Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。

デザイン

重要視されるためのデザイナーの条件

内輪受けは止めにしようではないか LSD LAB で公開されている UIデザイナー不要説 [http://lambda-structure-design.jp/lab/is-ui-designer-really-needed/] は、テクノロジーと付き合うデザイナーであれば一読しておきたい記事のひとつです。私が記事を読んで感じた課題は、 UI デザインが重要視されているかどうかということではなく、果たしてデザイナーは デザインを営業できているか [http://www.yasuhisa.com/could/article/design-talk-feedback/]どうかというところです。 たとえビジネスゴールが共有されていたとしても、デザイナーが考える UI デザインの価値と、それ以外の方が考える UI デザインの価値が異なることがあります。特にデザイナーが考える価値は、内輪受けになりやすいことが多々あるように思えます。デザイナーが「すごく良いよね」「イケてるね」というものは、ほとんどの場合デザイナー以外には理解されません。内輪で分かりやすい言葉や感覚で語りかけても、聞き手は「

コンテンツ

デバイスに囚われないスマートなコンテンツが必要な理由

[http://www.yasuhisa.com/could/content/images/wordpress/2014/11/smart_content.png] たとえ小さな市場を狙ったとしても競争が激しく、せっかく作ったコンテンツはすぐに埋もれてしまいます。また、増え続ける膨大なコンテンツを受け取れる容量をはるかに超えてしまったため、情報の受け皿を小さくしている方もいます。コンテンツ供給は膨れ上がる一方、利用者からの需要が頭打ちしている現在。良いコンテンツを作れば読まれるというわけではないからこそ、前回紹介したような 配信の仕方を工夫する [http://www.yasuhisa.com/could/article/huge-content-little-time/] 必要があります。 しかし、配信を工夫することだけがすべてではありません。コンテンツの設計や作り方を改善することで、狭くなりつつある利用者の窓口へコンテンツを届けることが可能になります。 今だけを見ないコンテンツ制作 昨年のコンテンツワークショップ [http://www.yasuhisa.com/coul

コンテンツ

肥大化するコンテンツ市場で生き残るための対処法

コンテンツ配信はパンク状態 「良いコンテンツ [http://www.yasuhisa.com/could/?s=%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%84&x=0&y=0] を配信していきましょう。」 「利用者が必要なのはコンテンツです」 正論ではありますが、難しい課題ですし、ひとつの限界が見えてきています。 良いコンテンツを作ることは言うほど簡単なことではありませんし、配信し続けるとなると至難の業です。質の高いコンテンツを作り続けることができたとしても、それが多くの方へ届くとは限りません。コンテンツを配信していくことが重要視されているものの、日々数万、数億の情報が人々のデバイスに向けて配信されている時代です。 随分昔はブロガー全員をリンク集に並べることができました。そのときはちょっとしたコンテンツでも多くの方に見られましたが、今はそうはいきません。 多くの情報の中から自分たちのコンテンツを見てもらうには、配信戦略を練るのはもちろんですが、コンテンツの質をさらに上げていかなければならなくなります。情報の流れも速いわけですから

ペルソナ

キーワードから導き出す人間像と設計のヒント

SEOも人間中心 Google のパンダアップデート [http://googlewebmastercentral.blogspot.jp/2011/05/more-guidance-on-building-high-quality.html] では「コンテンツの質」が順位に大きな影響を与えます。2011年のリリース以来、コンテンツの質を順位に反映させるための改善が続けられています。SEO を考える上で今でも正しいマークアップや文書の構造化は重要ですが、今まで以上に機械ではなく、人のためにコンテンツをつくるという視点が欠かせなくなります。 つまり、人気がでるコンテンツを作れば良いというわけではなくなることを意味します。当然、一時的にランクを上げることができますし、SEO としても良いことのように見えます。しかし、その人気のあるコンテンツが、自社の製品やサービスとは関係のないものだったとしたらどうでしょうか。パンダアップデートでは、コンテンツの質を「信頼できるかどうか」で判断しています。一時的な人気は、中・長期を見据えた信頼には繋がるとは限りません。これは Google だろうが、

