教育

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デザイン

それでも私はデザイナー

今の働き方をするキッカケ 最近、私は業務で Sketch をはじめとしたデザインツールを開く機会が減ってきています。意図的に名を伏せるようにしていますし、実際はチームで作っているわけですから「私がこれを作りました」と言えるものもありません。それもあって周りからは何をしているか分からないと怪しまれるわけですが、それでも「私はデザイナー」と言っています。 何かを作って世に送り出すことがデザイナーと定義するのであれば、私はそう呼ぶ資格がないかもしれません。今は人の課題、部署間の課題、作り方の課題、進め方の課題、改善の課題、運用の課題といった外からでは見えにくいところを取り組んでいます。 上記の課題に興味をもったのも、出来上がった成果物への不満や失敗をした経験があるからですが、「誰のためのデザイン?」の著者であるドン・ノーマン博士が 10 年前に書いた「Why Design Education Must Change」はインスピレーションになりました。 記事は教育について書かれているものですが、私たちデザイナーの働き方の問題の根底にも繋がるものと解釈しました。 複雑化する課題解決 Many designers are woefully ignorant of the

ワークショップ

ワークショップをするときに自己紹介の時間を多く費やす理由

私はワークショップの序盤に参加者全員に自己紹介をしてもらっています。自己紹介では役職名だけでなく、「仕事で興味があること、悩んでいること」を話してもらうようにしていて、上のメモは自己紹介タイムに残したものです。30 人前後参加するイベントなので結構時間をとってしまいますが、それでも実施するようにしています。 自己紹介はアイスブレイクになるのはもちろんですが、私も含めた参加者全員で文脈を共有するためにしています。「デザイナー」「Webデザイナー」「UXデザイナー」「UI デザイナー」「Web ディレクター」など役職名がたくさんあるこの業界。たとえ同じ名前でもまったく同じようなことをしている人はいません。責任範囲も違えば、現場で求められている成果物も様々です。 自己紹介を通して「なるほど、そういう働き方もあるんだ」という気づきもあると思いますし、「似たような悩みある」という共感が生まれることもあります。何よりも自分と違う価値観と環境で、様々なデザインの挑戦をしている人がいるんだという見えにくい背景を知る機会になると思っています。 登壇者⇄参加者のコミュニケーションがあるといっても一方的ですし、懇親会に出ないと参加者⇄参加者の関係も生まれにくいのは残念だと感じています。自己紹介というそれぞれの視点・考えを打ち明ける時間は、そのあとに続くワークショップにも響きますし、「他の環境だとこういう課題があるかもしれない」「だから〇〇さんはこう考えてるのかも」と想像を膨らませるキッカケになるかもしれません。 以下がよくある声の傾向です。 ステークホルダーとのコミュニケーション アニメーション、

デザイン

ビジュアルでもできるデザイン批評

好き != 良い・正しい デザイン批評は、数年前から扱っているトピックし、講演経験も何度かしています。デザイン学校へ行った方であれば批評の経験はしていると思いますが、なかなか機会がないのが現実。ビジネスとの関わりが密接になればなるほど、デザインについてデザイナー以外と話す機会が増えていきます。様々なデザインの手法を学んだとしても、デザインについて会話するスキルがなければ意図・目的を伝えることができません。 調査に基づいて論理的に対話ができれば理想的ですが、そう簡単にいかないのが批評の難しいところ。私たちは論理的に考えようとしますが、感情的に物事を捉える生き物です。どうしても「好き」「つまらない」といったリアクションを即座にしてしまいがちですが、「好き = 良い・正しい」とは言い切れません。つまり、自分の好みではないものでも、プロジェクトの目的を達成には正しい判断といえる場合があります。 これはビジュアルデザインの批評をする際、特に重要になります。ビジュアルは好き嫌いといったリアクションになりやすいですし、調査をして答えを導き出すのが難しいです。デザイン批評も設計や画面遷移まではうまくいったとしても、ビジュアルでつまずくことがあります。 ビジュアルは、テイストやセンスで話が終わってしまうことは少なくありません。確かにそういった部分はありますが、批評はデザインの改善のためだけにあるのでなく、教育のためにもあります。デザインの見方を周りに伝えていくためにも「これダメだから直して」「センスが悪い」以上の会話が必要です。コラボレーションをするはずのデザインの会話が、

