考え方

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考え方

ベストプラクティスを実践しても成功しない理由

私たちはベストプラクティス好き セミナーの質疑応答で「ベストプラクティスは何か?」と聞かれることがあります。 文脈によって正しさや評価が変わることがあるデザインですから、成功率が高い手法が知りたくなる気持ちは理解できます。 Web 上でも人気になる情報には、必ずといって良いほど『定番』『10選』『抑えておきたい』といったフレーズを添えてベストプラクティスと呼べる手段が紹介されています。 有名企業が実践しているから。RT や Like がたくさんあって人気だからという理由で「ベストプラクティスだから上手くいく」と考えがちです。模索・失敗を繰り返さなければ良いデザインは生まれないと語られるものの、「失敗したくない」「成功の近道を知りたい」と思ってしまうのが本心なのかもしれません。 1966年に「Hofling Hospital Experiment」という社会実験が行われました。この実験は、私たちが簡単に権威や大多数に同調してしまうことを示しています。医師(実験者)が明らかに間違った指示をしているのにも関わらず、21 人中 22 人の看護師(被験者)が指示に従ったそうです。病院のルールに違反していることも「医師が言っているから」という理由で実行してしまった人が

仕事

優しくいこうよ、どこまでも

ネガティブは伝染する 仕事現場にしても、業界にしても、今足りないのは「優しさ」じゃないかなと感じることがあります。 100% 間違ったことを言っている人はマレです。けど、5%、10% 違うというところを広げて相手を評価してしまうということがあります。自分がもっている物差しで測るしかないものの、サバ読み・軽率な判断になっていないでしょうか。それがネガティブなリアクションになることが多いですし、そのリアクションがさらにネガティブを引き起こすという危うい現象もあります。デザインという小さな分野しか見ていない私ですが、そういう傾向が見られます。 自分と違うことが「分かってもらえない」という対立姿勢になり、余計コミュニケーションがギクシャクすることもあります。少し優しくなれば状況が変わると分かっていても「どうせ無駄」「なぜ自分だけ」と思ってしまって踏み切れない。けど、実は皆そう考えているかもしれません。 「自分だけ」という視点が周りに優しくなれなくなる原因のひとつでしょうし、それが周りにも伝染している可能性があります。 見えにくいところを見ようとする デザインの仕事は様々な解決方法の中から最適解を導き出して作ることと考えがちですが、実際はそんな単純ではありません。技術的制約でやりたいことが出来ない場合もあれば、時間の都合上難しいこともあります。また、プロダクトロードマップやビジネス戦略の都合でやれることが狭まることも少なくありません。実際、デザイナーができる範囲はとても限られていることがあります。 表層的なところだけで良し悪し判断することが難しいのは、こうしたデザイナーに課せられた『見えにくい制約』

社会

自分は偏っていると思うことから始めるデザイン

東京中心設計になっていないか 東京でデザインの仕事をすることはエキサイティングであると同時に、視点が偏りがちになります。様々な人たちとの出会いがある一方、特殊な街だと思います。東京は電車・バスが主な交通手段ですし、無料で WiFi へ繋がる場所も無数にあります。スマホから商品を注文すればすぐ届きますし、斬新なサービスも東京周辺エリアからスタートということも少なくないです。 人口が密集しているのでサービスが始めやすいというのはありますが、東京の光景が日本全国共通の『当たり前』とは限りません。幸い、年に何回か地方のデザイナーと現地で情報交換することがありますが、様々なことが違います。情報が遅れているわけではなく、生活光景が違うわけです。車社会であることはもちろん、オンラインで注文するよりショッピングモールで買ったほうが便利という場合もあります。都市部であれば、電車は主な交通手段ですが、駅前の雰囲気や人々の行動は東京で見るものと少し違います。 「歩きながら片手で操作できます」 「大量のコンテンツを閲覧できます」 とても良さそうに聞こえるフレーズですが、移動手段が電車で安定した回線があちこちにある東京(もしくは都市圏)だから響く価値かもしれません。車を運転しながら片手で操作は危険ですし、移動距離が長ければ回線が常に安定しているとは限りません。安めのデータプランにして節約している人も少なくないわけですから、大量のコンテンツが見れるからといって大喜びしないでしょう。 東京という『特殊地帯』の課題だけでなく、テック系・デザイン系の人たちによる『フィルターバブル』のようなものもあるかもしれません。私の周りだと