UI

正しくKeynoteでプロトタイプを作るコツ

09より最新版を ChatWorkの社内勉強会 [http://c-note.chatwork.com/post/93858598435/keynote]で、Keynote [https://www.apple.com/jp/mac/keynote/] をプロトタイプ制作に使う方法を共有したことがあります。コード不要な点と、共有が比較的しやすいのでオススメしています。しかし、他のプロトタイプツールと同様、得意・不得意をしっかり理解していないと時間がかかるだけで無意味な作業になることがあります。 古くから Keynote を使っている方は Keynote 09 を好む方がいます。最新版に比べて UI が分かりやすく分類されていたり、AppleScript のサポートが充実していることから、今でも使っている方がいると思います(私も講演時は 09 を使うことがあります)。ただ、プロトタイプを作る際は必ず最新版を使うようにしています。最新版のほうが優れているのは以下の4点です。 0.01秒単位で微調整が可能 Keynote 09 では、スライドショーを再生しなければアニメーションを見

デザイン

「分からない」から始まるデザインプロセス

分からなくて当たり前 デザインの意味がますます広がる今日。ビジネスや街作りに至るまで「デザイン」という言葉が使われているものの、実際に形作るには深い専門知識が必要とされます。 Web サイト制作も、ビジネスモデルやユーザー調査など様々な分野を理解しなければいけないですが、それだけでは完成しません。フロントエンドやサーバーサイドだけでなく、特定のアプリケーションの使い方を熟知することで、「Webサイト」が形作られるわけです。つまり、視野を拡大・縮小を繰り返すことが、デザインの学習、キャリアにおいて欠かすことができないわけです。 こうして書くのは簡単なことですが、実際に視野を拡大・縮小を繰り返して学習・実践するのは難しいです。時間は有限ですし、ゴールをイメージして情報収集 [http://www.yasuhisa.com/could/article/what-you-need-to-know/] したとしても、知ることができことは限られています。デザインの意味が広がり続けると同時に、デザイナーに求められる知識やスキルが深くなってきています。しかし、すべてを知らなければいけないわけで

サービス

Adaptive Path 買収から思う銀行のこと、デザインのこと

米国の金融大手キャピタル・ワンが UX コンサル会社である Adaptive Path を買収 [http://www.adaptivepath.com/ideas/adaptive-path-where-were-going-next/] しました。その2ヶ月前にはモジュール式スマートフォン「Ara [http://www.projectara.com/]」を手がけた Daniel Makoski 氏が同銀行へ移籍しています [http://www.fastcodesign.com/3032630/why-one-of-googles-wildest-designers-left-for-a-bank] 。金融機関という巨大な組織でいかにデザイン思考が広がり、形になるのか今から楽しみです。ひとつの案件としてではなく、組織の一員として内側から変えていくという Adaptive Path のアプローチは、最近の私の仕事の仕方と重なるところがあります。 デジタル化は進んでいるものの、改善余地が数多く残されている大手金融機関。一般企業とは比べものにならないほど、安全性、プライバシー、危機管

デザイン

疲れない情報収集と何を知るべきかを知るためのヒント

何を知るべきなのか分からない 昨年「情報だけでは価値がない時代の学びの姿 [http://www.yasuhisa.com/could/article/learning-in-network/] 」という記事で、流れの速い今の時代における学習との向き合い方について執筆しました。当時、変化し続けるプロセスに自ら身を投じることで学習しやすくなるのではと提案しました。 まずはアウトプットする、そして失敗を恐れず模索できる場を築くことで、体験しながら学習することができます。私の場合、このサイトやポッドキャスト [http://automagic.fm/] は良い実験場になっていますし、仕事にも役立っています。情報をインプットするためのコストが限りなくゼロになった現在。アウトプット(消化 )をすることで情報を知識/スキルに変えていかなければ身にならないどころか、膨大なインプット(情報)によって圧殺されてしまう恐れがあります。 インプットとアウトプットのバランスを保つのが難しい現在。鳥のように食い、象のように糞をしよう [http://www.yasuhisa.com/could/arti

