社会

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仕事

2010年代で変わったデザインとこれから

みんなのwebになった10年代 この 10 年を振り返って大きく変わったのが、web が水と電気と同じように欠かせない存在になったこと。もちろん、それ以前から web は多くの方が使っていましたし、早い時期から web の可能性を信じていた人もたくさんいました。しかし、それでもパソコンという難しいデバイスを使うのが大前提でしたし、多少なりとも専門的な web の知識が必要でした。 少し敷居が高かった web の壁を完全に壊したのがスマートフォンの存在。日本では ソフトバンクモバイルが 2008 年に iPhone 3G を販売していましたが、本格的に普及し始めたのは 10 年代に入ってからだと思います。スマートフォンによって誰でも気軽に web へアクセスできるようになっただけでなく、web かどうかを意識することなく、コンテンツを消費したり作ることが可能になりました。 先進的な人たちだけのものではなく、みんなのものになった web。もう立派なオトナです。これによって web サイトやアプリをデザインする私たちに大きな転換期が来ました。

インターネット

ユーザーデータの先にあるデザインの闇

ようこそ、ブラックミラーへ ユーザーデータは今のデザインに欠かせない存在です。レコメンデーションや操作の省略など、ユーザー体験の向上に役立っています。また、デザインを提案するときもデータがあるとないとでは説得力が違います。 「ユーザーのため」と耳障りの良い言葉を添えてユーザーデータを集めた先には何があるのでしょうか。それは本当にユーザーのためになっているのでしょうか。Google 社員向けに作られた「The Selfish Ledger」というビデオがユーザーデータを集めた先の世界を描いています。 2016年に作られたこのビデオは Google のプロダクトビジョンを描いたものではなく、Google のデザイナーの教育向けに作られたそうです。このビデオで描かれている世界を目指すべきなのか、それとも別の道や考え方を模索すべきなのか。見る人によって様々な意見が生まれそうです。 ビデオでは全人類のデータを集めることで今までにない体験をユーザーに提供できるとしています。データはユーザーのプロフィールや行動という表層的なところに留めず、DNA にも及んでいます。生まれてくる子供達も、親や親戚のデータに基づいて製品・サービスの提供が可能になります。 今はデータの取得にはユーザーの行動(インプット)が必要ですが、人工知能によって足りないデータが埋めていくというシナリオもあります。体重というユーザーデータをもっていないので、ユーザーの好みの形状になった体重計を紹介して測ってもらう(取得する)ということを人工知能がすることも考えられます。 私たちが自分の意思で行動しているつもりが、Google によって思考・行動が操作されるという、まるで「

社会

自分は偏っていると思うことから始めるデザイン

東京中心設計になっていないか 東京でデザインの仕事をすることはエキサイティングであると同時に、視点が偏りがちになります。様々な人たちとの出会いがある一方、特殊な街だと思います。東京は電車・バスが主な交通手段ですし、無料で WiFi へ繋がる場所も無数にあります。スマホから商品を注文すればすぐ届きますし、斬新なサービスも東京周辺エリアからスタートということも少なくないです。 人口が密集しているのでサービスが始めやすいというのはありますが、東京の光景が日本全国共通の『当たり前』とは限りません。幸い、年に何回か地方のデザイナーと現地で情報交換することがありますが、様々なことが違います。情報が遅れているわけではなく、生活光景が違うわけです。車社会であることはもちろん、オンラインで注文するよりショッピングモールで買ったほうが便利という場合もあります。都市部であれば、電車は主な交通手段ですが、駅前の雰囲気や人々の行動は東京で見るものと少し違います。 「歩きながら片手で操作できます」 「大量のコンテンツを閲覧できます」 とても良さそうに聞こえるフレーズですが、移動手段が電車で安定した回線があちこちにある東京(もしくは都市圏)だから響く価値かもしれません。車を運転しながら片手で操作は危険ですし、移動距離が長ければ回線が常に安定しているとは限りません。安めのデータプランにして節約している人も少なくないわけですから、大量のコンテンツが見れるからといって大喜びしないでしょう。 東京という『特殊地帯』の課題だけでなく、テック系・デザイン系の人たちによる『フィルターバブル』のようなものもあるかもしれません。私の周りだと