Webデザイン

Webデザインにおける『正直』とは

素材に正直であれ Webサイトの品質には、高い技術と表現を盛り込むという『上を目指す品質』と、どのような状況でも必要最低限の見た目と操作性を保証する『地を固める品質』の 2 つがあると説明しました。しかし、これだけではなくデザインにおける普遍的な考え方も品質に大きく関わっています。 ドイツのインダストリアルデザイナー Dieter Rams(ディーター・ラムス) が提案する良いデザインの十ヶ条の中には、良いデザインは正直であるという項目があります。製品を必要以上に大げさに見せるのではなく、ありのままを伝えること。素材や形状を生かし、機能を明確に伝えることをラムス氏は『正直』と捉えています。 Web デザインに限ったことではありませんが、素材に正直であることは良いデザインには欠かせないことです。これは、素材をありのままに使ってシンプルでミニマリストな表現をするという意味ではなく、素材の特徴を最大限に活かして製品を作り出すことを指します。素材の特徴とは、表現を豊かにする源のようなものであると同時に、制約でもあります。一方、素材に正直ではないデザインは、何か別のものを模擬しているように見えますし、模擬している対象の劣化版に見えてしまいます。 Web サイトデザインの品質も、いかに『Web』という素材に正直になっているかで判断できるのではないでしょうか。 Webという素材の特徴

プロセス

プロセスなんて下手でも我流でも気にしない

デザインプロセスの儀式化 随分昔の話になりますが、茶道(表千家)をしばらく学んでいた頃があります。日本伝統をひとつでも知っておきたかったというのもありますし、茶道にある特有の礼儀に興味があったのが理由です。茶道は、使う道具はもちろん、たてかた、飲み方にも決まったルール・プロセスがあります。できあがった茶の味だけでなく、茶がたてられる過程も楽しむのが茶道の魅力であり奥深さです。 完成品だけでなく、過程を重んじるのは茶道だけの話ではありません。日本に昔からある芸道だけでなく、「寿司を食べる」といった食の世界にもあります。美味しく寿司をいただくには、決まった順序がありますし、正しいとされる礼儀もあります。プロセスというより、一種の『儀式』と呼ぶことができるでしょう。 過程(プロセス)を重んじ、儀式のように進めるという行為は日本文化だけでなく、他国でもあります。プロセスには言葉として表現するのが難しい魅力があるものの、無心で信じるのは良くありません。今日のデザインにおいて、どの環境、どのプロジェクトでも適応できる完全無欠のプロセスは存在しません。しかし、それでも私たちは確実性や安心を求めて『正しいやり方』を探してしまいがちです。ただ、デザインプロセスそのものを過剰に意識することで、デザインが本来しなければならい役割が果たせなくなることがあります。 儀式化してしまっているデザインプロセスを例えてみると

デザイン

ごめんなさい、すぐに結果は出せません

手法や道具にある幻想 手法や道具はやっかいな存在だなと思うことがあります。それを導入すれば組織の文化が変わって物事がうまくいくのではないかという期待が寄せられることがあるからです。ここ数年のデザインの世界では UX に似たような期待をしてしまっているところがあります。この摑みどころがあるようでない UX を『導入する』ことで製品やサービスが改善されると考える方も少なくありません。 この記事の冒頭に掲載してあるイラストのような概念図を見たことがあると思います。インフォグラフィックと言い表しても良いような図でデザインプロセスが紹介されているのを見て、「なるほど、この通りにやれば良いのか」と感じる方もいるでしょう。そうした図を作って紹介しているデザイナーや組織は、実際そのとおりやっていると思います。しかしそれは単にプロセスを導入したというより、そうしたプロセスが動かせるような文化を作り出した結果だと考えています。 UX を導入するということ自体ありえないと 3 年前の講演で話したことがありますが、これは UX だけのことではありません。ツール関係で言えばプロトタイプもどことなく似たような課題を抱えています。 社長のビジョンであったり、社員が勤務時間以外でどういったコミュニケーションをとっているのかも含めて、組織の文化が手法や道具の使い方に大きく関わってきます。既に作られた文化の中に、いきなり新しいモノを投入してもうまく混ざり合わないわけです。これは、ヒトにも同じことが言えます。スキルがあっても、ヒトとして合わないなら採用しないようにしている組織は「自分たちの文化に合うかどうか」を考えているからでしょう。 組織の文化というのは 1 日で出来上がったものではありません。数年かけて徐々に育て上げられたものですから、すぐに変わるものでもないわけです。