コンテンツ

コンテンツ管理で解決しなければならない課題

コンテンツ管理というと、真っ先に CMS (コンテンツ管理システム)を連想する方はいると思います。どのシステムを導入するか [http://www.yasuhisa.com/could/article/before-implimenting-cms/]を考える前に、そもそも Web におけるコンテンツ管理とは何かを理解しておく必要があります。理解を深めることで、クライアントが抱えている課題と解決のための模索がしやすくなります。 コンテンツを管理するということは、システムの中にデータを保管し、様々な形式に書き出すことだけに留まりせん。多くの場合、システム導入だけでは解決しない課題にぶつかります。CMS を導入しただけでは、Web コンテンツ配信における課題の一部を解決したに過ぎません。 コンテンツ管理で解決しなければならないことは、主に以下の7点です。 コンテンツの保管テキストだけでなく画像や PDF など様々な種類のコンテンツを保管できるような仕組み。検索性が求められるだけでなく、誰がどのコンテンツにアクセスできるのか、権限を割り振ることができる機能が求められます。 一貫性を

コンテンツ

コンテンツ評価をする前にしておきたい質問

質問で変わる調査の仕方 Web解析 [http://www.yasuhisa.com/could/article/data-creative/] は、コンテンツの質を評価するために欠かすことができません。しかし、いきなりデータの海へ飛び込んでも、目的を見失うことがあります。手軽に膨大なデータへアクセスできるようになった今だからこそ、データに触れる前に何を見るのかを明確にしておく必要があります。 コンテンツの評価とは、大まかに言うと「コンテンツがうまく機能しているかどうか 」を調べることです。データを通して、人々はどのようにコンテンツに触れ、どのような体験をしているのかを見出すのが解析の主な目的になります。つまり、何をもって「うまく機能している」「していない」のかを理解した上で、評価しなければいけません。もちろん、アクセス解析だけですべての答えを見つけることはできませんし、並行してユーザー調査もしたほうが良いですが、いずれの場合でも何を評価するのかを事前に理解しておきたいところ。 アクセス解析において、ページビューや滞在時間はよく取り上げられる指標ですが、サイトの種類によって適し

コンテンツ

コンテンツから先に考えなければデザインすらできない理由

ワイヤーフレームの間違った使い方 たまにリニューアル案件をいただくときがありますが、見た目より先にコンテンツを整理しましょう、一緒に作っていきましょうと説得するようにしています。このサイトでも様々な角度から コンテンツの重要性 [http://www.yasuhisa.com/could/tag/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%84/] を語ってきましたが、最もシンプルな方法は「UX を考えていきましょう」「モバイルファーストで戦略を練っていきましょう」といった専門性の高い言葉を使うのではなく、今までのやり方ではうまくいかないということを分かりやすく説明することです。 従来の Web サイト制作でよくあったのが、まずワイヤーフレームをつくって情報の大まかな構成を設計するというやり方。ワイヤーフレームを作ることは間違っていませんが、コンテンツを作る前に始めてしまうと、あとで大きなギャップを埋める作業が発生することがあります。コンテンツなしで構成を作り始めると、例えば以下のような状況に陥ります。 * 文字が多過ぎて入らない

コンテンツ

Webコンテンツを理解できる人になろう

9月13日に金沢で WDF Vol.15 [http://wdf.jp/vol15/] が開催されました。今回はポッドキャストでおなじみのたにぐちまことさん [http://automagic.fm/post/86903851720/h2o]、神森 勉さん [http://automagic.fm/post/89204549730/momojam-eri-tstudio]、そして初共演になる株式会社キノトロープ [http://www.kinotrope.co.jp/]の生田 昌弘さんとご一緒させていただきました。昨年はコンテンツに関する講演やワークショップをしてきましたが、今年は 1 月以来ストップしていました(最近は デザインプロセスの話が多かったです [http://www.yasuhisa.com/could/article/how-we-talk-about-design/] )。今回は久しぶりのコンテンツ関連の講演ということもあって「コンテンツとはなにか?」という原点に立ち返って話をしました。 「コンテンツ」と言うけど

Iconic : A Photographic Tribute to Apple Innovation
apple

Iconic : A Photographic Tribute to Apple Innovation

イノベーションを『誰よりも先にすること』と捉えられることがありますが、それだけではないと思います。実際、アップルが誰よりも先に製品化、サービス化したものはごくわずかです。iPod が出る前に HDD 内蔵の MP3 プレーヤーはありましたし、マルチタッチスクリーンも消費者向けではありませんでしたが、既に存在していました。アップルの魅力は、機能や仕様に捕われない、今やるべきこと、未来にできることを考慮してデザインしているところだと思います。 ハードウェア、ソフトウェア、サービスを、他にはできない連携を実現することで独自の価値観を生み出しているアップル。いずれかを抜き出して語るのは、アップルのほんの一部を語るに過ぎないかもしれませんが、それをあえて実践し、魅力を最大限に引き出している本が「 Iconic : A Photographic Tribute to Apple Innovation [http://iconicbook.com/]」です。 これは書籍というより、図鑑と言ったほうが良いかもしれません。非常に大きく重たい本なので、ソファでじっくり眺めるのに適しています。アップ

