Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。

考え方

ベストプラクティスを実践しても成功しない理由

私たちはベストプラクティス好き セミナーの質疑応答で「ベストプラクティスは何か?」と聞かれることがあります。 文脈によって正しさや評価が変わることがあるデザインですから、成功率が高い手法が知りたくなる気持ちは理解できます。 Web 上でも人気になる情報には、必ずといって良いほど『定番』『10選』『抑えておきたい』といったフレーズを添えてベストプラクティスと呼べる手段が紹介されています。 有名企業が実践しているから。RT や Like がたくさんあって人気だからという理由で「ベストプラクティスだから上手くいく」と考えがちです。模索・失敗を繰り返さなければ良いデザインは生まれないと語られるものの、「失敗したくない」「成功の近道を知りたい」と思ってしまうのが本心なのかもしれません。 1966年に「Hofling Hospital Experiment [https://www.simplypsychology.org/hofling-obedience.html] 」という社会実験が行われました。この実験は、私たちが簡単に権威や大多数に同調してしまうことを示しています。医師(実験

デザイン

感情移入の邪魔をするエンパシーギャップに注意

「自分は絶対にそうしない」の正体 デザイナーであれば思いやりではなく感情移入ができるようになっておきたい [https://yasuhisa.com/could/article/empathy-design/]ですが、同じ立場になって考えるだけだと思わぬ落とし穴に出くわします。 ダイエット、新年の抱負、過労、セクハラなど、様々な方達のエピソードを聞いたときに「自分だったらそんなことはしない」「なぜそうなってしまったのか」と反応してしまったら危険信号です。それは、 Empathy Gap [https://en.wikipedia.org/wiki/Empathy_gap] (エンパシーギャップ)と呼ばれる認知バイアスの可能性があります。 エンパシーギャップには大きく 2 パターンあります。 * 感情の高ぶりや非日常的な状況の影響力を過小評価してしまう状態 * どのような状況でも客観的に分析・思考できると過大評価してしまう状態 例えば新年の抱負を考えるときは、真っ新な気持ちで様々なプランを立てると思います。しかし、日が経つと次第に宣言した習慣が続かなくなってしまうことがあ

仕事

2010年代で変わったデザインとこれから

みんなのwebになった10年代 この 10 年を振り返って大きく変わったのが、web が水と電気と同じように欠かせない存在になったこと。もちろん、それ以前から web は多くの方が使っていましたし、早い時期から web の可能性を信じていた人もたくさんいました。しかし、それでもパソコンという難しいデバイスを使うのが大前提でしたし、多少なりとも専門的な web の知識が必要でした。 少し敷居が高かった web の壁を完全に壊したのがスマートフォンの存在。日本では ソフトバンクモバイルが 2008 年に iPhone 3G を販売していましたが、本格的に普及し始めたのは 10 年代に入ってからだと思います。スマートフォンによって誰でも気軽に web へアクセスできるようになっただけでなく、web かどうかを意識することなく、コンテンツを消費したり作ることが可能になりました。 先進的な人たちだけのものではなく、みんなのものになった web。もう立派なオトナです [https://yasuhisa.com/could/article/next-generation/]。これによって w

ビジネス

Q&A 隠れたステークホルダーの見つけ方

> 大きな会社であればあるほど、プロジェクトが進むにつれて合意形成範囲が広がってしまう場合があります。対面するメインチームのクライアント自身も認識していなかったステークホルダーが後から出てくることもあります。事前にどうすれば良かったでしょうか。 匿名 私自身も経験したことがありますし、数千人規模の大企業になると途中からステークホルダーが増えるという状況は避けされません。ただ、少しでも有利な状況にすることは可能です。 クライアント組織の構造を理解する 案件を進めるとき、クライアント企業の「担当者」が主な窓口となりますが、その方が決裁者ということはあり得ません。その上に「部長」がいるかもしれませんし、そのまた上も存在します。また、組織外にも案件を進める上で重要なキープレーヤーがいる可能性もあります。 早い段階(できれば最初のヒアリング)でクライアント組織と、周りを取り巻く要素は何か把握すると良いでしょう。下図はシンプルな例です。 * コンサルタント / アナリスト: アドバイザーのような役割で入ってくる方で、ビジネスや市場といった全体像を分析した上で、成果物(デザイン

デザイン

それでも私はデザイナー

今の働き方をするキッカケ 最近、私は業務で Sketch をはじめとしたデザインツールを開く機会が減ってきています。意図的に名を伏せるようにしていますし、実際はチームで作っているわけですから「私がこれを作りました」と言えるものもありません。それもあって周りからは何をしているか分からないと怪しまれるわけですが、それでも「私はデザイナー」と言っています。 何かを作って世に送り出すことがデザイナーと定義するのであれば、私はそう呼ぶ資格がないかもしれません。今は人の課題、部署間の課題、作り方の課題、進め方の課題、改善の課題、運用の課題といった外からでは見えにくいところを取り組んでいます。 上記の課題に興味をもったのも、出来上がった成果物への不満や失敗をした経験があるからですが、「誰のためのデザイン? [https://amzn.to/37KiEnG]」の著者であるドン・ノーマン博士が 10 年前に書いた「Why Design Education Must Change [https://jnd.org/why_design_education_must_change/]」はインスピレー

デザイン

ユーザー調査に必要な分析の「はじめの一歩」

分析で価値が変わる ユーザー調査 [https://yasuhisa.com/could/article/starting-user-research/] (ユーザーリサーチ)は始めるのも実施するのも大変ですが、分析するのも楽なことではありません。せっかく調査してもログがあるだけでは意味がありません。ユーザーの言葉を引用してポスターやスライドで見せるのは啓蒙目的であれば良いですが、本当に必要なのは次の開発へ繋げるための判断材料です。分析でユーザー調査の価値が決まるところがあるので、次へ繋げるためにも分析は欠かせないところになります。 分析もデザインと一緒でツールの使い方を覚えたり、綺麗なレポートの事例を見ただけでは上達しません。基本を覚えた上で、何度か実践を繰り返すことで少しずつ上達していくものです。定性調査でも定量調査でもつかえる分析の第一歩になるポイントを押さえておけば、レポートの質もグッと上がります。 目的を明確にすること 分析をする前に重要になるのが、調査の目的を明確にすること。分析手段を知っていても、分析対象になるデータの質が悪いと意味がありません。ユーザーインタ