プロセス

評価と効果で見えなくなりがちなデザインの価値

先週末、大人向けワークショップ deCAFE に参加してきました。昨年にも一度参加したことがあって、今回で 2 回目。今回はワークショップではなく過去を振り返りながらお喋りをする会でしたが、運営メンバーにイベントの意図や裏話を聞くことができて大変楽しかったです。 運営チームの方々は Web や IT 業界働くデザイナーがメインですが、ワークショップの内容はそこからかけ離れたテーマを扱っています。テーマの抽象度が高いことから、具体的に「◯◯を学んだ」とは言い表せないものの、他のイベントでは得ることができない何かを掴むことができます。 最近は数十分話すセミナーよりワークショップが多くなってきていますが、自分のワークショップにも何か取り入れるものがあるかもしれないという好奇心が参加のキッカケでした。前回と今回の参加を通して、漠然としていた deCAFE で得れた「何か」を鮮明にすることができました。それは、今 Web やアプリという枠組みで働くデザイナーに少なくなってきている要素ではないかと思いました。 評価がデザインを殺すとき 近年、クリエイティブと呼ばれる場でも「評価」「効果」という言葉がついてまわります。様々な制作物が売り上げ、滞在時間、コンバージョンなどといった数字によって評価されます。課題解決のためにデザインがあるのであれば、本当に効果があったのか測るべきでしょうし、

考え方

クリエイティビティとコピーについて

複製、変形、結合。 これらは生物の進化において欠かせない現象です。細胞分裂という原始的な活動だけでなく、私たちのクリエイティビティにもいえることです。活版印刷から World Wide Web まで、私たち人類が作り出してきたものは「複製、変形、結合」を繰り返した結果といえるでしょう。私たちが無から突然生まれたものではないのと同様、クリエイティビティも進化の過程のなかから生まれています。 2011年に「Everything is a Remix(すべてはリミックスである)」というドキュメンタリー映画が公開されました。音楽や映画の歴史を振り返りながらアイデアはリミックスされ続けていることを分かりやすく解説しています。また、知的財産権の課題や、人がもつアイデアを自分のものにしたい欲についても触れています。 このドキュメンタリー映画は、他人のアイデアを好き勝手にコピーしても構わないといっているわけではありません。しかし、極端な知的財産権の行使や、アイデアに対する過剰な所有欲が人のクリエイティビティに良くない影響を及ぼすだろうと指摘しています。 クリエイティビティという言葉に、どこか神秘的なものを感じる人は少なくありません。そのなかには、クリエイティビティとはオリジナルの何かを作り出す能力と考えている方もいるでしょう。しかし、オリジナルを「今まで見たことがない新しいもの」と見なすのであれば、そんなものは存在しないかもしれません。新しいものと感じたとしても、

