モバイル向けに設計する場合、場所は重要なキーワードです。「今、渋谷駅にいる」といった具体的な場所だけでなく、モバイルでは 3つの場所レイヤーを考慮しなければいけません。しかし、モバイルコンテキストを理解する上で、場所の理解だけでは不十分です。

モバイル機器におけるインタラクションはとてもパーソナルです。特定の場に居ざる追えない従来のデバイスに比べると、自由に動き回れて自分だけの時間をつくりやすいモバイル機器。スクリーンサイズも利用者とモバイル機器の1対1の関係をつくるのに丁度良い大きさです。パーソナルな関係が築き上げられているからこそ、1対1の関係で楽しめるゲームやエンターテイメントがモバイルでは人気ですし、家族・友人との対話に役立っています。

パーソナルな関係を築くのになくてはならないモバイル機器。利用者が触れるモノ(機器)にも、場所と同様3つのレイヤーが存在します。

デバイスレイヤー
モバイル機器はさらに細分化することが出来ます。ハードウェア、OS、アプリ、バッテリーの寿命などがあります。スマートフォンだからといって同じ人間像であることは限りません。人がどのようにデバイスと向き合っているのかはデバイスの仕様によって微妙に変わってくる場合があります
回線レイヤー
デスクトップ・ノートパソコンに比べて回線が安定しないのがモバイル利用の現在。スピード、安定性はもちろんのこと、繋げるための設定や再接続までの時間まで、回線をキーワードにするだけでもモバイル利用に関わる事柄は幾つかあります。回線が弱いところは何処か?そのときに利用者はどのような行動に移るのか?彼等の集中力は変化するのか?
通信キャリアレイヤー
同じように見えてやっぱり違うキャリアのサービス。回線にも関わることではありますが、料金体系やサポート体勢によって使い方が変わることがあります。各キャリアがスマートフォンをどのように売っているでしょうか?独自の企画やサービスを提供しているのでしょうか?長期的なビジョンをもったコミットがされるのでしょうか?こうした質問は利用者の動向に影響するだけでなく開発者側にとっても気になる話題です

デバイスレイヤー、回線レイヤー、通信キャリアレイヤー

数年後には上記に紹介した3つのレイヤーの質は目まぐるしく向上するでしょう。特にデバイスの変化は注目です。現状、マルチタッチスクリーンを活用したジェスチャーインタラクションが中心ですが、今後デバイスそのものを使ったジェスチャーを活用したアプリも増えてくるでしょう。2009年から Nokia はデバイスを使ったジェスチャーの研究をしていますが、今の Nokia デバイスに活かされているのもあります。

ジェスチャーだけでなく、振動、温度、傾き、スクリーンの明るさなど、デバイスの状態を探知することで具体的なインプットではなくても、利用者の動機やコミュニケーションの内容を見つけることが可能になるでしょう。そのときに私たちはインタラクションを提供すると好ましいのでしょうか。目に見えるインタフェースなのでしょうか、それともデバイスの技術を使った感覚的な反応なのでしょうか。

過去を横目でみながら新しい技術を取り入れる

今後モバイル機器は進化をし続け、可能になるインタラクションも今まで以上に増えることでしょう。先進的な技術や概念を積極的に取り入れたいところですが、従来からある古い考え方とどのように付き合って行くのかが課題です。

古い電話機のアイコン今でもよく見かける電話のアイコンですが、これと同じような見た目の電話を使っている人が今は何人いるのでしょうか?使ったこともなければ見たこともない人もいますが、今のところ電話アイコンとして意味が通じているようです。しかし、それがいつまで続くのでしょうか?代わりになる表記は何が最適なのでしょうか?そもそも表記することが必要になるのでしょうか?

「電話をかける(掛ける)」という言葉も今のデバイスでは想像しにくいですね。今の利用者にとって人との音声通話は通信に近いですし、ダイヤルを回すのではなく、ボタンを押しているだけです。アドレス帳からワンタッチという場合もあれば、QRコードやリンクから電話ということもあるので、番号を押すということもほとんどしない場合があります。

これらはわずか10〜20年で大きく変わった概念です。それでも古い電話のアイコンや、電話をかけるという表現が使われるのは、長年電話を使っていた人にも理解しやすい言葉や記号で新しい技術を利用してもらうためのコミュニケーション手法です。自分が使おうとしている技術が、従来の技術だと何に置き換えられるのか?どのように人は理解して使っていたのかということに注目することでデバイスに適したデザインをすることが可能になるでしょう。