未来

dConstructで学んだWebの仕事に関わる責任

先週はイギリス、ブライトン [https://www.google.co.jp/maps/place/Brighton,+The+City+of+Brighton+and+Hove,+UK/@50.837418,-0.1061897,13z/data=!3m1!4b1!4m2!3m1!1s0x48758509f6294167:0x9cc6af7a727d0ef9] を訪問していました。目的は dConstruct [http://2014.dconstruct.org/] へ参加するためです。 あまり日本では知られていないイベントですが、今年で 10 年目になる Web と未来をテーマにした老舗カンファレンス。イベント開始当初は Web サイト制作寄りのテーマが多かったですが、ここ数年にかけてスケールが大きくなった印象があります。今年は「ネットワークに住むわたしたち 」をテーマに、

デザイン

カスタマージャーニーマップが使える理由と注意点

デザインに使えるマーケティングツール カスタマージャーニーマップ(Customer Journey Map, CJM)は、顧客がどのように製品やサービスと関わるかを視覚化することによって、課題を共有することができるツール。デザインプロセスの一部として採用されるようになりましたが、マーケティングでは顧客との接点を俯瞰して見ることができるということで 5, 6 年前くらいから注目を集めています。(外来語をそのままカタカナ表記にしたくなかったということで「体験のマッピング [http://www.yasuhisa.com/could/article/dh-prototyping-course/] 」と名付けて以前から実践しています。) オンラインでもオフラインでも顧客との接点は劇的に増えました。しかし、接点が増えたことにより利用者行動の多様化が進んだだけでなく、接点になる場所・媒体の浮き沈みも激しくなりました。また、企業やブランドに関わる利用者の心理や行動も変化してきているので「A と B と C でコンテンツやサービスを発信すれば良い」といった一方通行のメッセージ配信では伝わり難くな

デザイン

デザインが分からない人とデザイン話をするコツ

良いって何ですか? デザインの話をするのは、たとえ本業をしている方にとっても難しいことがあります。それが他分野の方ということになると、なおさらです。目的に沿って議論することで、デザインがより洗練されるわけですが、別の部署、他の役職の方との会話になると、なかなかうまくいかないことがあります。 その理由は、彼等がデザインのことを理解していないからというより、お互いが考える「正しい」を理解していないからということがあります。 Webサイトやアプリを設計・開発されている方全員「良いものを作りたい」と考えています。ただし、その「良い」のニュアンスは立場によって少し異なることがあります。「良い=売れる」と解釈する人もいれば「良い=使いやすい」と捉える方もいます。それぞれがもつ「良い」という価値観が、その人の意見や考え方に大きな影響を及ぼしています。 言葉だけでは理解ができない デザイン案を見せると、以下のようなリアクションが戻ってくる可能性があります。 * 青がどうも好きになれない * このボタンはもっと大きく見せるべきだ * 必須情報が他にもあるので、上のほうに表示させたい

コンテンツ

コンテンツワークシートを公開しました

課題が多いコンテンツ設計 昨年、マルチデバイスを見据えたコンテンツ設計 [http://www.yasuhisa.com/could/article/visualize-content-process/] というセミナー&ワークショップを全国5カ所で開催しました。未知のデバイスも考慮し、特定の見た目に捕われないコンテンツ設計と管理をするための考え方や手法を紹介した講座。参加者から高い評価をいただきましたが、幾つか課題が見えてきました。 * マルチデバイス以前にコンテンツが設計できる状態とは言い難い * 制作ワークフローのどこからどのように始めるのか不透明 * コンテンツ設計・開発には時間がかかるが理解されていない 受講者の中には、講座の内容は十分に理解できたものの、どのように活用すれば良いのかが分からない方がいました。特にビジュアルデザインから始める制作行程だと、コンテンツは(なぜか)あるものとして進んでいることがあります。実際につかうコンテンツを入れたあとに、細かなデザイン修正が何度も発生してしまうのも、原稿がないまま雑誌の表紙を作るような行程が原因ということがあります