プロセス

データ中心になると忘れがちな直感の重要性

データだけでは答えは導き出せない チームで工程を進めていく上で、何か根拠のようなものが求められます。そこで、デザインやコンテンツの定量・定性調査は欠かすことができません。「これは本当に使いやすいのか」「集客できるのか」「儲かるのか」といった様々な声に対して応えなければならない状況があります。 最近は解析ツールの発展や A/B テストのような模索がしやすくなったことで、データ収集の敷居が下がりました。そして、データを基に実践するための『プロセス』や『フレームワーク』も幾つかあります。しかし、周りが納得するための十分なデータと、確立した手法を用いてプロジェクトを進めれば成功が約束されるのかといえばそうではありません。 以前、ポッドキャストのリスナーから「UXデザインプロセスを実践しても失敗することはあるのか?」という質問がありました。確立されたプロセスは、失敗する可能性を低くすることはできますが、成功への近道ではありません。 これは、データにも同じようなことが言えます。数値として表すことができるので、いかにも確固なる事実のように見えますが、必ずしもそうではないと考えています。データは考える上で価値のあるものですし、データがあるからこそゴールや課題への理解が深まります。しかし、人間の代わりに決断してくれるわけではありません。 調査を経験すると、どれだけデータを集めても 100% の自信に繋がるわけではないということに気づきます。

デザイン

デザイナーなら知っておきたい感情移入と思いやりの違い

Empathy(感情移入)と Sympathy (思いやり) 。日本語だけでなく、英語でも混同してしまいやすいこの言葉。実は大きな違いがあることを分かりやすく説明しているのが上の動画です。RSA で Brené Brown博士が話した内容の一部が、素敵なアニメーションで再現されています。感情移入とは、相手との繋がりを築いた上で共感すること。一方、思いやりとは繋がらずに一歩離れたところからのコミュニケーションと Brown 博士は説明します。 Brown 博士によれば、感情移入には 4 つの性質が含まれているそうです。 相手の視点で周りがみれる 決めつけをしない 相手が何を感じているのかを理解できる 相手の視点を理解した上で対話ができる 感情移入と思いやりはデザインにも通じる課題です。利用者を客観的な視点でみて彼らができることを提供するというアプローチだけだと、思い込みにる弊害が生まる可能性があります。特に複数人で開発・設計する場合だと、それぞれが思い思いの利用者像を描いてしまって話がまとまらないこともあります。 ユーザーのことを考えてデザインすることは当たり前です。しかし、開発・設計に携わるひと全員が同じような人間像を描いているとは限りませんし、実感が湧いていないかもしれません。利用者が抱えている問題は自分たちの問題だと受け止めることができるように、ユーザーインタビューや、利用者の観察が必要になるわけです。百聞は一見にしかず。自分たちの目でユーザーの姿をみると世界が大きく変わることがあります。

仕事

制作者であれば書けたほうが良い理由と実践のコツ

経験をスキルとして活かす 何かメディアをはじめることで、ひとつのコンテンツを作ること、そして作り続けることの難しさを体感することができます。セルフブランディングに役立つのはもちろんですが、クライアントに提案する際にも自分でメディア運営しているかどうかで違いがあります。 読者はどのようなコンテンツを求めているのか、彼らがどのように読んでいるのかを意識するのようになりますし、的確な伝え方ができるような文章構造やデザインを意識できるようになります。また、制作者である私たちの手元から離れたあとのことを考えてデザインできるようになるのも、自ら様々な形状のコンテンツを出し続けることで考えられるようになります。 頭で分かっているだけで提案するのと、体感・経験をして提案するのでは内容も説得力も変わるはずです。 しかし「書こう!」と思ってもなかなか書けないことがあります。また、今はブログを立ち上げなくても様々なソーシャルメディアで簡単なリアクションが出せるようになりました。日々の生活模様を残すのであればブログである必要もありません。ブログの形状に拘ることはありませんが、自分の考えを文字にして書き出せる場は、中長期的に響くスキルになります。 企画書・調査書の作成、チャットやメールでのやりとりといったコミュニケーションはもちろん、「相手に何かを伝える」というデザインの基礎にも通じます。言葉は UI なわけですから、デザイナーもある程度書けるようになる必要があると思います。 常にアウトプットできる環境を 「何か書こう」と思っても、すぐに書けません。書ける人と書けない人の差は書くための時間を割いているかどうかだけだと思います。 つまり、とにかく書き続けるしかないわけです。私にもしても、このサイトを 15 年くらい続けているから書けるようになったといっても過言ではありません(