未来

AIがデザインの仕事を拡張する理由

対立ではなく協働 最近の AI の話題は「人から仕事を奪う」という文脈で語られることが多いです。デザインの世界も例外ではなく、人の代わりに作ってくれるサービスが幾つか出てきていることから、そう考える人は少なくありません。Web サイトのレイアウトを AI の力を借りて自動的に作ってくれる Grid。最近だと Wix がサイト制作に AI を導入したと発表しました。また、Tailor のように、幾つかの質問に答えたら、適したデザインパターンを出してくれるサービスもあります。作ることだけがデザイナーの仕事ではないと言われて久しいですが、AI の発展により、ますますそれが現実的なものになりました。 クリエイティブの世界でも機械化・自動化は当たり前になりつつあります。10 年以上前だと、機械によって生成されたコードは汚くて使い物にならなかったわけですが、今だと経験の浅いコーダーに任せるより良いものが作られることがあります。複雑なレイアウトで構成されたレスポンシブ Web サイトもPageCloud を使えば、コードを触らずとも難なく作れるわけです。 ここで紹介したツールはほんの一部ですし、半年後にはさらに便利なツールが増えているはずです。私もコーディングをバリバリしていた頃は「人の手を使わないと無理」と思っていたわけですが、

デザイン

性別選択UIにあるデザインの課題

私は男性として生活をしています。 ソーシャルメディアなどにプロフィールを記載する場合は「男性」を選択しています。女性であればプロフィールに「女性」と選択して、自身を「女性である」と考えるでしょう。 こうした性別選択は、多くの方にとって当たり前すぎて深く考えないことです。しかし、こうした自分を表現する小さな部分にも課題は隠されています。人によっては「男性」「女性」という分類に当てはまらない方もいますし、それを特定の人にしか公表したくないという場合もあります。自分のジェンダー(gender, 性)は男性でも女性でもなく、「〇〇である」と意思表示をしたい方。自分の意向に合う呼ばれ方をしたいと考える方もいるはずです。 この課題に取組んでいるソーシャルネットワークを幾つか見かけるようになりました。男性、女性のという選択肢だけでなく「カスタム」という項目を用意し、そこに自分の性を表すのに適切な言葉を自由に記入することができるというアプローチです。 例えば Facebook の場合、誰に対して自分の性を公表するかを決めることができるだけでなく、自分をどのように呼ばれたいのか「him」「her」「them」を選ぶことができるようになっています。残念ながら、2016年1月現在、米国版しかこのインターフェイスを確認できませんでした。

未来

dConstructで学んだWebの仕事に関わる責任

先週はイギリス、ブライトンを訪問していました。目的は dConstruct へ参加するためです。 あまり日本では知られていないイベントですが、今年で 10 年目になる Web と未来をテーマにした老舗カンファレンス。イベント開始当初は Web サイト制作寄りのテーマが多かったですが、ここ数年にかけてスケールが大きくなった印象があります。今年は「ネットワークに住むわたしたち」をテーマに、作家、キュレーター、プログラマーなど幅広い分野の方々が、Web の過去・現在・未来を語りました。 ※ オーディオは MP3 でダウンロードすることができます。 難しいけど背けられないテーマ 長引く不景気、増え続ける監視カメラ、デヴィッド・キャメロン現英国首相への不信感 … こうしたイギリスの背景からなのか、政治色が強い内容が所々に見られました(とはいっても左右いずれかに寄った内容ではありませんが)。明るい Web の未来を築いていこうというより、知らぬ間にすぐそこまで来ているディストピアな未来への警告、そしてそこで我々が何ができるのかといった少し暗めなテーマもあったと思います。 プライバシーはどこへ向かっているのでしょうか。 セキュリティはどうでしょうか。

教育

情報だけでは価値がない時代の学びの姿

「時代の流れが速すぎて学ぶのが辛い」 「いろいろありすぎて覚えるのが大変」 このような言葉を聞いたことがあります。確かに学ぶことが多いですが、知識との向き合い方で学習の仕方が大きく変わります。学習への向き合い方の変化が、気持ちを和らげてくれることもあります。 昔は情報をもっていることが知識であり、情報を得る方法が学習と捉えられていた時期もありました。故にセミナーに参加したり、書籍を買っても自分が知らない情報があるかどうか、たくさんの情報が書かれているかどうかが評価の基準になり、情報を得たから「学べた」という満足に繋がったのかもしれません。昔の学校の授業は情報が中心なっていたのも、何か関係しているかもしれません。 終着点があった従来の学習 従来の情報の取得方法。わずかなソースから情報を受け取ることが知識になった。 知識を得る方法が書籍、新聞などといった媒体の場合、そこに書かれている情報が知識であり、学びの『終着点』でした。 その理由は媒体の制約が関係しています。 新聞や書籍の情報は紙面という制約があることから、「もっと知りたい」「この言葉がわからない」「関連した動向は何」といったニーズに応えることができません。さらに広げて情報を得るということが難しいからこそ、紙面に書かれている情報が知識のソースであり学びの終着点でした。こうした状況下での学習は、平面的になりがちで情報を得ることが知識に直結すると解釈してしまいがちです。 たくさんの情報に触れるのはコスト高なので、ひとつ又はふたつの情報ソースに留まる 多様性も拡張性も見えてこないので、書かれている情報が事実と解釈しがちになる 情報配信のスピードが早くないので、普遍的な情報として捉えてしまう ネットワークによる改善プロセス ネットワーク社会ではリンクで繋がった膨大な情報を取得することができるようになった。