Webデザイン

今のデザインに必要とされるコントロール

本当にコントロールできないのか WD101シリーズ [http://www.yasuhisa.com/could/tag/wd101/]の最初に、Webデザインは見た目のコントロールができない [http://www.yasuhisa.com/could/article/wd101-nocontrol-in/] という話をしました。スクリーンの大きさが多種多様なだけでなく、利用者が見た目や操作性を自由に変えることができる Web。DTPのような感覚でサイトをデザインしても、誰かの Web アクセスの利便性を損なうと指摘しました。 デザイナーはある種、混沌とした状態から秩序を生み出す能力をもっていると思います。バラバラになった情報を整理して一貫性のあるメッセージを伝えたり、混雑した Web の世界に明確な道筋を示す仕事をしています。秩序を作り出すということは、ある程度のコントロールはなくてはならないわけです。 コントロールすることがデザイナーの仕事であるとすれば、『コントロールができない Web』との相性がよくないように見えますし、デザイナーにとって非常に仕事が難しい環境のように

デザイン

道具の選び方、関わり方を考えるためのヒント

間違ったツールの選び方 ペーパープロトタイプは、紙に書き込むというアナログなアプローチであることから、作るための敷居が低いだけでなく、アウトプットも早く改善がしやすいです。メリットが多いペーパープロトタイプですが、 時間の無駄 [http://www.gv.com/lib/paper-prototyping-is-a-waste-of-time] という意見もあります。紙で作られていることから再現性が低く、的確なフィードバックを利用者から得るには難しいからです。 それでは、ペーパープロトタイプが使えないのかといえば、こたえは「No」になります。こうした「○○は使えるのか?」という疑問は制作の方からよく聞かれる質問ですが、回答に困ることがあります。ペーパープロトタイプだけではありませんが、手法や技術そのもので使えるかどうかの判断はできません。採用する前に以下の 4 点を考慮して選ばないと上手くいかないですし、手法や技術へ責任転換をしてしまう恐れがあります。 誰とつくるのか 誰がその手法を使うことになるのか。自分ひとりだけなのか、それとも組織外の方も関わる可能性があるのか。彼らの背

コンテンツ

シングルカラムから始める情報設計

横並びは複雑化の第一歩 Webサイトの設計をする際、必ずといっていいほど縦にコンテンツを並べて構成を考えるようにしています。どのような人が、何を求めて Web サイトに訪れているのかというシナリオを基に構成を考えていく [http://www.yasuhisa.com/could/article/content-we-need/] わけです。詳細なレイアウトを考えるのではなく、情報の流れが適切であるかどうかを判断するための工程にしています。 パソコン向けの Web サイトデザインの悪い癖 [http://www.yasuhisa.com/could/article/wd101-pc-brain/] のひとつに、「同じくらい重要だったら、横に並べる」というのがあります。広いスペースがあったパソコンが主流の時代ならではのアプローチですが、今は状況が大きく異なります。配信者側にとっての『重要』を出すことは間違っていません。しかし、あれこれ重要だからという理由で隣り合わせにしてしまうと、様々なデメリットが生まれます。 訪問者に迷いが生じる 直接関係のないコンテンツが横に並ぶことで視点の

デザイン

クリエイティブとデータの間にあるもの

危ういバランス Webサイト制作でも、アプリの開発でも、いつも気にしているのがデータとクリエイティブのバランスです。この 2 つの理解が、デザインには不可欠だと考えています。いずれも「重要」と言われていますが、企業の規模や、文化によって重きを置くバランスが異なると思います。 データを重要視する企業成熟したプロダクトやサービスをもつ企業。エンジニア文化が浸透しているところや、営業の力が強いところ。クリエティブを重要視する企業 発展途上のプロダクトやサービスをもつ企業。起業家の文化や、戦略としてのデザインに強く感心があるところ。Google Analytics のようなツールを使えば手軽にデータを解析できるようになりましたし、A/Bテストをするのも難しいことではありません。データから最適だと思われる改善策を提案することができますし、とても説得力のあるように見えます。 講演 [http://www.yasuhisa.com/could/tag/%E8%AC%9B%E6%BC%94/] で「数字はストレートで分かりやすいから、多くの人に理解してもらえる」と話すことがありますが、すべてを数