仕事

営業から学べる、ニーズを聞き出すためのノウハウ

GitHub には早い時期から営業チームがいたことで知られています。開発者向けの製品やサービスであれば、良いものであれば口コミでどんどん広がるイメージがあります。GitHubもそういったサービスのひとつのように見えますが、より多くの方に使ってもらうために営業チームを作ったそうです。チームで使わないと GitHub のようなサービスは機能しません。また、有料サービス申し込みも PayPal で支払って準備完了!といった簡単作業ではありません。支払い権限をもっている方は GitHub を見たことも聞いたこともない方もいるはず。そういった場合、営業チームが出向いてお客様の特異なニーズを調査するそうです。 「営業」という言葉に良いイメージをもっていない方もいると思います。ハリウッド映画などで描かれている、売るためなら手段を選ばない営業像が先行しているのかもしれません。しかし、優秀な営業は製品やサービスの改善ための重要な役割を果たしています。彼らは顧客の要求、願望、不安を理解するために時間を費やしています。言い方を変えるのであれば、ユーザーインタビューを仕事の一部として取り組んでいるわけです。デザイナーや開発者であれば、営業を遠ざけるべきではなく、彼らのスキルを盗むつもりで接近したほうが良いと思います。 優秀な営業は、以下のことを実践しています。 信頼と共感の獲得 すべてを論理的に考えて行動する人は少ないです。多くの場合「この人のことが好きだから」といった感情的な理由で行動をしています。気に入ってもらわなければ、どんなに優れた製品でも買ってもらえないことがあります。一方的に自分のことを話しているだけでは、相手の心はどんどん離れていきます。

Webデザイン

15年前の記事が教えてくれるWebの本質

2000年4月7日「A Dao of Web Design」という記事が A List Apart で公開されました(日本語訳)。今年は公開から 15 年経ったということで、Web 開発・設計の著名人がコメントを寄せた記念記事も配信されています。道教の教えを基に Web デザインの本質を説いたこの記事は、私も大きな影響を受けています。 2000年は、今では信じられないような状況でした。Web ブラウザが独自のタグを当たり前のように実装。<table> をつかってピクセルパーフェクトな固定レイアウトの全盛期でした。もちろん、マルチデバイスの世界ではなく、パソコンが中心です。せいぜい Windows と Macintosh の違いに頭を悩ませるくらいでした。CSS レイアウトで制作することが大事件だった頃に、「柔軟で適応力のあるデザインが必要である」という「A Dao

デザイン

デザインにおける公平とは

公平と平等はイコールの意味ではない ひとりでデザインするということは、そうはありません。クライアントだけでなく、様々な技能や背景をもった人たちと一緒にデザインを進めることになります。 作業をするのがデザイナーひとりだったとしても、彼等はデザインに対して意見を出してきます。新しい視点を学ぶ機会になるので意見を出し合うことは重要ですが、すべての意見を実践しようとすると、らくだをデザインするということになります。デザイン批評をする機会がもてない場だと、デザインという行為が少しずつ本来するべきこととは離れたところへ進むことがあります。 誰かと一緒に考えて進める工程はデザイン批評だけに留まらず、プロダクト開発のすべてに言えることです。私は常に公平であることを意識して会話をするようにしています。『公平』という言葉を聞くと、誰もの意見に耳を傾けて取り入れているように聞こえるかもしれません。しかし『公平』は、『平等』とは異なります。プロジェクトに関わるのであれば、誰もが工程に参加するべきですし、意見も出し合えたほうが良いです。だからといって、皆のアイデアが採用されることはありません。 皆がそれなりに納得でいるように、平等に意見を取り入れるという考え方は毒です。プロジェクトのゴールに沿って判断をするというのは当然のことですが、人間なので様々な考えや思惑が生まれることがあります。 公平であるための4つの注意点 公平に考えましょうと書くのは簡単ですが、実際は以下の 4 点について気をつけていないと、公平な判断ができなくなるどころか、周りからも信頼を失う恐れがあります。 えこひいきをしない 誰でも好き嫌いはあります。それは、デザインテイストだけでなく、一緒に働く人も対象です。