意見

私たちはすべての人と友達になれるのか

ソーシャル。ソーシャル。ソーシャル。 今、この言葉を聞かない日がないくらい耳にしています。そして、様々な言葉がソーシャルと組み合わせて使われることがあります。ソーシャルリーディング、ソーシャルラーニング、ソーシャルファンディング、ソーシャル医療・・・。おそらく私たちの行うすべての行動はソーシャル化され、ソーシャルという言葉を使う必要がなくなる日が来るのかもしれません。 ソーシャル化される・・・これは、私たちの情報が公の場にさらされ、すべての人が何かしらの形で繋がっているネットワーク化された状態です。人との繋がりや影響力がネットワーク化された社会では重要と考えられているからこそ、評価経済や評判経済という言葉が生まれてきたのでしょう。 人と人とが繋がり合い、新たな可能性を生み出すソーシャルな世界。常にネットワークにいるからこそ、心を支え合うこともできるかもしれない。Sean Parker 氏が、彼の新しいスタートアップ Airtime を語るときに使った言葉が「Eliminate Loneliness」でした。ネットワークで繋がったソーシャルな世界は、正に孤独がなくなることといえるでしょう。 しかし、私たちは本当に孤独がない世界を必要としているのでしょうか。また、ネットワークに繋がった世界にいることが我々にとって本当に必要とされている状態なのでしょうか。それが時々分からなくなります。 孤独は辛いです。しかし、孤独という状態があるからこそ、繋がりの喜びがあるでしょう。孤独とは言い換えれば、

Webデザイン

楽天から学べる日本的なWebアプローチ

学べるところが多い楽天ページ Webデザインに関わる様々な情報やノウハウが世界中で共有されているとはいえ、お国柄は存在します。Yahoo!でも、世界共通にみえる UI コンポーネントがありますが、アメリカと日本と中国ではアプローチが異なります。情報にメリハリをきかせているアメリカ。今の話題を中央にたくさん詰め込めるように工夫してある日本。クリックをしなくても膨大な情報を消化することができる中国。ポータルサイトをひとことで言ってもやり方がいろいろあることが分かります。 各国の Yahoo! を見て「欧米はシンプルなのに、日本や中国はなんかごちゃごちゃしている」と感じた方はいるかもしれません。なぜそんな小さなところに情報を詰め込むのか、なぜページを整理しなのか、メッセージを絞ってメリハリをつけないのか、といった悩みを抱えるデザイナーもいるかもしれません。 日本らしい忙しいデザインの代表例としてよく出てくるのが楽天です。楽天というひとつのショッピングモールではあるものの、表現はお店に委ねられているので統一性はあまりありません。10,000 ピクセルにもおよぶ長いページのどこに購入ボタンがあるのか分からないこともあります。次から次へと目に入ってくる画像を見ているうちに、何を買いに来たのかさえ忘れる人もいるでしょう。 それでは、楽天の店舗ページが悪いデザインかというと、私はそうは思いません。楽天のデザインは、欧米のデザインを見ているだけでは分からないことを教えてくれます。日本で求められているもの、表現上の制約や可能性、良いとされている基準が何であるかを知るキッカケになると考えています。 なぜ楽天ページは楽天ページでいられるのか 装飾が要素が多く、ひとつでも多くの情報を表示させ、宣伝文句が書かれた大きな画像が次から次へと登場する楽天ページ。楽天ページだけではありませんが、

インターネット

キーワード 2012: Cultivate(耕作する)