プロセス

講師をして感じたプロトタイプの可能性

昨年暮れから今年のはじめにかけて デジタルハリウッド大学院 秋葉原校にて「未来のインターフェイス」講座の講師をしていました。全 8 回のこのコースは、予測不可能な社会でデザインをしていく上で、少しでも早くアイデアを形にして伝えるためのノウハウと実践に近い演習を行いました。未来的(SF的)なインターフェイスを考えるというよりかは、今あるデザインの課題へのアイデアをプロトタイプし、未来へ繋げていくためのプロセスを学ぶ講座になりました。 昨年の 5 月から、青森、名古屋、金沢でプロトタイプに関するセミナーやワークショップを行いましたが、デジハリ大学院での講座のための実験でもありました。そこでの経験でうまくいったこと、上手くいかなかったことを参考にしてカリキュラムを構築。1 回 1時間半の講座が 8 回あるコースは長いなと最初は思っていましたが、盛りだくさんの内容になりました。 Web サイト構築の仕事をしたことがある生徒、3Dグラフィックをつくる生徒、又は企画・プロデュースをする生徒など知識や背景は様々。あまり技術的な側面からプロトタイプの実践ができないというデメリットはあるものの、様々な知識と経験をもつ人たちが集まってアイデアを出し合うには都合の良い環境でした。そこでペーパープロトタイプを軸に、アウトプットまでの道筋と批評を通してアウトプットを続けるためのプロセスを体感してもらうことにしました。 コースのおおまかな内容は以下のとおり: 体験のマッピング プロトタイプの定義と使い方 ツールの選び方 体験のマッピング

教育

情報だけでは価値がない時代の学びの姿

「時代の流れが速すぎて学ぶのが辛い」 「いろいろありすぎて覚えるのが大変」 このような言葉を聞いたことがあります。確かに学ぶことが多いですが、知識との向き合い方で学習の仕方が大きく変わります。学習への向き合い方の変化が、気持ちを和らげてくれることもあります。 昔は情報をもっていることが知識であり、情報を得る方法が学習と捉えられていた時期もありました。故にセミナーに参加したり、書籍を買っても自分が知らない情報があるかどうか、たくさんの情報が書かれているかどうかが評価の基準になり、情報を得たから「学べた」という満足に繋がったのかもしれません。昔の学校の授業は情報が中心なっていたのも、何か関係しているかもしれません。 終着点があった従来の学習 従来の情報の取得方法。わずかなソースから情報を受け取ることが知識になった。 知識を得る方法が書籍、新聞などといった媒体の場合、そこに書かれている情報が知識であり、学びの『終着点』でした。 その理由は媒体の制約が関係しています。 新聞や書籍の情報は紙面という制約があることから、「もっと知りたい」「この言葉がわからない」「関連した動向は何」といったニーズに応えることができません。さらに広げて情報を得るということが難しいからこそ、紙面に書かれている情報が知識のソースであり学びの終着点でした。こうした状況下での学習は、平面的になりがちで情報を得ることが知識に直結すると解釈してしまいがちです。 たくさんの情報に触れるのはコスト高なので、ひとつ又はふたつの情報ソースに留まる 多様性も拡張性も見えてこないので、書かれている情報が事実と解釈しがちになる 情報配信のスピードが早くないので、普遍的な情報として捉えてしまう ネットワークによる改善プロセス ネットワーク社会ではリンクで繋がった膨大な情報を取得することができるようになった。

デザイン

メタデザイナーを育成するデザイン教育

今月末から デジタルハリウッド大学院 でプロトタイピングをテーマにしたコースを受け持つことになりました。1時間くらいの短い講義で話をしたり、ワークショップの経験はありますが、数週間にわたって生徒と交流しながら進めていく授業をするのは始めてになります。少々不安ではありますが、今までの経験を活かして教育の分野に貢献できればと思います。 今、デザインの教育に関わることは非常に意味のあることだと考えています。 先月開催された UX Kanazawa で、成安造形大学でデザインを教えていらっしゃる大草真弓さんが参加されていました。大草さんとの懇親会での会話やメール交換は、私の中で大変刺激になりました。デザインといっても製造・制作の要素が強かった従来の捉え方から、全体を見渡した上での設計という考え方にシフトしはじめており、多くの大学や専門学校で変化が見られ始めています。Web デザインは『製造・制作』の要素が未だに強調されていますが、UX のような言葉が流行したことや、急速なマルチデバイス環境への変化が影響して、業界でも変化は見られはじめています。 教育だけでなく、業界も変わりはじめている。 こういう時期だからこそ、大きな流れになる可能性があると感じています。 情報社会で変わったこと グラフィックデザイン協会国際会議が発表したデザイン教育マニフェスト。2000年に発表され、2011年に改訂版を発表しています。概要ページから PDF をダウンロードできます。 私たちは、よくテクノロジーが変化したから仕事の仕方を変えなければならない、教育も変わらなければならないと考えがちです。

デザイン

デザイナー育成のための3つのキーワード

Don NormanEngineering Design EducationEngineers are trained in narrow specialties but do not get the broad systems thinking or the appreciation of human-centered design necessary for engineering design in the 21st century. 2008年なので、少し古い Don Norman 氏のインタビューですが、共感するところが多々あったので紹介。近年のエンジニアや徹底的に狭い分野で技術力を磨いていくものの、広い視野をもって思考できる者が少ないと指摘しています。彼の「エンジニア」という言葉は「デザイナー」と置き換えて考えることができます。

インターネット

Webから始まる教育パラダイムシフト

Sir Ken Robinson Changing Paradigms Creativity expert Sir Ken Robinson will ask how do we make change happen in education and how do we make it last? 教育システムと教育に対する考え方に鋭い疑問を投げかけるサー・ケン・ロビンソンの講演。同講演のイラスト版はこちらから。 MIT が講義を無料で公開する OpenCourseWare (OCW) をはじめて 10年になります。今では欧米だけでなく国内でも 数多くの大学 が、オープンコースウェアの動きに参加しています。iTunes で iTunes