デザイン

Webのスーパーヒーローになる方法

撮影:飯田昌之 今年で Web は 25 歳になりました。 Web は人類に大きな変化をもたらした革命的な技術です。誰でも情報発信ができるようになったのも、膨大な量の知識や考え方を共有できるのようになったのも、すべて Web があってこそです。そして、Web のもつ可能性をひとりでも多くの方に体感してもらうのが、私たちの仕事です。 これは、デザイナーはとてつもない力を持っていることを意味しています。人々を幸せにするのも、ストレスを与えるのもデザイナーの作り方で決まりますし、時には人の考え方を変えることもできます。この記事の題名にもなっている「スーパーヒーロー」とは、デザイナーひとりひとりを指しています。 とてつもない力を持っているからこそ、私たちは責任をもって力を使わなければいけません。また、クライアントやプロジェクトメンバーに向けて、その力をどのようにすれば正しく使えるのかを伝えなければいけません。 大いなる力には大いなる責任が伴う “With great power comes great responsibility.” コミックブックに出てくる様々なスーパーヒーローは、現実からかけ離れた存在のように見えますが、人や社会に影響を与えるデザイナーと幾つか共通点があります。今日はスーパーヒーローから学べる、

デザイン

重要視されるためのデザイナーの条件

内輪受けは止めにしようではないか LSD LAB で公開されている UIデザイナー不要説は、テクノロジーと付き合うデザイナーであれば一読しておきたい記事のひとつです。私が記事を読んで感じた課題は、 UI デザインが重要視されているかどうかということではなく、果たしてデザイナーは デザインを営業できているかどうかというところです。 たとえビジネスゴールが共有されていたとしても、デザイナーが考える UI デザインの価値と、それ以外の方が考える UI デザインの価値が異なることがあります。特にデザイナーが考える価値は、内輪受けになりやすいことが多々あるように思えます。デザイナーが「すごく良いよね」「イケてるね」というものは、ほとんどの場合デザイナー以外には理解されません。内輪で分かりやすい言葉や感覚で語りかけても、聞き手は「?」(価値を感じない)になってしまいます。 今でもデザイナーのなかでは「流行」「イケてる」と評価されているパララックスデザインは好例です。多彩な動きとビジュアルが融合する楽しいデザインですし、インパクトもあります。しかし、少し裏側を見れば青ざめてしまうサイトやアプリも少なくありません。激しい動きと巨大な画像によってメモリが多く消費され、CPU にも多大な負荷がかかっていることがあります。つまり、制作環境では完璧な成果物でも、2, 3

デザイン

疲れない情報収集と何を知るべきかを知るためのヒント

何を知るべきなのか分からない 昨年「情報だけでは価値がない時代の学びの姿」という記事で、流れの速い今の時代における学習との向き合い方について執筆しました。当時、変化し続けるプロセスに自ら身を投じることで学習しやすくなるのではと提案しました。 まずはアウトプットする、そして失敗を恐れず模索できる場を築くことで、体験しながら学習することができます。私の場合、このサイトやポッドキャストは良い実験場になっていますし、仕事にも役立っています。情報をインプットするためのコストが限りなくゼロになった現在。アウトプット(消化)をすることで情報を知識/スキルに変えていかなければ身にならないどころか、膨大なインプット(情報)によって圧殺されてしまう恐れがあります。 インプットとアウトプットのバランスを保つのが難しい現在。鳥のように食い、象のように糞をしようと思っても実践するのは大変です。また、デザイナーに求められるスキルや責任の幅が広くなってきたことから、何から始めたら良いのかも分かり難くなってきました。つまり何を知るべきなのかを知ることが難しいわけです。 初心者であれば、とにかく何でも吸収すれば良いのかもしれませんが、そこからステップアップするにはどうしたら良いのでしょうか。「自分はまだまだ分かっていない」「分からないことがたくさんある」と気付いたときに、何を学ぶべきなのか、何処へ向かって走れば良いのか明確ではありません。分からないけど、Web へ目を向ければ雨あられのように情報が降り注ぎ、「あれをしろ」「こうしたほうがいい」というメッセージが含まれた『ノイズ』をあちらこちらに目にします。