昨年「キーワード 2011」と題して注目のテーマを幾つか紹介しましたが、今年もやります。最初のキーワードは「Cultivate」です。農業に挑戦しようという意味ではなく、耕作するときのような視点と振る舞いをしようという意味が含まれています。このキーワードはデザイナーだけでなく、Web に関わる様々な仕事に通じます。 Webの狩猟時代は終わった Web だけではありませんが、今までのビジネスは石器時代の狩猟社会に似ていると思います。顧客をたくさん獲得すること、ひとりでも多くの振り向いてもらうこと、自分たちの場所に集めること・・・これらは野生の動植物を採取していた石器時代の狩りと重ねることができます。Web でもページビューや会員数の価値は未だに高いですし、ソーシャルメディアだと言っても結局 Like 数やフォロワー数といった『採取数』が重要視されています。とにかくたくさんの人に注目してもらうにはどうしたら良いのか、という考え方は狩猟社会的な価値観かもしれません。 人の顔が見え難く、ひとりひとりのニーズを聞き入れることが難しい状況であれば、たくさんの人を『刈り取る』くらいしか出来なかったかもしれません。刈り取る、かき集めるという考え方であったからこそ、集めた後の人とのコミュニケーションという考え方も生まれなかったでしょうし、結局1回限りの関係を毎回繰り替えすという形になっていたのでしょう。 刈り取った数ではなく、ひとりひとりにどのような価値を提供出来るかがブランドに繋がることを解説した記事「企業の透明化がブランドを高める理由」 狩猟社会には拡張性や持続性はありません。今いる土地を食いつぶして、

ソーシャルメディア

デバイス利用の変化からみる行動の変化

以下はドイツの Berliner Gazette に掲載された記事の日本語版です。震災後のソーシャルメディアの利用について意見を欲しいという依頼を受けて寄稿したものです。独自の解釈がありますが、参考になれば幸いです。 元記事: Internet entdecken: Wie hat die Dreifachkatastrophe die digitale Gesellschaft in Japan verändert? 2011年は日本にとってスマートフォン元年といっても過言ではない。以前から iPhone や Sony Ericsson の Xperia をはじめとした Android フォンを利用していた方はいたが、今年はテクノロジーやガジェットに強い感心をもっていない一般消費者も使い始めた年だ。10年以上フィーチャーフォンが大多数を占めていた日本の携帯電話市場。フィーチャーフォンにはTVの視聴や電子マネーなど日本人のニーズに合わせた独自機能を多数実装していることから、それらを実装していないスマートフォンは日本で受け入れられないと言われていた。 素晴らしい機能を数多く取り揃えているフィーチャーフォンだが、Web の利用に関しては十分であるとは言い難い。WAPほどではないとはいえ、表現もインタラクションも PC 向けに比べて制限がある。フィーチャーフォンにも PC

ソーシャルメディア

公共機関が必要なのはWebサイトではなく配信チャンネル

佐賀県武雄市が市のページをFacebookへ移行することで話題になっています。ニュースは「市長がはまっている 佐賀県武雄市、市のページをFacebookに完全移行へ」というキャッチーなタイトルが付いていますが、現在の Web サイトの情報は今後アーカイブとして残るみたいですし、会員登録をしなくても Facebook の情報は観覧出来るので、利用者・住民には大きな隔たりはないかもしれません。 公共機関が Facebook を中心とした活動をする、というのは武雄市が最初ではありません。インド デリー市の警察署は、住民から交通ルール違反をしている車・バイクの情報を募集しています。摘発した乗用車の登録番号を発表して、活動を随時知れるようになっています。 日本フェイスブック学会というグループを立ち上げるなど、武雄市は Facebook 熱が高いのでこうしたアプローチをとったという考え方も出来ますが、それだけではないと思います。これは、現在の公共機関の Web サイトの限界が生み出した結果ではないかと考えています。 今のスピードに付いていくためのスキーム 国・県・市町村の Web サイトに限ったことではないですが、多くの Web サイトは CMS を導入しています。

