デザインをスケールしていくための役割分担

作るのが好きだから作ることにいろいろ関わりたいという気持ちが、ボトルネックになってしまう場合があります。今のデザイナーはとても複雑なプロダクト開発に関わっているからこそ、専門性をもったデザイナーが集まるチームが必要になってきています。

数だけのデザインチームは『弱い』

インハウスデザイナーの数が少ない組織だとあらゆるコトができる方がいたほうが早く動けます。プロダクトはもちろんプロモーションやマーケティング用の成果物も作りますし、ディレクションに近いことをする場合もあります。小さなチームだとワークフローもシンプルですし、周りが何をしているかも Chatwork や Slack を眺めていればだいたい把握できるので身軽に早く動けることが重要になります。

しかし、組織が大きくなるとあらゆることが同時進行します。そこでデザインのスケール化が必要になるわけですが、小さかった頃と同じように「作る」に関わるあらゆる作業ができる人を求めている組織も少なくありません。

野球、サッカーのようなチームスポーツは良い例だと思いますが、それぞれが明確な役割をもってプレイをしています。デザインも同じようにポジションを明確にしてチームを作り上げていくべきですが、全員が全ポジションをやっているようなところもあります。ただ頭数を増やしているだけだと、周りが求めているスピードに追いつけません。

こうした『何でも屋状態』は若い頃は良いかもしれませんが、専門性をもちたい人もいるはずです。それでも何でもやらなければならないという職場にいると UX が付く肩書きがもつ不安を生み出します。

インハウスで何でもやるデザイナーの次のパスはどこにあるのでしょうか。最近だと「デザインマネージャー」「デザインリーダー」又は「CDO」といったポジションがあるものの、上の立場で働くしかないのも物足りない気がします。UX Collective が今年の初めの発表した The State of UX in 2019 でも「Everyone is a lead(皆がリーダー状態)」は問題であると指摘しています。

雇用する側はデザインチームをどうスケールすれば良いか分からないから「要件定義もデザインもコードも全部よろしく」みたいな募集しか出せないでしょうし、求職している側も何でもやるか、マネージャー職という選択肢しかないのは魅力を感じないかもしれません。何でもやるデザイナーを揃えるという組織体制を変えていかないと、リサーチやデザインシステムなども「やる気がある人が、時間があるときに頑張る」という状態になってなかなか前進しません。

本当に大事なコトは何か

書籍「一人から始めるユーザーエクスペリエンス 」でも、ひとりでも始められるやり方だけを紹介しているのではなく、5 年後どういうチームを作りたいか描くべきと説いています。『ひとりから始める』だけであり、『ひとりでずっと頑張る』ではないわけです。

どういうタイプのデザイナーを増やすかは組織によって違いますが、サービスが関わる市場に寄り添ったものになるでしょう。例えば Uber は 2018 年の時点で 300 人のデザイナーが働いていて、調査はもちろん、地図制作、データデザイン、VUI、モーショングラフィックなど専門分野でデザインを取り組んでいる人がいるそうです(参照)。

作るのが好きだから作ることにいろいろ関わりたいという気持ちは理解できますが、それによってデザイナーがボトルネックになってしまう場合があります。インハウスでないと絶対できないコトを見極めた上で、外注を視野に入れながら大事な所から徐々にチームを大きくしていったほうが良いです。

インハウスでもつべきデザインワークをプロットする

例えば上図のようなモデルを用いて、今デザインチームで抱えているタスクやプロジェクトをプロットしてみるのも手段です。

  • 重要度:ビジネスとして重要と捉えているもの。組織内で密なコミュニケーションが必要なもの
  • 緊急度:プロジェクト発足からリリースまでの長さだったり、締め切り期間が短かかったり手離れの良いもの

重要度は高いが緊急性があまりなく、じっくり作り上げる必要があるものがインハウスデザイナーが手放すべきではないところ。そこで必要なプロフェッショナルを探すのであれば、募集項目も絞りやすくなりますし、新しいデザイン系のポジションも築きやすくなります。

まとめ

時々「デザイナーが見つからない」という言葉を耳にしますが、作るに関わることをすべてやって欲しいというぼんやりとしたニーズだから見つからないのかもしれません。UX デザイナーが欲しい人も、書籍に記載されているコトはすべて実践できる人を望んでいるように見えることがあります。すべて実践できるデザイナーはいますが、そういう方ばかり探してもチームとして大きくなるとは限りません。

それぞれが興味がある分野に集中し腕を磨けるような環境を作り上げるには、インハウスチームがすべてを抱え込むのは止めて、チームとしての専門性を高めるのも手段だと考えています。今のデザイナーはとても複雑なプロダクト開発に関わっているからこそ、専門性をもったデザイナーが集まるチームが必要になってきています。

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。