デザイン

デザインが分からない人とデザイン話をするコツ

良いって何ですか? デザインの話をするのは、たとえ本業をしている方にとっても難しいことがあります。それが他分野の方ということになると、なおさらです。目的に沿って議論することで、デザインがより洗練されるわけですが、別の部署、他の役職の方との会話になると、なかなかうまくいかないことがあります。 その理由は、彼等がデザインのことを理解していないからというより、お互いが考える「正しい」を理解していないからということがあります。 Webサイトやアプリを設計・開発されている方全員「良いものを作りたい」と考えています。ただし、その「良い」のニュアンスは立場によって少し異なることがあります。「良い=売れる」と解釈する人もいれば「良い=使いやすい」と捉える方もいます。それぞれがもつ「良い」という価値観が、その人の意見や考え方に大きな影響を及ぼしています。 言葉だけでは理解ができない デザイン案を見せると、以下のようなリアクションが戻ってくる可能性があります。 青がどうも好きになれない このボタンはもっと大きく見せるべきだ 必須情報が他にもあるので、上のほうに表示させたい 「青がどうも好きになれない」は、一見テイストの話をしているようにみえます。主観的な意見を言っているよういみえることから、

デザイン

コードが教えてくれるデザイン思考

今プログラミングを教育に取り組もうという声が高まっています。CODE.orgのようなサイトも立ち上がっていますし、Scratch のような子供から楽しめるビジュアルプログラミングもあります。 デザイナーの中でもプログラミングを始めたい方もいると思います。WWDC 2014 で発表された Swift は、スクリプト言語のような感覚でコードが書けるので、始めるには良い機会なのかもしれません。 ただ、デザイナーの立場からみると、プログラミングは遠い存在に見えることがあります。しかし、「問題解決のため」という視点からみると、デザインとプログラミングには共通点がたくさんあります。人間中心デザインに基づいた発想にも、実装可能なところまで落とし込んで模索しないと、夢心地なアイデアになることがあります(もちろん自由な発想が必要なときもありますが)。コードを書くひとの考え方を取り入れることで、アイデアを洗練させることができるようになります。 プログラミングスキルとデザイン思考 プログラミング言語によって独特の癖(文法)がありますし、得意・不得意がありますが、根底にある考え方は同じです。実はプログラミングをするための基本的な考え方は、デザイン思考と重なるところがあります。 コードが書ける人には以下のようなスキルが備わっています。 すべてを明確に定義する 人は微妙なニュアンスを受け取って理解することができますが、コンピュータはそうはいきません。人間の要求をコンピューターが理解できるように、プログラマは言葉の定義付けを行います。「なんとなく」後回しにしておくと、ひとつの操作で

デザイン

Webにもある色あせない考え方

その昔、私も書籍を出していたことがありました。2005年の春、まだ日本では「Web 2.0」という言葉がほとんど耳にされなかった時期に「Web Designer 2.0 進歩し続けるWebデザイナーの考え方」という名の書籍を出しました。扱ったトピックが広くて浅く、中級者向けだったということもあり、それほど多く売れたわけではありませんが、今の私の考え方の基礎が執筆を通して形成された書籍です。 今はもう使えない技術話もチラホラありますし、振り返ると非常に恥ずかしい文章を書いていたので、今買うことをオススメしませんが、7年経った今も通用するメッセージがいくつか残っています。 ここ数年 UX やら利用者中心やらの話をよく耳にするようになりましたが、著書のほうでも利用者に向けて作ることの意味について掘り下げていました。書籍に書かれている以下の文章に想いが集約されていると思います。 本書をここまで読んで、お気づきの方はいるかと思いますが、本書では「ユーザー」という言葉をあまり使っていません。替わりに「利用者」、「人」という言葉を頻繁に使っています。Webサイト制作に携わっていると、サイト利用者が「ヒット数」や「ページビュー」というフレーズや数字に置き換えられることがあります。実際の利用者は数字ではなく、私たちと同じ個性のある人間です。

仕事

最近Geek Outしてる?

