分間のプレゼンをしました。不況に関しては昨年の Shift2 でも話したので、これで2年連続になります。去年は実感していた方が少なく、ピンと来なかった方もいたと思いますが、今年は直撃した方も多いかと思います。人材派遣会社や就職関連の方と話す機会がありますが、やはり今年に入って Web 関連の仕事が減ってきたと仰っていました(DTPはさらに前だったそうです)。年度末に向けてまた仕事が増えると予測されますが、厳しい状態はまだ続くでしょう。

不況で真っ先に行う対策の中に「予算削減」というのがありますが、実はこれは短期対策であってビジネスの成長を逃す可能性があります。Andrew Razeghi 氏が昨年発表した「Innovating Through Recession」という論文で以下のような数値を発表しています(プレゼンでもこのうちの1つを話しました)。

  • 1981〜1982年の不況下のなか広告にお金を使った企業はその後3年間売上を伸ばしている
  • 1985年の不況下のなかマーケティングや広告に力を入れた企業は売上を 256% 伸ばしている
  • 2001年での不況で積極的な広告をした企業はマーケットシェアを 2.5 倍伸ばしている

度々来る不況の中で、何かアクションをとることが今後の成長に繋がるということは歴史が語っています。しかし、興味深いことに、ただ過去のように広告に力を入れれば成長するという時代は終わっているようです。2002年で調査した 80% の企業は、今までと同様に広告に力を入れたものの、成長しなかったそうです。その理由は過去と同様に広告に力を入れたからと言われています。2002 年くらいといえば、欧米ではブログが爆発した年ですし、ブロードバンドもそこそこ普及しはじめて人々が Web へ流れている年といえます。こうした人々の新しい動きに合わせた戦略を行わず、今までと同じようにしていては効果がみられないということでしょう。

つまり、今の不況も単に広告・マーケティングに力を入れるという考えでは成長出来ないわけです。人々の考え方や時間とお金の使い方が変わって来ているので、それに合わせたアプローチを模索しなければいけません。そして、私たちが作る Web サイトも今の人たちに合わせた作り方や、彼等の目的を達成出来るものにしなければいけません。

私たちは Web サイトを制作しています。
それゆえ私たちは Web サイトやそれを作り上げるための技術やノウハウに注目してしまいがちで、それを使う人や取り巻く社会に目が行き難くなるときがあります。どのポジションで働いているとしても、人や社会について注目することは重要なことで、その変化に気付いて初めてよいサイトが作れる場合があると思います。たとえ、ブログテンプレートを作るだけとしても、今回のプレゼンで紹介した人々の価値観の変化を踏まえて考えてみると、今までと違ったテンプレートのアイデアが生まれるかもしれません。セッションは大企業の事例もあったので、スケールの大きな話に聞こえた方も少なくないと思いますが、実は誰にとっても関係のある話だと思います。

人の変化は始まったばかりですし、Web にしても同様のことがいえます。その変化は私たちの仕事にも今後影響してくるのではないかと考えています(仕事が減るという意味ではなく仕事の進め方という意味で)。変化は突然起こることはありませんが、気付いた頃には取り残されることはあるかもしれません。様々な場で情報収集やネットワークを広げつつ、変化の準備をしていってください。

スライドは無料でCreative Commons 表示-非営利-継承 2.1 日本というライセンスで公開されています。リンク付きの PDF なので関連サイトなどじっくり見たい方はぜひどうぞ。

shift3.pdf (PDF形式 9.79MB) Creative Commons License