google

Material Designから学ぶデザインと技術の共通項

Google I/O 2014 [https://www.google.com/events/io] では様々なデバイスが発表されて、ますます Google が日々の生活へ入り込んでいくのだなという印象を受けました。幾つかのプロダクトは興味深かったですが、プロダクトより気になったのが Material Design [http://www.google.com/design/] の発表です。現在 Android L [http://developer.android.com/preview/index.html] と称されている次期バージョン Android で採用されているデザイン言語のガイドラインです。 Skeuomorphism [http://www.yasuhisa.com/could/article/design-issues-2012/] が全面的に使われていたときは、画面上にあるオブジェクトを触っているような感覚を見た目で演出していましたが、Material Design ではアニメーションを通して触れているような感覚を作り出しています。

デザイン

ペルソナ設計に人間像は重要ではない理由

人間像ではなく動機や文脈を明確に プロジェクトを本格始動する前にペルソナを設定することがあります。様々な背景の方がデザインプロセスに参加すると、何をもって『良い』と判断すれば良いのか分からなくなることがあります。ペルソナは、このプロジェクトにおいて適切な『良い』を判断する際に役立ちます。 ペルソナには「人/登場人物」という意味が含まれていることから、表層的な人間像(性別、年齢、出身地など)を描かなければいけないと考えがちです。しかし、それはペルソナを設定することにおいて、それほど重要ではないと思います。私はペルソナを1枚のシートにまとめることがありますが、見た目やライフスタイルといった属性は、詳細まで掘り下げていません。ほとんどの場合 2 〜 3 つくらいのリストにして省略しています。 代わりに「なぜ、人はプロダクトやサービスと触れ合うのか 」という部分を、ペルソナを通して語るように心がけています。その理由は、人口統計学的な属性によって、達成したい目的や道筋が大きく変わることがないからです。 例えば、ある人が アマゾン [http://www.amazon.co.jp/?_e

コンテンツ

データ解析で終わらない提案型分析のコツ

文脈で変わるデータの素顔 効果測定が必須の時代だからこそ、様々なデータをみて検証をする必要がでてきました。アクセス解析で難しいのは、データの切り口や、評価できる数値を見つけることではなく、次のアクションへ繋げることができる提案をすることだと思います。「 脱PVで見えてくるコンテンツの質 [http://www.yasuhisa.com/could/article/no-pageview/] 」という記事で、ページビュー(PV)だけでコンテンツの善し悪しを評価してはいけないという指摘をしました。PV だけでは、サイト訪問者の『質』を判断するのが難しいだけでなく、企業が求めている(ロイアリティの高い)顧客と接点を持てているのかも判断できません。分かりやすいからという理由で PV を評価指標の主軸にしていると、「ページビューを獲得する」という短期的かつ具体性のない目標を立ててしまうことになります。 意味のあるデータを見つけだすヒントは、アクセス解析から導き出された数字の外にあります。コンテンツの評価は、アクセスしている利用者の文脈によって大きく変わるからです。 例えば、中小企業で働く

デザイン

コードが教えてくれるデザイン思考

今プログラミングを教育に取り組もうという声が高まっています。CODE.org [http://code.org]のようなサイトも立ち上がっていますし、 Scratch [http://scratch.mit.edu] のような子供から楽しめるビジュアルプログラミングもあります。 デザイナーの中でもプログラミングを始めたい方もいると思います。WWDC 2014 で発表された Swift [https://developer.apple.com/swift/] は、スクリプト言語のような感覚でコードが書けるので、始めるには良い機会なのかもしれません。 ただ、デザイナーの立場からみると、プログラミングは遠い存在に見えることがあります。しかし、「問題解決のため」という視点からみると、デザインとプログラミングには共通点がたくさんあります。人間中心デザインに基づいた発想にも、実装可能なところまで落とし込んで模索しないと、夢心地なアイデアになることがあります(もちろん自由な発想が必要なときもありますが)。コードを書くひとの考え方を取り入れることで、アイデアを洗練させることができるようになり