ゲーム

遊びがないなら未来はない

新しい文明が築かれるとき、そしてそこで生まれた社会で文化の花が咲くとき、必ずといって良いほど『遊び』が原動力となっている。そう考えたのがオランダの歴史家ヨハン・ホイジンガです。第二次世界大戦の真っ只中に彼は「Homo Ludens ホモ・ルーデンス」を執筆。彼の著書で「遊び」というものが何であるかが定義されており、あらゆる社会活動には遊びから生み出されるインスピレーションは欠かすことが出来ないとしています。 英語版 Wikipediaに『ホモ・ルーデンス』で挙げられた遊びの定義が掲載されています。 遊びは自由である 遊びは日常でもなければリアルともいえない 遊びは場所と時間の観点でいう日常と分断されている 遊びは秩序を生み出す 遊びは物欲や私益と繋がりがない 様々な人間の活動に遊びの要素を組み合わせることによって効果が促進されると、ここ数年注目を浴びていますが、ホイジンガの考え方はその逆といって良いでしょう。様々な事柄に遊びの要素を加えるのではなく、様々な事柄には既に遊びの要素があるとしているわけです。 彼の理論に同意するか否かはさておき、遊びから生まれる楽しいという感情、ヒラメキ、共感といったポジティブなエネルギーは何かしらの形で社会に還元されているのではないでしょうか。誰かが遊びをしているのを見ているだけでも、自分も楽しく感じることはあるわけですし、場の雰囲気が変わることさえあります。ホイジンガは遊びが文化を作り出していると定義していますが、これはさほど飛躍した考えではないと思います。 世の中が暗い雰囲気になっているから自分も一緒に暗くなることはありません。また、良い社会にするにはどうしたら良いのかを真剣に語り合うことだけが正しい方法ではないと思います。

ソーシャルメディア

ソーシャルメディアがもつ光と闇

今年のはじめに起こったエジプトの革命。 そこではソーシャルメディアが活躍し、今まで以上に社会活動にソーシャルメディアを活用しようという声が高まった印象がある(遡れば 2004 年のハワード米上院議員の例があるが、日本で紹介したときはほとんど誰も注目しなかったが)。エジプトの件ではソーシャルメディアの底力・有用性が絶賛されたわけだが、私はそのときに「次に何か社会的な変動が起こったときにソーシャルメディアの闇もみえてくるだろう」と感じた。私がへそ曲がりだからなのかもしれないが、まぁそれはそれで。 今回の東北関東大震災で、私はソーシャルメディアに助けられた点は幾つかある。携帯電話サービスがすべて機能しない中、ソーシャルメディアが情報のライフラインとなり、家族や友と連絡をとることができた。被災地にはいないから出来た贅沢であることは承知だが、情報がまったくないという状況はほぼなかったといえるだろう。 こうしたソーシャルメディアの『光』と同時に今回は『闇』も幾つか見た。恐らくエジプトでもあったことなのかもしれないが、日本語ということもありそれが明るみになったのかもしれない。 多くの人はソーシャルメディアのもつ『社会性』をまだ実感していないように思える。私たちは Web が登場したことにより、今まで以上に膨大な情報を手軽に入手できるようになった。それと同時に入手できるのと同じくらい手軽に情報も発信が出来るのが現在である。もう何も書く必要はない。ボタンひとつで多くの人に情報を発信出来るわけだから。 情報を消化する前に私たちは情報を拡散していないだろうか。信憑性を確かめる前に【拡散希望】という必要ないラベリングにより、思考が停止していないだろうか。賛同するしない関係なくソーシャルメディア上の妙な盛り上がり(

UX

文化の違いで変わるデザインアプローチ[後編]

前回の「文化の違いで変わるデザインアプローチ」で社会学者の Geert Hofstede が提唱した5つの文化測定指標を紹介しました。欧米の用語やノウハウがたくさん日本に『輸入』されるわけですが、そのまま適応しても日本ではうまくいかないことがあります。「使いやすい」「よい体験」のニュアンスも国ごとに少し違うのは当然でしょう。その違いをどのように吸収するかを考えるときに5つの文化測定指標は参考になります。 アメリカと日本で文化測定指標を比較すると、集産主義、不確実さ、長期的志向の3項目が大きく違うのが分かります。前回の記事で集産主義を考慮したデザインアプローチを紹介しましたが、今回は残り2つの指標をもう少し詳しく紹介します。 不安を解消するための明確さ 日本語という言語は抽象的な言い回しが多く、ニュアンスを捉えるのが難解な文章がたくさんあります。日本語の文学は、言語の特徴を活かした想像力豊かな作品がたくさんありますが、日本人の生活においてはあまり象徴的で曖昧なものは好まれないようです。明確な答えを求める傾向がありますし、新しいことに積極的な部分があるものの保証や明確な事例がないと一歩前に踏み出せないこともあります。集産主義の解説でも触れましたが、誰かと違うということはリスクであると感じる理由として、正しい答えではない可能性があるという不安があるからかもしれません。 デバイスの操作には必ずエラーがついてきます。うっかりとしたヒューマンエラーもあれば、バグやシステムエラーなど様々な「間違い」が発生します。間違いをしたくないという感情が強い日本人だからこそエラーメッセージに敏感に反応してしまうのかもしれません。間違いを避けるため、能動的なアクションを減らしたり、誰もが使っているサイトに心地よさを求めるのでしょう。