「Geek」はオタクとか熱中している人という意味ですが、「Geek out」は聞いたことがないという人もいるのではないでしょうか。モノを作ったり何かを伝えたいと思っている人にとって(良い意味でもそうでない意味でも)覚えておきたいフレーズだと思います。Urban Dictionaryには以下のように書かれています。 The act of becoming emotionally and physically aroused by the sight or the thought of a technicality of a certain topic of major interest. 自分が興味をもっている何かに対して興奮したりワクワクしたことはありますか?「Helvetica」のようなドキュメンタリー映画をみて熱くなったり、CSS3の最新情報をみつけて仕事を放り出して早速試してみたり、iPadを手にして未来をいろいろ想像したことがありますか?こうした感情や行動に表れる現象を「Geek out」といいます。 分野が違っても「

セミナー

不合理な人間から導き出すデザイン提案

作り方ではなく考え方で変わる 最近、行動経済学に関わる書籍や文献を読む機会が増えてきていますが、その中でおもしろかったのが「予想どおりに不合理」。専門的な用語もなく、人がなぜそのような行動をとるのかを知ることができます。人は論理的に行動出来る能力があるものの、感情やそのときの直感で思わぬ行動をするということに気付く材料として良い書籍です。 今週末に開催されるセミナーと一緒にあるミニワークショップでは、この「人間らしさ」に注目して、Webサイトのゴールをどのように達成できるかをみんなで考えて行きます。 どのサイトにも「アクセスを増やす」といった漠然なものだけでなく、様々なゴールがあります。それは Web サイトに留まらずビジネスゴールと重なり合うこともあるでしょう。例えば「お問い合わせボタンをクリックしてもらう」というのもひとつのゴールです。 こうしたゴールを達成させるために、私たちはビジュアルデザインや情報デザインのノウハウ/テクニックを駆使します。こうした実装の知識は大事ですが、まずそれは置いておいて、人間の不合理な性格を前提にして考えることで別の提案も出来るのではないでしょうか。例えば、「お問い合わせボタンをクリックしてもらう」というゴールを以下の人の心理と重ね合わせるとどうなるでしょうか。 限定品・稀少価値 限定品や非常に珍しいと知らされると、価値があるものと感じる。 目立つ色にしたら良いという考え方から、限定で無料サイト診断を行うというキャンペーンを行ったらどうだろうというコンテンツ&サービスの視点からの提案も出来るようになります。そしてどのように見せると分かりやすいだろうという発展も生まれるかもしれません。今回、ワークショップでは14の人間の心理・特徴を紹介しますが、

デザイン

知識ではなく知恵を養おう

先日開催された3.4.Uで、サイバーガーデンの益子さんにお会いしました。イベントが始まる前に少し話をすることが出来たのですが、そのとき「知識ではなく知恵を大事にしないとね」という話をされていました。サラッと名言を残し姿を消した益子氏でしたが、よくよく考えてみると仕事においてとても重要な考え方だなと思いました。Webデザインという狭い範囲で考えても当てはまることですね。 他の分野と同様、Webデザインにも幾つかのルールが存在します。検索をすると「すぐ出来る」「知っておきたい」「鉄則」「ルール」あたりの言葉が添えられたノウハウがたくさん出てきますし、書籍も似たような感じです。こうしたルールを示す情報があること自体は重要ですが、これによって本当に「正しいこと」が出来ない場合があると思います。 ルールがある以上、例外は存在します。大まかに「Webサイト」とひと囲みしてもそれぞれ目的や作り方が違うので、ルールに当てはまらない場合は出てきます。製作は決断の連続です。様々な課題に対して何をしたら良いのか考えるときに「ルール」は便利なツールです。しかしルールを重んじるあまりに誰にとっても幸せでない結果になることはあると思います。ルールでは語ることが出来ない「正しいこと」を状況に応じて実践することにより初めて良いサイトになると思います。 しかし、毎回ルールを破って思うがママに作るというのも良くないですよね。崩せるルールとそうでないものは当然あるわけです。音楽をしている方はこのルールと咄嗟の判断のバランスが分かるのではないでしょうか。彼等は楽譜という「ルール」