デザイン

これからのWebデザイン教育【2】

前回の「これからのWebdデザイン教育」の記事は、Facebook グループをはじめ様々な場で意見が飛び交いました。あのような記事を書いた理由は、不満をぶちまけているのではなく、書くことによってちょっとだけ考えてみる機会を皆に持って欲しかったわけです。今回は様々な意見が出てきたことを踏まえて、私のほうで感じたことを幾つかまとめていきます。 教育機関だけの問題ではない 教育の話になると、まず学校の改革・カリキュラムの見直しという教育機関へ向けた問題解決に集約してしまう傾向があります。しかし、実際のところ教育機関が今のようにスキル中心の教え方をしている理由は、そこに需要があるからという現実もあると思います。企業の募集ページをみると「○○が出来る方」というスキルセットがリストアップされているわけですし、即戦力とはそういったスキルがある方を指す場合がほとんどです。勉強会・セミナー・ブログを覗いてみても、主なトピックがスキルの話であれば、プロを目指す学生の視点でみればスキルをまず手に入れようと思っても当然でしょう。 つまり、教育機関がスキルを教えることに多くの時間を割く理由は、企業・業界が求めている人材がスキルがある人であるという雰囲気を作り出しているからではないでしょうか。前回の記事でも話しましたが、スキルは後回しにすることでもなければ、無視しても良いものでもありません。ちょっとした違いが高いスキルによって生まれることも当然あるわけです。 制作を続けていると、スキル以外の部分も Web サイト制作で重要であるということに気付きますし、今後、人・社会に目を向けることを前提とする設計が欠かせない状況になるはずです。働いている我々がそれに気付いているからこそ、学生や今でも勉強をし続けている同僚にその重要性を訴えていかなければいけません。スキルだけが人材ではないという雰囲気を業界全体で作り出すことで教育の方針も変えることが出来ると思います。

Webデザイン

これからのWebデザイン教育

Web Design Education? Webデザインにフォーカスした教育は、時々頭に浮かぶ話題のひとつ。日本全国に Web デザインに特化した学科をもつ専門学校は幾つかありますし、学ぶための書籍もたくさんあります。ただ多くの場合、スキルセットを習得することが中心というイメージがあります。ソフトウェアの使い方、レイアウト・タイポグラフィ・ドローイングの基礎などを扱うことが Web デザインの基礎教育で軸になっています。デザイン全般にしても、基本的に仕事で即時必要となるスキルセットを身につけることが先行しています。 デザイナーを「Craftman (職人・工芸家)」として捉えるのであれば、それで良いのかもしれません。腕を磨くための情報を収集し、練習・実践を繰り替えしていれば、職人としての価値がより上がるでしょう。そして、スキルを得るための最初のステップとして、ノウハウを教えるという教育は適しているのかもしれません。 しかし、私は Web デザイナーは職人ではないと考えています。 スキルセットを学ぶことが重要ではないと言っているのではなく、そのスキルをつかって形作る理由、そして形作ったものをどう使われるのかを探る部分が抜けていると考えています。この部分は職人が腕を磨くだけでは学ぶことは出来ません。テクノロジー、人、そして社会についての理解が必要になりますし、それらを理解することではじめてスキルも活かされるのではないでしょうか。

仕事

テラハウス訪問で考えた教育のこと仕事のこと

先日、東中野にあるテラハウス ICAキャリア開発研究所の見学に行きました。テラハウスは再就職訓練を実施している施設。東京都産業労働局には職業能力開発センターや職業能力開発校といった組織がありますが、テラハウスは民間委託訓練施設に属します。教務部長の金澤さま、キョウリツネットの新井さまと牧原さまにお時間をいただいて、職務訓練の現場について、そして教育する側からみた Web の仕事についてお話を伺いました。 再就職訓練という一度社会に出ている方を対象にして短期間で Web の仕事ができるためのスキルを教える場。3ヶ月の授業と1ヶ月、Webサイト制作会社にてインターンとして働くことが出来るカリキュラムになっています。週に5日の授業はトータルで360時間ありますが、その間に「使う拡張子はなに?」から具体的なワークフローの実践まで幅広く学ぶわけですからかなりハードです。しかも Photoshop, Illustrator, Dreamweaver, Fireworks, Flash とソフトウェアの使い方も一通り学ぶわけですから私だったら頭が混乱しそうです。ここでしっかり知識を吸収した生徒さんの中には大企業に就職された方もいらっしゃるそうです。 現在、不景気ということもあり入校希望者も去年に比べかなり増えているそうで、特に Web 関連のコースを希望される方が多いそうです。入校志願者の倍率は8倍なので大学に入るより難しいほど増えているとか。人気の要因は分かりませんが、Web の仕事があるのか気になるところ。以前ある人材派遣会社の方の話を伺ったところ、Webの仕事も今年に入って下がってきていると言います(グラフィック系はもっと前からだそうです)。再就職訓練はひとつの教育のフィールドで特殊なところがありますし、独自の課題を抱えていると思います。しかし、