UX

文化の違いで変わるデザインアプローチ

文化を測る5つの指標 世代・経験値・背景によって価値観は異なりますし、時が経つにつれて次第に受け入れることができるものがあります。価値観が変わることがあるものの、根底にはその人が住んでいる国や地域の文化の影響を受けていることは少なくありません。前回「日本的なUXの解釈とは」で国が違えば良い体験の解釈の違いがあるのではと仮説しました。それを見分ける項目のひとつとして文化を挙げたわけですが、既にある文化を測定するための指標に注目することで日本ならではの良い体験の価値観を見つけることができるかもしれません。 社会学者のGeert Hofstedeは、IBMで研究していた1967年から1973年にかけて 70 カ国の従業員から様々なデータを収集。そのデータから生まれたパターンを「Cultural Dimension (文化の範囲)」名付け、5つの指標から文化測定ができると提唱しています。その5つの指標は以下のとおり。 力の距離感 (Power Distance) 権力が限られた少人数に集中しているのか、それともより多くの人に分散されているのか。例えば階層式構造なのか、フラット構造なのかの違い。 個人主義 vs. 集産主義 個人がどれだけ特定のグループに属していると感じているかどうか。 男性らしさ vs. 女性らしさ 役割が性別を超えてどれだけ割り振られているかどうか。役割や価値観が性別と結びつけられているかどうか。 不明確への回避率 不明確であいまいな価値にどれだけ寛容的かどうか。

ソーシャルメディア

社会契約から分かるソーシャルメディアでの対話の仕方

社会契約とソーシャルメディア 社会契約とは、ジョン・ロック、ジャン・ジャック・ルソー、トマス・ホッブズが提唱した概念です。非常に小難しい言葉ですが、簡単に説明すると「私たちは何かの契約・同意の下、社会と関わりをもっている」と表現できます。憲法やルールのように文書としてまとめられている契約もありますし、作法、マナー、雰囲気のように契約書を交わすわけでもなく、なんとなくお互いが同意しているものもあります。私たちは自由意志で気ままに暮らしているのではなく、契約を交わすことで様々な社会形態をとっているというのが社会契約の基本概念。国、地域、そして人と関わるときの前提になるといわれています。 ソーシャルメディアでの対話をどう行うかを考えるとき社会契約の概念は参考になります。 企業がソーシャルメディアを通して利用者にサービスや情報を提供する際、何かしらの社会的同意が前提になります。ただ、企業の視点で売りたいもの、宣伝したいものを好き勝手に行うと疎外・無視されることがありますし、ときには炎上という結果になることがあります。これは企業が訪問した場の社会契約を破った結果と考えることができます。 情報配信と情報交換の違い ソーシャルメディア上で何かをするにあたり、個々のサービスに存在する社会契約を理解する必要があります。もちろん、Twitter にしろ Facebook にしろサービスごとの漠然としたルールがあります。それは機能ではなく、コミュニケーションの取り方の違いです。

プレゼン

Shift3で人と社会の変化について話しました

撮影: 飯田昌之 12月17日に CSS Nite 年末恒例イベント Shift3 が開催され、私はそこで「不景気から学べる今後のサイト制作のありかた」という題名で 10 分間のプレゼンをしました。不況に関しては昨年の Shift2 でも話したので、これで2年連続になります。去年は実感していた方が少なく、ピンと来なかった方もいたと思いますが、今年は直撃した方も多いかと思います。人材派遣会社や就職関連の方と話す機会がありますが、やはり今年に入って Web 関連の仕事が減ってきたと仰っていました(DTPはさらに前だったそうです)。年度末に向けてまた仕事が増えると予測されますが、厳しい状態はまだ続くでしょう。 不況で真っ先に行う対策の中に「予算削減」というのがありますが、実はこれは短期対策であってビジネスの成長を逃す可能性があります。Andrew Razeghi 氏が昨年発表した「Innovating Through Recession」という論文で以下のような数値を発表しています(プレゼンでもこのうちの1つを話しました)。 1981〜1982年の不況下のなか広告にお金を使った企業はその後3年間売上を伸ばしている 1985年の不況下のなかマーケティングや広告に力を入れた企業は売上を

