答えを見つけるプロセスを楽しむエージェンシーモデルの提案

質問者の何気ない問いかけから徐々に答えを探し出すプロセスを楽しめるサービスは現状あまり見られません。Q&Aでもない、キュレーションでもない、プロセスを通して納得いく応えを見つけることができるサイトの構造を考えてみました。

情報過多だから人に頼る

先日 New York Times で「Are Travel Agents Back?」という記事が公開されました。旅行業界のマーケティング会社 PhoCusWright によると、2010年、2011年と 2年連続で旅行代理店/代理人が成長したそうです。欧米では Expedia や、Travelocity のような総合旅行サイトが 2000年前後から利用者の指示を得ていて、旅行をするなら代理店ではなく、サイトを訪れるのが一般的でした。しかし、PhoCusWright の調査や旅行代理人のインタビューから、最近はそうではないと New York Times の記事は指摘しています。

旅行サイトが抱える以下の課題が、代理人のニーズを高めたのではないかと考えられます。

選択肢が多過ぎる
幾つかのオプションを比較しながらチケットや宿泊の予約ができるものの、選択肢が多過ぎることから決めるのが困難
融通がきかない
細かい絞り込みで自分のニーズに合ったプランを見つける機能はあるが、人がもつニュアンスを聞き分けて最適なプランを見つけれるわけではない
レビューもあてにならない
どれが正しい情報なのかを見極めるひとつの方法としてレビューがあるものの、現状レビューの仕組みは壊れているので最適な手段とはいえない
検索力に委ねられる
欲しい情報は Web にあるかもしれないが、正しいキーワードを正しく入力しなければ辿り着かない。利用者の情報リテラシーによって結果が大きく異なる場合がある

New York Times の記事は旅行業界にフォーカスを当てているものの、抱えている課題は Web 全般にもいえます。ソーシャルメディアの普及により、情報量が膨大になっただけでなく、スピードもますます加速しています。キュレーションはひとつの応えではあるものの、課題の解決になりそうな最適なサービスは見当たりません。

人の要素がサービスに繋がる

膨大な情報が激流する Web で人に頼るサービスはいくつか出てきています。ひとつは Quora のような実名で登場する業界のプロフェッショナルが質問に応える Q&A サイト。もうひとつは Get Satisfaction のように、企業が利用者の質問や要望に応えるカスタマーサービスプラットフォーム。これらの 2つの要素を組み合わせることで、旅行代理人が Web にいるようなエージェンシーサービスが作れるのではないかと考えています。

エージェンシーモデルのコンセプトデザイン

顧客の質問に対して、誰でも応えれるのではなく、企業と契約を結んでいたり、お薦めしているエージェンシーしか応えることが出来ない仕組み。検索キーワードでは伝えにくい、顧客のニュアンスに対して、エージェンシーが自分なりの表現で情報を提供するためのサービスです。他の顧客のニーズをみることで、顧客とエージェンシー共に新たな発見を得ることができるのではないでしょうか。エージェンシーに直接応えてもらう「プライベートメッセージ」を加えることで、顧客とエージェンシーとの間の関係性を築くこともできます。

エージェンシーモデルのコンセプトデザイン2

質問した方は、エージェンシーとのやりとりを重ねることで、自分が欲しかった情報にたどり着きやすくなります。すぐに思いつかなくても、会話と通して見つかるコトもありますし、それがエージェンシーの魅力です。誰でも回答に参加できるほうが Web らしいやり方ではありますが、限定したプロフェッショナル(ここで言うエージェンシー)との対話ができることで得ることができる価値もあります。

このように、質問者の何気ない問いかけから徐々に答えを探し出すプロセスを楽しめるサービスは現状あまり見られません。誰もが安心できる答えを手軽に手に入れたいと思っているかもしれませんが、プロセスを通してでないと納得いく応えを見つけられない場合があります。そして、そのプロセスが重要であるからこそ、旅行業界ではエージェンシーのニーズが高まっているのかもしれません。

埋もれてしまいやすい Web に対して、私たちがどのように応えるのか、解決していくのか、今後のサービスに期待です。

追記

今回のポイントは、答えを探すプロセスだけでなく、クロージングまで誘導できる点にあります。

エージェンシーモデルのコンセプトデザイン2

例えば上図のように、購入・予約といったアクションに誘導するためのコンテンツを追加できるようにするとどうでしょう。Q&A では、答えを得ることが出来ても結局また自分で検索しなければならない場合がありますが、こうした形であれば、すぐに欲しいモノを手に入れることができます。

もちろん、こうしたコンテンツをパッケージングして追加出来るようにするには、データの構造化やマークアップを Microformat / Schema 化する必要がでてくるかもしれません。技術的なハードルも幾つか考えられますが、従来の Q&A にはないようなコミュニケーションのやりとりからクロージングまでの流れを築くことが出来れば良いなと思っています。

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。