アイデア

Government 2.0 への4つのポイント

先日、ティム・オライリー氏が Government 2.0 というアイデアを提唱しましたが、彼のいうとおり、公共機関や政府は Web サイトを構築するというよりかは Web サービスを立ち上げる姿勢が必要だと思います。広報新聞やパンフレットを作るというより、Web 上に新たな公共施設を設けると想像すれば良いのでしょう。 オライリー氏記事では幾つか具体的な例も含めて書かれているので、これだけ読むだけでもいろいろイマジネーションは広がりますが、彼の考えるビジョンにたどり着くには何をしたら良いのか考えてみました。 コミュニケーションの隔たりの明確化 SNS でもブログでも何でもいいですが、とりあえず技術を取り入れたものの上手く機能しない場合がありますが、その原因は組織の構成である場合があります。縦割りのコミュニケーションが普通に行われている中、それとはまったく違うコミュニケーションを前提にしたツールを導入してもうまくいかないのは当たり前です。情報公開や共有を得意とする Web ですが、幸い様々な状況に適応出来るツールも存在します。 組織がどのようにコミュニケーションをとっているかを観察することで、課題と解決へのステップもみえてくるでしょう。また法的な側面、プライバシーや著作権ついても明確にする際に考慮しておきたい項目です。 情報の透明化 統計局をはじめ、幾つかの機関が Excel や PDF などで資料を公開していますが、印刷してバインダーなどに保管することが前提にしたものが多く、Web コンテンツとしての再利用を前提しているものが少ないです。

社会

デザインが優れている「政治の見える化」の現在

オバマ政権では情報の透明化を目指して、様々な情報を Web で入手出来るようになりました。例えば Data.gov では、教育、エネルギー、治安など様々なデータ検索できるだけでなく CSV や XML 形式で入手することが出来ます。以前 builder by ZDNet で紹介した IT Dashboard を使えば、公開されている政府関連のデータをグラフ化することが出来ます。もちろん、こうしたデータによる政治の見える化はオバマ政権以前からあって、有名なのだと OpenCongress という政治家や法案のデータを観覧できるサイトがあります。RSSも充実しており、特定のテーマの法案のみ購読するといったことが可能です。政治家のデータシートも様々な情報ソースから集めて掲載しているマッシュアップページですが、読みやすく統一感があるデザインです。 上記に紹介したサイトをみると分かるように、最近はデータを使った情報の視覚化がニュースだけでなく政治分野にも広がっています。データを自由に使える環境が整ったことにより開発者が様々な可能性を模索するようになっただけでなく、デザイナーも参加してデータに新たな価値を与えています。こうした中、Sunlight Labs は非常に興味深いサイトとして今注目しています。ここがコミュニティハブとなり、政治の見える化に関わるプロジェクトが幾つか立ち上がっています。プロジェクトのステータスも公開されており、

社会

欧米視点でみた日本のメディア入門

以前から日本のメディアは特殊であると言われていますが、先月末に行われた総選挙がきっかけで幾つかの海外のメディアが日本のメディアやジャーナリズムにスポットを当てた記事を幾つか掲載しました。部分的に日本のメディアの姿を取り上げている記事は少なくありませんが、客観的に日本のメディアの全体像が分析されているものはあまりありません。2005年に設立されたアメリカの Open Source Center (OSC) は、オープンソースとして公開されている情報を収集、分析を行っている機関。その OSC が先日、日本のメディアについて取り上げた 67 ページの資料を公開しました。PDF 形式で無料でダウンロードすることが可能です。 Japan — Media Environment Open; State Looms Large 日本人からすれば特に珍しい情報はありませんが、どの複合企業が何を所有しているのか分かる図や、日本のソーシャルメディアの使われ方など、日本のメディア入門書としてうまくまとまっています。欧米との違いについても幾つか書かれている点も注目です。 すべて読むには時間がかかりますが、最初の方に概要が書かれているので以下にまとめておきます。 NHKは宗教、学校、警察より信頼されている機関 アンケート回答者の半数以上が携帯電話で毎日ニュースを読んでいる 週刊誌は未だに影響力が高い情報ソース。信頼出来ないレポートが多いものの、調査ジャーナリズムのプラットフォームとしての役割を果たしている 発行部数が少ない地方の新聞でも国内外ニュースを広く扱う傾向がある ニュースソースとしてのWeb利用は増え続けているが、

デザイン

IDEA 2009 全受賞作品をチェック

世界的に有名なデザイン賞「International Design Excellence Awards」が今年も開催されました。工業製品を中心にデザインの価値とビジネスやライフスタイルに結びつけた優れた作品が毎年選ばれています。今年、金賞をとった作品はデジタルとアナログの世界があやふやになったものや、サステナビリティを意識したものが多く見られます。Best of Show を受賞した Nike の Trash Talk は今年を象徴する作品といえるでしょう。以前紹介したことある Energy Seed も受賞したみたいですね。 1500のエントリーを 20人の審査員が観察したり実際試したりして受賞作品を決めました。見た目や感触だけでなく、利用する人や社会にとって有益なものかどうか、良い体験を提供しているかも審査の対象になっているそうです。Business Week が良い特集を組んでいるので、そちらを中心に関連リンクを幾つかリストアップしておきます。 ビデオレポート 金賞作品ギャラリー 銀賞作品ギャラリー (47) 銅賞作品ギャラリー (71) 過去10年間の受賞作品のピックアップ New Scientist 誌のお気に入り Investor Spot

ビジネス

共創のためのビジネスモデル

前回の共創に必要な価値観という記事で、幾つかある共創のタイプ、そしてその特徴について紹介しました。市場に新たな価値を生み出す鍵といわれていますが、IDEOの Tim Brown も共創が今後の経済に必要だと考えている方のひとりです。Ideas Project のインタビューシリーズに彼が出演しているのですが、そこで様々な興味深いアイデアを提案しています。 よいサービスとは、消費者/利用者が何もしなくて済むものではなく、消費者が参加したくなるようなものを指すと Brown 氏は説明しています。 参加型の経済メカニズムを専門用語でいうと参与型経済 (Participatory Economy)と言います。労働者と消費者が共創するモデルで、資本主義経済とは異なりますし、すべてを中央化して平等に分け与える社会主義モデルとも異なります。80年代〜90年代にうまれた用語ではありますが、それ以前から参与型経済を基にしたビジネスは幾つか存在します。 例えば South End Press という出版社では、会員が企画や編集など出版プロセスに参加することを促進するモデルを 70 年代から行っています。カナダのインディーミュージックレーベル G7 Welcoming Committee は、Propagandhi というバンドメンバーによって設立されており、参与型経済のサポーターであり実践もしているそうです(

未来

IDEOが考える教育の姿

新しいビジネスが必要とされているのと同じように、教育においても21世紀という時代に合った形が必要とされています。教育は常に変化し続けていますし、必要とされていることと言っても様々な視点があります。IDEOの考える未来の教育の姿はどういったものなのでしょうか。「IDEO’s Ten Tips For Creating a 21st–Century Classroom Experience」で10の項目に別けて解説しています。以下に簡単に要約したものをリストアップしてあります。いかにも IDEO らしいリストといったところでしょうか。 押しではなく引く 生徒からたくさんの質問が生まれるような環境をつくる 関連性を持たせる 教えているコンセプトを直接体験し、話し合えるようにする ソフトスキルと呼ぶ時代ではない クリエイティビティやコラボレーションといった従来は『あると良いスキル』と呼ばれていたが、今は『なくてはならないスキル』になってきている バリエーションをもたせる ひとつの法則や答えしかないのではなく様々なアプローチが存在することを知らせる 教壇に立つ賢人は必要ない 先生の役目は答えを教えるエキスパートではなく、学習を助力する存在に変わりつつある 先生はデザイナーである 活発な学習が出来る環境をつくるという意味では先生はデザイナー。教えながら環境が作れるようなガイドをもつことも、最初は管理が難しくても良い結果をもたらす ラーニングコミュニティをつくる ひとりではなく、

サービス

Twitterを使った社会活動

様々な使い方や機能をあらかじめ提供している他サービスとは異なり、Twitterは大変シンプルなサービス。こうした機能を最小限に削ぎ落としたサービスは「こういうことが出来る」という明確な使い方が提示しにくい故、使い始めに苦労する場合もあります。明確な使い方がないのは同時に、工夫次第で使い方はいろいろあるわけです。英語圏で利用している方は多いので、リーチ出来る数も多いですし、ほぼリアルタイムでの対応が出来ることから、口コミやサポートのツールとして Twitter アカウントを持っている方も少なくありません。 また Twitter API を利用することで、具体的な使い方を提示出来るサービスをつくることも可能です。先月の Web Directions East で講演した Dan Cederholm も Twitter API を使って Foamee というサービスを立ち上げています。サービスの機能や仕様に利用者が合わせるのではなく、利用者の使い方にサービスが合わせることが出来る・・・この点が Twitter が成功しているひとつの点なのではないかと思います。 使い方次第でどうにでも『化ける』ことが出来る Twitter ですが、最近では社会活動の一環として Twitter